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第13話 採掘♪ 採掘♪





「採掘♪ 採掘♪」


 鉱脈にピッケルを振り下ろす。


「採掘♪ 採掘♪」


 鉱脈にピッケルを振り下ろす。


「採掘♪ 採掘♪」


 鉱脈にピッケルを振り下ろす。


「採掘♪ 採掘♪」


 鉱脈にピッケルを振り下ろす。


『お姉ちゃんが壊れたщ(´□`)щ オーマイガーッ!!』

『作業配信だなこれwww』

『放送事故w』


「壊れてないよ! オーマイガーでもないし。私って普段武器とか使わないから、集中してたんだよ集中!」


 新たな採掘ポイントで、私は水魔鉱石を採掘していた。

 採掘は奥深く、ピッケルを当てる角度によってヒビの入り方が変わる。どの角度が一番綺麗に鉱石が採れるのか、無我夢中で試していた。

 こういうのに効率化を図りたくなるのは、ゲーマーのサガである。


『φ(・ω・ )フムフム...地下労働適性ありと』


「地下労働? ごめん私そのネタ分からん。お父さんなら知ってると思う」


『( ゜∀゜)・∵. グハッ!!』


 前々から思っていたけど、小学生軍団が顔文字を使っている影響で、大人まで顔文字を使うようになっていた。

 それを微笑ましいと思うか、痛々しいと思うかはその人次第だ。私的にはコメント欄が明るくなるからありがたい。


「暇だし何か話そっか」


 鉱石を採掘している間は手持ち無沙汰なので、私はリスナーとお話する。

 まずは無難な所から。


『好きな食べ物は?』


「私は卵系の料理が好きだなー。舌触りが良くて、優しい味がするから。特にオムライスが大好き!」


『いつもおかわりしてるしね!』

『半熟からの薄皮だな。ちなみに好きな動物は猫だな。何故かいつもケチャップで描いてるし』


「ちょっ! 身内やめろ!!」


 大食いだと思われるのが気恥ずかしくて、カッと顔が熱くなる。

 カメラを睨みつけた。


『オムライス好きとφ(´・ω・`)メモメモ』

『あざとかわい~!』

『身内のネタバラシwww あ、話題ってことねw』

『あー俺もオムライスに絵を描くのよくやったわwww』

『なんかメイド服着てそう』


「メイド服は着たことないよ!? あと好きなだけだからあざとくないし! ネタバラシコメは上手いようで別に上手くないからね!? カミングアウトと意味勘違いしてるでしょ!」


 ツッコミを入れながら、次なる質問を探す。

 早く話題を変えないと……!


「好きな動物はネタバラシされてるけど猫。ちっこいのにジャンプ力凄いし肉球可愛いしもふもふだし! 最強でしょ」


『猫の着ぐるみパーカー持ってるしね』

『種類も色々あるんだっけ?』


 私は加速したコメント欄から視線を外す。


「はい次ぃ! 好きなお菓子は王道イズ王道のポテチ! 味はこれ!」


 ゲーミングデスクの収納スペースには、私セレクトのお菓子ボックスがある。

 そこからお気に入りのポテチを取り出した。


『のりしおかー』

『のりつくからヤダ』

『イナリちゃんも?』


「美少女は海苔つかない、これホント」


『アイドルはトイレ行かないノリで言うなwww』

『ていうかお菓子ボックスw ポテチとグミしかねぇwww』


「しょっばい物を食べたら何が欲しくなると思う? そーいうことだよ」


 私はお菓子ボックスにポテチをしまう。

 やっぱり、ワイプがあると色々できて面白い。


「好きなスポーツは……水泳だなー。人前で汗かくの嫌だから。スポーツって季節によって熱いとか寒いとかあるけど、水泳は夏だけだから涼しくて、楽しい思い出しかしないんだよなー」


『分かる〜!( ´꒳`*)人(*´꒳` )ナカーマ』

『ウィンタースポーツはって思ったけど、確かに寒いよな〜』


「氷属性に適応してから冬に強くなったけど、寒いことに変わりはないからね〜。ちなみに覚醒者の体質的な話をすると、水属性に適応してから肌が常に潤ってて物凄く助かってる」


 実は海苔がくっつかないのも、唾液の分泌量が多くなるからなのだが、それを言うのは流石に恥ずかしかった。


『だからそんなに綺麗なんだー!』

『(´。・o・。`)ウラヤマ~』

『(“´^”)イーナー』

『( ¯ 罒¯)いー( ¯ □¯)なー』

『マジで綺麗だよなー』

『赤ちゃんみてー』


 思った以上に女性リスナーの嫉妬コメが多い。話を長引かせると怖いため、早々に切り上げる。


「あはは、それじゃあそろそろダンジョン関係の質問に答えていこうかな〜」


 そうして目についたのは、やはりダンロボ関係の質問だった。


『ダンロボを使うためのコツって何ですか?』


 少し考えてから口を開く。


「ダンロボを使うためのコツは、体に重りがついている前提で動かすことかな」


 カメラを手元に向ける。


「見てもらったら分かると思うんだけど、キーボードで入力した瞬間から実際にダンロボが動くまで、僅かにラグがあるんだ。いや距離を考えたら僅かで済んでるのがおかしいんだけど……とにかく、ダンロボの動きは思ったよりもワンテンポ遅い。だから体に重りをつけていると思って操作すると思い通りに動かせるよ。ゲーマーにはオフラインとオンラインの違いって言った方が分かりやすいかな?」


 私はオフラインとオンラインの違いは、生憎と格ゲーをやる友人がいないので実感したことはない。だが、小学生時代は低スペックのパソコンを使っていたので、ラグのある動きに慣れていた。

 そのためダンロボ操作にも、比較的早くに順応できた。


「まあ後は、ダンロボのスキル再現機能に色々と入れておくと便利だよ。この採掘とかダンロボに記憶したモーションだし」


 スキル動作モーションの記憶は、勿論スキル以外でもOKだ。と言うよりダンロボは初期状態だと、攻撃パターンが少ない。

 幅を持たせるためにも、モーション記憶は重要になってくる。


『前から思ってたけど、ダンロボってモンスター扱いされてる?』


 一体目のオーアリザード戦後にチラッと見えて、妙に印象に残っていたコメントが浮かび上がる。


「ダンロボがモンスターに人間扱いされてないのは完全に同意。明らかに人を前にした時と反応が違うんだよね〜」 


『分かるー』

『確かに言われてみれば。。。o(゜^ ゜)ウーン』

『他のダンロボ配信者もそうだよな?』

『モンスターって人間見たら襲いかかってくるのに……』

『さっきのオーアリザードの尻尾投擲とか初めてみたぞ』

『モンスターには人間を強制的に襲うようにプログラムされてんのかな?』


 リスナーも薄々感じていたようで、考察コメントが飛び通う。

 ちびっこが置いてけぼりにされそうな気配を感じた。


「それでは改めて、モンスターの説明をするね。モンスターは魔素生命体で、その体は魔素でデキている。ここまでは前に話したと思うけど……このモンスターは、空気中に漂っている魔素で呼吸して生きてるんだ」


 魔素は魔力を生み出す源である。

 その生命体であるモンスターは、魔力の生成量が人間より遥かに多い。しかし、魔力は生命活動の重要な役割を担っているようで、結果的に使用可能な魔力は少ない。


「モンスターのレベルと階層が一致しているのは、魔素濃度が関係している。モンスターは魔素で呼吸しているから、その濃度が高くても低くても苦しいんだ。だから、モンスターはゲームみたいに階層を跨いで出現することはない」


 モンスターの情報は覚醒者なら誰もが知っている。それほどに重要なことであり、知らなかった視聴者(特にちびっこ達)は『へー』と反応していた。

 当然、来ると思っていた大人のコメントも届く。


『そうそう。だからスタンピードはおかしいんだよな』


 モンスターは生きている。

 ダンロボから逃げたヤツがいるように、モンスターは命を大切にしていた。

 地上の魔素濃度は低いため、モンスターは長く生きられない。

 本来ダンジョンから出たくないはずなのだ。

 それなのに地上進出するということは、よっぽどの何かがある。

 私にはそれが、ダンジョンが出現した理由に関係している気がしてならなかった……。


「さて、ここにある水魔鉱石は掘り尽くしたし、今度は氷魔鉱石を採掘するために次のポイントに行きますか」


 そうやってダンロボを歩かせていると、重たい足音が鳴り響いてきた。

 第五層には幾つもの大小様々な空間と、それを繋ぐ細い道がある。採掘ポイントは小空間のエリアにあることが多く、私は小空間のエリアから細道で大空間に歩いていた。

 そこを抜ける直前、ダンロボのような足音が聞こえて。


「え? あ、どうも……?」


 細道を通り過ぎると、人型の何かがいた。

 ダンロボと似た全身鎧のデザイン。しかし材質は洞窟と同じ岩であり、拳部分は水魔鉱石のような質感と色をしていた。しかも、ガントレットを嵌めているように変形している。


 そいつは、オーアリザードと同じように鉱石を食べることで魔力を蓄積する岩の魔人、ゴーレムだった。

 ダンロボだと思った私は、ダンロボの頭を下げさせてしまう。

 すると、ゴーレムは会釈を返してきた。その後ダンロボの脇を通り過ぎ、細道に入っていく。


「え? え? どゆこと??」


 私は一瞬、呆気にとられる。

 すぐに一つの結論に辿り着いた。


「ダンロボって、モンスターにはゴーレムだと思われてる?」


 呆然とした声が、静かな部屋に反響した。

 パンドラの箱を覗き込んだような、言葉にできない感情が心を震わせる。

 この時ばかりは、10万人の視聴者全員が沈黙していた。

 二度目の配信は、氷神イナリの顔出しとオーアリザードのイレギュラー化、そしてダンロボとゴーレムの挨拶シーンが話題を呼んだ。










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