第11話 鉱石系階層
夕夏に依頼された素材は『氷魔鉱石』と『水魔鉱石』だ。
ダンジョン二層の光苔がポーションの材料であるように、各階層には何かしらの素材が自生している。
鉱石を集められる鉱脈があるのは、未だ踏み入ったことのない五層だった。
「二層から五層か……レベル的に問題ないけど、緊張するな」
基本的にモンスターはレベルと階層が一致しており、私はレベル5なので問題ない。
だが、初見というのは怖いものだ。
そしてダンジョンを探索するとなれば、私には配信する義務がある。
「あとはエンターキーを押すだけ」
ダンロボは、五層に行くための階段前にやって来ていた。
昼間に配信の告知と枠作りを行い、授業終了後にダンジョンアカデミー略して『ダンアカ』のダンジョン行きスクールバスに乗り、他の生徒と一緒に運んでもらった。
その後ダンジョンに入り、三層と四層を踏破した。各階層には先輩覚醒者が作ったマップがあり、ダンロボを見たモンスターは何故か逃げるため、スムーズに行けた。
そうやって急いだのは、配信の前に心の余裕を作っておきたかったからだ。
何せ、まだ始まってすらいないのに。
「待機人数多すぎだろ……!」
1万人が集まっていた。
時間帯的に社会人はおらず、友達のいる学生なら遊んでいるはずだ。
にも関わらず1万人。
「すぅー、ふぅー」
氷神イナリは今インターネットで一番話題の人物だ。
待機人数が多いのも無理はないと、心を落ち着かせる。
「私はダンロボで世界を変える女だ。こんなこと……ではないけど臆するな!」
インターネットの話題は移りやすい。
今はダンロボがトレンドになっているが、一般人には縁のないことだ。
継続的に話題を提供しなければ、私は誰にも見向きされない存在になる。
だから、私は今からさらなる燃料を投下する。
「勇気を持って一歩を踏み出せば、あとは上手くいく」
私は配信用カメラの角度を確認する。
問題ない。
そうして告知した時間は来たる。
エンタキーを押して、二度目のダンジョン配信を始めた。
「あー、あー、やっほー。みんな聞こえてる?」
マイクに向かって話しかけると、『((o(´∀`)o))ワクワク』『マダカナー?(・∀・)』だったコメントが『始まったー』『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』になる。
お前ら誰か分かりやすいな。
「二回目の配信だから初めましての人もいるよね? 私はお姉ちゃん系配信者の氷神イナリだよ。よろしくね」
ちびっこ共は元気よく挨拶を返してくれる。
その中には『重大発表って?』というナイスコメントがあった。
いやお前妹やないかい。
「ふっふっふ、XXで予告していた重大発表とはズバリ!」
私は配信用カメラをオンにする。
配信画面の右下に小窓が生まれ、最初にダンロボキーボードと私の手元が映る。
私は形から入るタイプであり、爪には水色のマニキュアが塗ってある。
『え!?』
『エッ!?』
『手元映ったぞ!?』
『(´・ω・`)?』
カメラを上に向けていくと、水色のリボンが可愛いダンアカの制服が見える。
通常の物ではなく、この日のために用意しておいた青色のブレザー。
それと一緒に水色の髪が映り、コメント欄の流れが加速する。
日常とかけ離れた非現実性は人々を魅了するものだ。
最後に顔を見えるようにすると、カメラを通して私の青色の目と視聴者の目が合った気がした。
気恥ずかしさが胸に込み上げてきて、ふふっと笑って誤魔化す。
「初めまして、氷神イナリです」
ダンロボで登校した時から決めていた。
私の正体が調べれば分かってしまう現状、顔を隠す意味などない。
だからこの名前を広めるために、私は顔出し配信することにした。
『可愛いーーーーーー!!』
『マジかよ肌が綺麗すぎんだろ!』
水と氷の魔素に適応した私の肌は白く、透明感がある。
わざわざ化粧もしているため、自画自賛してしまうほどに美しい。
『お姉ちゃん可愛いー! キャー(⁎˃ ꇴ ˂⁎)ーッ♡』
『俺の娘は世界一!!」
お父さん仕事はどうしたの?
『髪と目の色が鮮やかすぎる! 覚醒率100%じゃねーの?』
『二属性に綺麗に適応しているな……!!』
『(〃∇〃)キャー!』
『Σ(゜Д゜)聞いてた通りの美人さんだ!』
私を褒める言葉が多過ぎる。
気持ち良い〜〜〜〜!!
「うぇへへっ」
『ん?』
『おおっと変な笑い声が聞こえたぞ?』
「気のせい気のせい♪ これからは顔を出して配信して行くつもりなので、よろしくね。それで今回は配信タイトルにもなっている通り、鉱石系階層の五層を探索していくよ」
配信タイトルは【ダンロボ】鉱石系階層でお宝ザックザク……!! だ。
そのためダンロボは大きな荷物入れを背負っていて、そこからツルハシの先端が伸びている。
「前回みたいにならないようにゆっくりと」
ダンロボで階段を降りていく。
『アレは見物だったなwww』
『苔ねw』
『草じゃなくて苔www』
「今思うとあのミス誰でもやると思う」
『やらねぇよ』
『やらないぞ』
『やるわけねぇだろ』
「なんか私に当たり強くない!?」
視聴者と話しながら五層に降りると、相も変わらずな洞窟が広がっている。
だけどこの階層の壁には魔素噴出孔の他に、一定間隔で光る石があった。
「この壁から生えているのは魔光石って言って、空気中に漂ってる魔素に反応して光る性質を持ってるんだ。強い魔力を当てるとその輝きは増すみたい」
ちびっこ共に説明する。
キラキラした魔光石は幻想的に洞窟を照らしていた。
『素敵……』というコメントが多い。
「この階層が鉱石系階層って呼ばれてるのは、魔光石みたいに光る石とか鉱脈があるからだよ。見て」
と言いながらドローン視点の映像、その左上に五層の全体マップを表示させる。
五層は巨大なフィールド型の空間が幾つもあり、至る所にピッケルマークがあった。
「このピッケルマークは採掘ポイントで、ここに行けば鉱脈がある。まあ先に採ってる人がいるかもしれないけど、新しい覚醒者は十層付近にいるからどこかは空いてると思う」
私のように出遅れた人でもない限り、覚醒者は五層に来ない。
そのため快適に配信することができた。
「まずは近くの鉱脈にレッツゴー!」
『レッツ――ヽ(@,,>∀<)ノ――ゴォォ♪』
『レッツ━━━━━━o(・∀・)○━━━━━━ゴー!!』
『m9(´∀`●)イッテミヨーーー!!』
右腕を振り上げながら言うと、みんな乗ってくれた。
カメラがあるとリアクション芸ができるから楽しい。
そうして採掘ポイントに行くと、モン◯ンのような青い鉱脈があった。
水魔鉱石である。
「はっけん! したけど……」
ガリ、ゴリ……その空間には硬い物を歯で砕く、咀嚼音が鳴り響いていた。
こういう鉱石は魔素ではなく魔力を宿しているため、食べた所で意味はない。
だけど、五層のモンスターだけは異なる。
そいつは背中から鉱石を生やしていて、水魔鉱石を食べる毎に、背中の青い鉱石の色が濃くなっていく。
鉱脈を喰らい尽くした後、さらなる食物を探すように振り返ったそいつは、コモドドラゴンを一回り大きくしたような爬虫類だった。
肌は青く魔光石の光を反射しており、光沢を帯びている。
巨大なトカゲ型のモンスターであるそいつは。
「オーアリザード。鉱石喰らいのトカゲで、高い防御力と機動力を持っている。普通のトカゲみたいに壁に張り付くことはできないけど、鉱石のように硬い爪を壁に引っ掛けることで、似たようなことができる」
視聴者に説明しながら、強いという言葉が脳裏に浮かぶ。
五層のモンスターはレベル的に同じだ。
私と対等の強さを持っていると言っても過言ではない。
「こいつに勝てないようじゃ、この先やってけない。だから、倒させてもらうよ」
私はレベル5になり、新しく手に入れたスキルがある。
ダンロボでファイティングポーズを取りながら、視聴者の心を煽る。
「今の私のレベルで出せる、全力を持ってね♪」
新スキルのお披露目だ。




