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言い争い

お父様の声にさえぎられ、お姉様は最後まで言うことができません。

当事者のひとりである私は黙っているほかなく、同じように対面に座ったリアム殿下も場を見守っています。


「言ったはずだ、アンリエッタ。お前に継承権はない。弁えなさい」


「な──でも、アーロン様と結婚するのは私よ!私が継承権を持っていてもいいじゃない!」


お姉様はバン、とガラステーブルを叩いて立ち上がりました。そして、目尻を釣りあげ、私を睨みつけます。


「だいたい、こんな子が爵位を持っていてもどうしようもないわ!こんなぼんくらに何ができるって言うの!」


「ぼんくら……」


私は唖然としてしまいました。

まさか、ぼんくらと言われるとは思わなかったのです。


「私だってお父様の子よ!どうしてこの子ばかり優遇するの!」


「それは、あなたが愛人の子だからですよ。アンリエッタ」


お母様が静かに彼女を諭しました。

しかしその言葉は、彼女の怒りに火を注いだようです。

こうなっては、私は身の置き場がありません。

縮こまりそうになって、しかしリアム殿下に俯くなと言われたことを思い出して、私はおっかなびっくり、背筋を伸ばしました。

対面に座る彼が、微かに笑みを浮かべたように見えますが……気のせい、かな?


「愛人は愛人でも、お父様の血を引いてる!その上、私の方がアメリアより半年早く生まれているわ!それなのに、私に継承権がないのはおかしいわよ!」


「お前から継承権を取り上げたのは、お前が愛人の子だからではない」


お父様が、ピシャリと言いました。

お姉様はぐっと言葉に詰まったように黙り込みます。


「お前の態度が問題だ」


「態度ですって……?」


「公爵家に引き取ってから、お前はアメリアに嫌がらせばかり。アメリアの友人にはアメリアの悪口ばかり吹き込み、この子が親しくなった令息とは遊び歩くようになり。継承権以前の問題だ。お前は令嬢として、致命的にその素質が欠けている。そんな娘に大事な家門を預けるはずがないだろう」


「な……!!」


「私が何も知らないとでも思ったのか?アンリエッタ。それならお前は、よっぽど私をばかにしているのだろうね。私はお前が今まで何をしてきたのか、全て知っているよ」


わ、悪口を……吹き込み……?


そういえば、仲良くなった友人が突然私から距離を置くようになったことは、今まで何度となくありました。

きっと、私と話していてもつまらなかったのだろうと、そう思っていたのですが……。

お姉様が原因だった……?


「アンリエッタ。お前は、この家を出て修道院に行きなさい」


「は……」


お姉様は絶句してお父様を見ました。

ですが、お父様は厳かな顔のまま、彼女に言葉を続けます。


「そこで、己を見つめなさい。今のお前は醜い。欲に塗れ、他人を蹴落すことにしか興味のない、愚かな人間だ。お前が改心したら、私が迎えに行こう。周りには、慈善事業の一貫だと言っておく」


「い……いや!絶対に嫌!!それなら私、アーロン様と結婚するわ!ねえ、アーロン様?あなたは私を好きだと言ったでしょう!?そうよね!!」


お姉様は縋り付くようにアーロン様に身を寄せます。ですが、彼の顔色は悪く、お姉様とは視線を合わせません。

しかも、アーロン様はお姉様を無理に引き剥がすと、冷たく言い捨てました。


「ふん。そんなの知らないな。きみが勝手に言っているだけだろう」


「何ですって!?アメリアよりずっと良いって言ったのはあなたじゃないの!!私が手に入るなら何でもするって言ったのに、あれは嘘だったのね!」


「そ、そんなことは言っていない!お前の勘違いだ!」


「どこをどう勘違いしたら、そんなことを言われたと誤解するっていうのよ!アメリアじゃ物足りないって、あんな娘と結婚するなんて嫌だって、言っていたじゃない!」


「知らない!そんなの、僕は知らないぞ!」


「アーロン!!」


お姉様の怒声が聞こえた直後、パン、という音が聞こえました。


皆の視線が集中します。

私もまた、音がした方を見ると──リアム殿下が、手を合わせていました。今の音は、手を叩いた音だったのでしょう。


彼は、アーロン様とお姉様をそれぞれ見ると、短く言いました。


「みっともない。恋人だったのでは無いのか?」

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