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CASTLE  作者: トロール
77/77

77 ceremony

 無事に戴冠式が終わり、場所は庭園に移動して国民達は立食パーティーだ。普段は関わることのない村々に住む人達も城下町に住む人達も兵士達も無礼講だ。夜の時間を除いて皆仕事は休み3日間のパーティーが続く。

 フラットは隣国の王様と使節団へのおもてなしをしつつこのお祭りを楽しんでいた。

 庭園のパーティーにも何度か顔を出した。批判が多いと思っていたから内心びくびくと震えていたのだが、フラットを見かけた国民達はわっと歓声をあげ拍手を送りテーブルへと誘ってくれた。ある時は年配の夫婦が涙を流して跪いた。ぎょっとしたして手を差し伸べるが夫婦は涙ながらにそのまま話をする。 


「殿下、無事で良かった」

「私達はあの頃城で働いていたのです」


 フラットの存在を知っていたが、あの内乱で命を落としたものとばかり思っていたのだそうだ。夫婦を皮切りに私も僕もと泣き崩れる者たちが出てきた。いくら隠していても噂は広まるもの。王妃が姿を見せなくなってから1年ほどでまた姿を見せた事できっと二人目が産まれたぞ、と噂が広まり使用人が喜びからぽろりと溢した言葉が決定打となり一部の国民は第二王子の存在を知っていたのだ。しかし、話してはいけない、暗黙の了解のように皆口に戸を立てた。


「表に出てきてくれて、本当に喜ばしい事です!」

「王様の味方が増えて安泰です」


 国民はフラットに対して好感を持っているようだった。少し安心したフラットは照れくさそうにありがとうと言って夫婦を立ち上がらせると一緒に乾杯をした。

 学校の生徒たちにも会った。まさかフラットが、ばか! 呼び捨てにしちゃいけないんだよ、で、殿下! とふざけているのか本気なのかみんな楽しそうに過ごしていた。眺めていると、おーい、と高い声が聞こえた。


「フラット」

「エリダ! メリー!」

「殿下だっけ?」

「やめろって、はは。フォンテは?」

「あっちの先輩達と話してる」


 フォンテは王城で務める事に決めたようで仕事の先輩に当たる執務室付きの人達に挨拶をしにいっていた。さすがフォンテ、と三人で頷いているとフォンテが戻ってきた。


「殿下、ご機嫌よう」

「フォンテまで!」

「あははは」


 パーティー二日目の夜、眠りに就こうとベッドに上がったところで兄から呼び出された。ガウンを羽織り兄の寝室へと向かう。廊下には沢山の燭台や蝋燭があり明るいがなんとなく壁に手をついて歩く。窓からは銀色の月が見えた。月ってあんなに遠かったっけ、と思いながら兄の部屋に向かう。


「いらっしゃい」


 こちらも眠る準備は万端の装いでクラウディオはフラットを部屋へ迎え入れた。


「パーティー疲れてないか?」

「うん、楽しいよ」


 隣国からの献上品の一つ、果実酒の味見をしながら話す。


「ずっと、夢に見てたんだ」

「何を?」

「ふふ、こうやって兄弟で、何にも怯えることなく、ただ談笑する時間」

「……そうだね、こんなに穏やかな日が来るとは、考えた事も無かったな」

「……今まで我慢させてすまなかった」

「いや、そんなこと」

「言わせてくれ。身の振り方を押しつけている自覚はある。城に呼び戻したことも」


 フラットは口を挟みそうになるがぐっと堪える。


「お前が弟で、ほんとに嬉しいよ」

「! 兄さん……」


 ほろ酔いの兄はいつもよりも饒舌に話を続ける。やっと一緒に暮らせる。嬉しい。一緒に国を育てていこう。楽しみ。ご機嫌な兄にフラットは、思わず笑った。


「そういえば、お前に紹介したい人がいるんだ」

「え!」


 思わぬ兄の言葉にフラットは動揺した。これは、本当にお妃様だろうか!


「さっき呼んだんだけど」

「え!」


 こ、こんな時間に自分の寝室に? お邪魔じゃないか、とフラットが腰を浮かせた所で扉がノックされびくりと肩を震わせた。しかし、聞こえてきたのは男の人の声だった。兄はどうぞと声をかけた。確認もせず、随分と信用している様だ。兄は、不用心かもしれないとフラットは不安になった。開かれた扉から入ってきたのはすらりと背の高い猫目の青年だった。フラットより年上だろうその人は、兄の伸ばしていた髪と同じ様に長い三つ編みを揺らして部屋へと一歩足を踏み入れた。


「……殿下、お初にお目にかかります、アジエーリダと申します」

「あ、フラウアディトです……」


 なんだろ、誰かに似てる……? 会ったことがある? 首を傾げるフラットの様子をクラウディオとアジエーリダはじっと見る。思い出しはしないだろうか、と。


「アジエーリダも一杯やろう」

「いえ、兄弟水入らずの時間の邪魔はできません」


 聞けば側近というわけではないが、彼は兄の相談役のような人だそうだ。遠い国の出身だそうで家族は国に居るらしい。


 なんだか、喉元に飲み込みきれない水がせり上がってきた気がした。



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