75 School3
陛下の学校視察は成功に終わった。学校長と数人の教師と陛下でこれからの学校の方向性を相談して行ったらしい。子供達の意見を参考に、基本的な学習から専門的な道を選べるようにするか、全員が色んな事を学べるようにするか、歳で分けるかやる気で分けるか様々な話し合いをしていったようだ。
「陛下って、凄いんですね」
「え? どの方向の凄さ?」
陛下が帰ったあと、教師達の話は陛下で持ちきりだった。
「色んな面で凄いけど、美しいしかっこいいけど」
「うんうん」
「子供達の話を聞いて、すぐどうしようかなって考えてくれたってことじゃないですか。あの意見交換会をちゃんと生かしてくれたって」
「うんうん、確かに」
「あ、陛下の話ですか?」
一人の教師が参加してくる。彼は新人の陛下の付添いをした男性教師だ。
「そうそう! 陛下が凄いって話」
「そういえばあなた最後の会にも参加したんでしょ? 今後の学校の話しあい」
「はい! もう凄く為になりました!」
「へー、今後どうなっていくと思う?」
「やっぱり専門的な分野に分けるのは決まった感じじゃないですか? それをどう分けるかは慎重に考えていくって感じで。能力に差もあるから難しい部分もあるだろうしって陛下が」
「陛下が」
「陛下が」
羨ましそうに新人教師を見る他の教師達。
「いいよね、近くで陛下と話せて」
「居るだけで明るくなった気がしますよね」
「わかります! 発光してるのかなって思いますよね! でも……」
「でも? なに? 文句でも?」
「いやいや! 違います! 文句なんてないですよ」
新人教師は慌てて手や首を振る。
「なんか意外と普通っていうか……」
「普通なわけないでしょ!」
「いやいや、悪い意味じゃなくて! もちろん!」
何を言っても批判を浴びそうだが、新人教師は伝えたかった。
「陛下は凄い! 素晴らしい! 尊敬! でも、普通な面もあって凄いってことです!」
「……どういうこと?」
「あ、私なんとなく言いたいことがわかりました」
「え?」
「わかってくれますか!」
女性教師は、実は少し同じ事を感じていた。
「もし、陛下が陛下じゃなくて、あんなに美しくなくて、権力も持っていなかったとして」
「うん、もしもね、もしもの話ね」
「はい、そしたら、親戚のお兄さんみたいな感じじゃないかなって」
「え?」
「そうです! それです!」
「気さくっていうか、今まで関わることのない雲の上の人みたいな気持ちが強すぎたけど、あ、人間だったのかもってちょっと、そんな感じ……?」
「……なるほど、ちょっとわかったかも」
「そうなんです! でも、そんけする気持ちは強くなった気がします!」
「そうそう!」
その後も、陛下凄い、かっこいい、憧れると教師達は盛り上がっていた。ある一人の生徒が聞いているとも気づかずに。
目の前にあるようで行ってみると中々遠い。そんな位置にあるクラントロワ城。城下町から城に入ったと思いきやそこはまだ城の外。簡単に城には入れない。門をくぐり兵舎を通り過ぎ庭園を抜けて門をくぐりようやく正面門に辿り着く。正面から城に入るのは緊張するなと深呼吸をしてから門兵に会釈をすると、屈強そうな兵士が礼を取る。慣れない……。学校の帰りに来たから普段通りのすすのついたシャツを着ているのに立派な兵士に丁重に扱われる。今後はできるだけ綺麗にしてこようと心に決め、とりあえず背筋を伸ばして城に入った。
「殿下、お待ちしておりました」
「遅くなってすみません」
「いいえ、殿下、簡単に頭を下げてはいけません」
「あー、はい、うん、わかった」
難しいなっとフラットは苦笑いをする。
「フラット!」
「に、陛下。お待たせしたいたしました」
「あ、ああ、こちらへ、来なさい」
執事長は陛下が出迎えるなど、とまた小言を始めてしまったが、二人とも慣れない城での会合になんだかぎくしゃくとしながら王の執務室へ向かった。扉を静かに閉めると一気に緊張の糸が解ける。
「はー!」
クラウディオは執務机にどさりと腰を掛けて大きく息を吐くとくすくすと笑い始めた。
「さっきなんて言ったの?」
長椅子に腰を下ろして力を抜いていたフラットに声を掛ける。
「おまたせ、したいたしました?」
「あははは」
不慣れすぎて噛んでしまったのが聞こえていたらしい。今日は戴冠式の話し合いに来たのだが、城で働いている人達には一足早くフラットが第二王子であると伝えられていた。噂は広がり学校にも流れそうなものだが、戴冠式が行われてしまえば皆が知る所になるのでまあいいか、と箝口令は引かれていなかった。
「そういえば、先生達が兄さんの話してた」
「え? なんの、なんて言ってた?」
「普通って」
「……え」
あははは、とまた笑い出す兄に結構笑い上戸だよな、とフラットは微笑んだ。、




