70 myroom
修正しました
目を覚ますと、いつもとは違う天井が見えた。装飾が施された白とグレーの壁と天井。天蓋付きの大きなベッド。柔らかすぎる寝具。埋もれるように眠っていた枕もふかふかだ。
「どうして……」
城だ。この部屋は、遠い昔に息を潜めるように暮らしていた部屋だ、家具が少し変わっているけど間違いない。
「……兄さんは」
くしゃん。なんだか寒気がする。風邪だろうか。そんな事より何故ここに居るのか、兄を探さなくてはと避けても避けても現れるシーツをどかしてベットを降りた。一体どうなっているのかとシーツをベッドになんとか戻していると部屋の扉がノックされた。そっと開いた扉からよく見知った顔が覗いた。
「目が覚めたんだね!」
「……兄さん、俺」
持ってきた水差しをテーブルに置く兄の姿を見てなんだか不思議な気持ちになる。あれ? なんだか記憶が曖昧かもしれない。
「ちゃんと聞こえてるか? 見えてる? 私が誰だかわかる?」
駆け寄ってきた兄はフラットの顔をぺたぺたと触り安否を確認する。最後におでこに手を当てると熱は少しあるかな、と首を傾げてフラットをベッドに戻した。
「兄さん、俺、どうしてここに……?」
「ああ……風邪をひいたのは覚えてるか? 国全体で嫌な風邪が流行してな、お前もそれにかかっていたんだ」
「……あんまり、覚えていないんだけど」
熱があるせいで頭がぼんやりとしているフラットは首を傾げた。
「いつからここに?」
「10日間くらいかな」
「そんなに?」
「もう少しかな」
「え?」
曖昧な返事をしながら水の入ったコップを差し出す兄に困惑するが、素直に受け取るとこくりと一口飲む。喉を通る冷たさが気持ちいい。ゆっくりと残りの水を飲み干すのを確認すると兄はまあ、無事だったのだからとフラットをベッドに倒し沢山のシーツを掛けた。
「此処にいることは数人しか知らないから、安心してもう少し眠りなさい」
「あ……うん」
「起きたらこれからの話をしよう」
「……わかった」
おでこにひやりと濡れたタオルを乗せられると、気持ちよさに眠気がやってきた。最近も誰かに看病をしてもらったような……そんなはずはないか。視線を感じて目を動かすと兄の瞳が濡れているように見えた。本当に、無事で良かった。安堵する様子の兄に大袈裟だな、と溢しそうになったが確かに10日以上の記憶が無い程だったのだから心配しただろうと申し訳ない気持ちになった。
「またあとで様子を見に来るよ。おやすみ」
「ありがとう。おやすみ……」
ぱたりと閉まる扉の音を耳に寝返りを打つ。風邪をひいて、倒れたんだろうか。偶然兄さんが見つけた? だとしても、兄さんが城につれてくるだろうか……。うとうとと微睡む頭で考えていると何かが太ももに当たった。硬い石ころのような感触をシーツに手を突っ込んで探す。かつん、と爪に当たった。
「なんだ……石……宝石?」
石ころにしてはつるつると輝き綺麗な丸い形をしているそれは、黒くて、向こうが少し見えるくらいには透明だった。硝子だろうか……。つるつるすべすべと石を撫でているうちに眠くなってきたフラットはその石を握りしめてもう少し眠ることにした。




