49 A Brain
王の間には王と参謀、黒き獣ピリリ、そしてアジエーリダが揃っていた。この世の魂、影たちが増えてくると在るべき所へ返るのを促す為のパーティを開く。影達は誰かが返って行くと釣られて近くの影達も返って行く。これが空気を読むということだろうか、と王が呟いた。天に返るというかお隣の世に移動する者もいるので、参謀は忙しくなりそうだった。会場は大広間、お隣の世へ連携を取ってもらう手筈も考え、刻の番人ジルにも連絡をしなくては。今回はフラットをあちらに返してやる事が最重要事項だからジルも責任重大だ。
「フラットをあちらに返すのは王が一緒に連れて行くのですよね」
「うむ、ピリリにも同行してもらう」
「わかりました」
では、フラットを返す前にパーティは粗方締めておかねばならないだろう。
「アジエーリダ、お前はどうする」
「俺は、少し遅れて行くよ」
「一緒に行かないのですか?」
「まあ、きっと寂しがると思うし」
「さびしい……?」
はて、と首を傾げる王にアジェーリダはため息を吐いた。
「フラットが来てから色んなことがあったんだろ? 短い期間でも内容は濃厚、サリは完全に此方の者になったし、ずっと何も思い出さなかったロルカやシシモにも変化があったと聞いた。もしかしたら今回のパーティで二人にも何かあるかもしれない。シシモは、お隣に帰るだけかも知れないけど」
参謀は目を見開いてアジエーリダの話を聞いていた。なんだか久方ぶりにあったアジエーリダは人間らしくなったのではないか。いや、元々だったか? 人間の気持ちを完全に理解しているような口ぶりに参謀は感動した。そして王も同じく。
「なんだよ」
「息子よ、大きくなった」
無表情の目頭を抑える王にアジエーリダは居心地の悪そうな顔をした。
「……サリ様は、寂しいと感じるでしょうか」
「……ふむ」
「二人ともわかってないな」
アジエーリダがまた隠しもしないため息を吐いた。
「すでに寂しそうにしてたよ。本人がそれを理解してないだけだ」
「……難しい事を言うようになってしまったな、息子よ」
「そうですね、王よ」
「はいはい、終わり」
アジエーリダは両の手のひらをぱちんと打つとこの場はおしまいと王の間を出ていってしまう。三つ編みを揺らして去っていく背中に長くなった、と感慨深そうに王が呟いた。取り残された参謀と王とピリリは今後の予定を詰めて解散する事にした。
大広間を通り広間を抜けて暗い廊下に出る。寂しいという感情は覚えている。久しく感じては居なかった、と参謀は胸に手をあてた。久方ぶりにアジエーリダにあったとか、サリ様が無事で良かったとか、この間の王はカッコ良かったとか、その時々に思うことは沢山ある。フラットが城を飛び出した時は冷や汗が出たし、ロルカの様子がおかしいのは心配だとも思った。しかし、寂しいと感じたのはいつが最後だったか。ここでは別れが当たり前で喜ぶべき事だったし、王が城から離れる時は特に寂しいとは思わないし、会えなくなるという考えが無くなったのだろうか。
参謀は廊下をすたすたと歩き考えを纏めようとするがなかなか纏まらず、堂々巡りを繰り返していた。いや、それより今はパーティの成功の為に腕を振るわなくては。
「むん!」
参謀は肩をぐるっと回して、ジルの所から片付ける事にした。
フラットがあちらへ返る刻、寂しいと感じられるだろうか。居なくなったあとに感じるのだったか。




