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CASTLE  作者: トロール
47/77

47 FLAT

 シシモを抱えてサリと一緒に部屋に戻ることにした。シシモは目を開いたまま動かないけど、危険な状態ではないというので少し落ち着いた。シシモの腹に乗る小さな生き物をサリが引き取る。


「お前はこっち」

「そういえば、名前は決まった?」

「いや」

「ふうん、候補はあるの?」

「クロかチビか、ロルカはなんだか長い名前を考えてくれたけど覚えてないな」

「はは」


 男の子だから強そうな名前がいい。呼びやすい方が良い。母親の名前はピリリという。毛並みが綺麗な黒だからクロがいいと思った、とサリは語る。


「ふふ」

「どうした」

「いや、よく喋ると思って」

「……煩いか?」

「違う違う、俺も話せるようになったから嬉しい」

「……ならいい」

「僕も混ぜて!」

「わ!」

「シシモ」

「クロロは?」

「クロロ、可愛いな」

「クローロは?」

「カッコよくなった、それしよう。良かったな、クローロ」

「……」

「フラット?」

「ぬ? 気に入らない?」

「あ、いやいいと思う」


 フラットは横抱きにされたまま突然話し始めたシシモに驚いた。そして普通に話しを続けるシシモに呆然として、無事だった事に嬉しくなって、サリとのお喋りを聞かれていたことになんだか恥ずかしくなった。恥ずかしい?


「それより、大丈夫か?」

「僕? 大丈夫だよ!」


 何事も無かったかのようにいつものシシモだった。僕はどうして抱っこされてるの? と首を傾げている。サリを見やると首を振っていた。


「このまま私の部屋まで行こう」

「今、サリに熱があるみたいだから部屋に向かってる所だったんだ」

「え! そうなんだ、早くいかなくちゃ。フラット急いで!」

「大丈夫だ、ゆっくり行こう」

「僕知ってるんだよ」

「なに?」

「サリとフラットの事看病してたからできるんだ!」

「ああ、そうだったな」

「そうか、お礼をちゃんと言ってなかったな。ありがとうシシモ。サリも」

「かまわない」

「ふふ。大きな血管を冷やすんだよ」

「ふうん、大きな血管は何処にあるんだ?」

「脇の下とか首とか足の付根だよ! 僕がキンキンに冷やしてあげたんだ!」

「……え? 足の、付根……?」


 看病の為とはいえそんな恥ずかしい事になっていたのかと、フラットの顔が赤くなる。


「シシモ」

「えへへ、嘘だよ!」

「え!?」


 いったいどれが嘘なのか、三人で話しているうちにサリの部屋の前に着いた。シシモも一緒に寝かせようと思っていたのだが、目が覚めたのならその必要もないので腕から降ろしてやる。


「僕が看病する? フラットがいい?」

「いや、一人でいい」

「そっか、残念」

「サリ、無理しないように。良くなったらまた話そう」

「ああ」

「おやすみ」

「サリおやすみー」

「おやすみ」


 シシモは食堂へ向かうというのでついて行く事にした。また動かなくなるのではないかと心配だった。シシモは自覚が無いようだったが、手をだらっと落とし動かない人の異様な光景に焦燥感を覚えた。


「アジエーリダ!」

「よう、シシモ……と」

「あ、フラットです」

「あ、ああ、はじ、始めました」

「え?」

「て!」

「ああ、はじめまして……」

「ぬ?」


 なんだか慌てているアジエーリダにシシモは首を傾げた。フラットも首を傾げる。なんだか知り合いに似ている人がいなかっただろうか……。


「アジエーリダはね! あっちで人間と暮らしてるんだって」

「え?」

「こら! シシモ!」

「ぬ?」


 シシモの発言にアジエーリダは慌てる。やはり知り合いなんだろうかとフラットは記憶を巡らせる。フラットより年上だろうアジエーリダは黒い長い髪を後ろで三つ編みにたらし、黒っぽいシャツにキナリのマントを羽織っていた。こんな知り合いいただろうか。じっと目を見るとぱっと顔を反らされた。失礼だったろうか。


「あの、声を拾ってくれたって聞きました。ありがとうございます」

「ああ、いやいいよ。見つかってよかった」


 顔を背けたまま話すアジエーリダに、シシモが失礼だよと注意をしていた。やはり知り合いか……?



 

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