41 KING
「話をしよう」
「!……はい!」
ベッドで呻くサリの横にがたがたと椅子を並べると、どうぞと王がフラットに手のひらを差し向けた。フラットはぺこりと一度お辞儀をすると示された方の椅子に座る。フラットが座ったのを確認すると、王はフラットに向かって深く頭を下げた。
「え!」
「申し訳ないことをした」
「わ、あ」
思っていたよりも長い王の角を仰け反って避けたフラットは王のいきなりの謝罪に戸惑った。そうだった、この王に連れてこられたんだった。
「頭を、上げてください」
「うむ」
「その事はもう、過ぎた事だから。声も、話せるようになったし……そういえばどうして?」
「声を拾ったので戻した」
「? 拾った?」
「ふむ」
王はなんと説明しようかと角を一撫でした。
「……俺は、帰れるんですよね」
「……」
立ったままの王にフラットは手のひらを差し向け椅子を勧めた。かたじけないと一言こぼして王は椅子に座り、ふむと一呼吸置くと話し始めた。
「現段階では憶測でしか無いが、こちらに来た時と同じ状況の時に向こうへ帰したい」
「同じ状況?」
「あの日は珍しく、こちらの新月とあちらの新月が重なっていた」
「珍しい?」
「ふむ」
刻の番人ジルによって時間を管理しているこちらの世界では、必ず向こうの世界と時間のズレが生じてしまう。大きくずれてしまう前に向こうの天体の動きに合わせて定期的に時間を整えるのだが、あの日は何もしていないのにこちらと向こうとの新月がピタリと重なっていたのだそうだ。偶然でしか無いのだが、そのおかげで真ん中池に潜む影のちからが弱まりフラットは無事にこちらの世へ辿り着くことができたのだろうという見解だった。
「それじゃあ、次の新月まで待てば帰れるってことですか?」
「ふむ……それだと手遅れになってしまう」
「手遅れってどういう……」
「フラット、此方は死後の世界。生きた人間がいつまでも居ては此方の者と混ざってしまう可能性もある」
「!」
「できるだけ早く帰したい。次の満月を利用する」
「満月? それは、反対に影が強くなったりしないんですか?」
「可能性はある」
「じゃあ、危ないんじゃないですか?」
フラットは焦る。向こうに帰れたとしても体がバラバラになってしまっていたら事件だ。
「問題ない。満月の日は我も強くなる」
「あ、そうなんだ……」
強くなった王様が来た時と同じく抱えて帰ってくれるということか。
「子細は追って決めていくが、帰る日は八回目の月の刻」
「八日後……」
「それまで寛ぐが良い」
「……はい」
「ふむ……沢山話をしよう」
「はなし?」
「ふむ」
「? ……はい、わかりました」
見た目と違ってお喋りなんだろうか。
「うう」
落ち着いて眠っていたサリがまた魘され始めた。
「サリ!」
フラットは立ち上がるとベッドを回り込みサリの額に手を当てた。包帯が巻かれている。苦しそうな表情にこちらも苦しくなる。
「サリの怪我はどうなんですか?」
王の方を見て訊ねると無表情の口をへの字に曲げていた。なんだろう、あ、娘のおでこに気安く触ったからへそを曲げているのだろうか。フラットはぱっと手を離した。
「怪我ではない」
「え?」
「角が生えたのだ」
「……え!!」




