37 Regular Team
「今ここに太陽があるんでやんす」
「このお山さんも作りましたの?」
「いい出来でやんしょ」
ロルカの称賛の表情にジルは鼻の下を擦って得意げな顔をした。ジルが指差した水槽の中の太陽は登り山の模型と沈み山の模型の間にあった。沈み山寄りにあるのであちらで言えば夕方に差し掛かる頃だろうか。沈むまではまだ掛かりそうだ。
「サリ様はまだ外を確認できていませんよね」
「ああ。太陽を水槽から出す事ができるならそうしてもらおうと思ったのだけど、暗くなるのを待つ」
「よろしいのですか?」
「うん、余計な事をしてもしかしたらこの世に負担がかかってしまうかもしれない。それに外にいる影達が活発になるのも、あまりよろしくないと思うんだ」
どう思う? と参謀を見上げるサリに参謀は口に手を当てて感動しているようだった。さすが配慮のある考えです、と。サリは無表情で返事をすると続けた。
「ジルにはここでいつも通り刻を操ってもらう。月が出たら外を確認してくる。窮屈かもしれないけれどそれまでここで過ごそう」
「それがいいな」
「かしこまりましたわ!」
「みんな一緒だと安心だねえ」
サリの提案に各々が返事を返した。フラットもこくりと頷く。
大広間はやはり舞踏会等で使われるような造りをしていた。中央の部分は踊るために何もなく壁際に休憩用の椅子が何脚かと、長椅子もいくつか置かれていた。フラットが繋がれたままの両手の先の二人に目をやると、もう大丈夫だね、とシシモとジルは手を離してくれた。怖がっていたのがバレていたようだ。フラットは照れ隠しに二人の頭を撫でるとサリのマントをつんと引っ張った。
「ふすふす」
「!」
小さな黒い生き物がサリのマントのフードから飛び出しフラットの肩に飛び乗った。
「ずいぶんと懐いてしまったな」
「ふ」
「どうしたの」
フラットは長椅子の方を指差した。横になっていた方がいい。
「うん……そうだな。なにもできないし休んでいよう」
「ふ」
サリを長椅子に連れて行くと近くにあった椅子を運び長椅子の近くに置いて座った。座ったままのサリに横になるように手振りで伝えると大人しく横になった。顔の近くに小さな黒い生き物を降ろしてやる。
「名前を、考えてくれた?」
「……ふ」
くろ、としか。フラットは頬をかいた。サリは難しいな、と一言呟いて皆の方を眺めた。ロルカは水槽に興味津々なようでじわりじわりと動く太陽を観察している。その横でジルとシシモがお喋りで盛り上がっていた。参謀とバルバタはコインをひっくり返す遊びをしている。裏か表かを当てているようだ。
「王が……」
「?」
「もしも、王が間に合わなくて、この世が崩壊してしまったら」
「……」
「いや、なんでもない」
少し眠る、と言ってサリは目を閉じた。眉間にシワが寄っている。フラットはそのシワを伸ばしてやりたくて、椅子を少し引いてサリの側によるとふわふわの頭を撫でた。サリはぴくりと瞼を動かしたが嫌がる様子はない。
「……人の温度は、気持ちがいい」
「ふ」
しばらく撫でていると小さな黒い生き物がサリの顔に登りフラットに撫でてもらいたがった。
「ふっ」
フラットはそっと小さな生き物をずらして元いた所に戻すとそのままふわふわの毛を撫でた。すうすうと聞こえる寝息の持ち主の眉間のシワは無くなっていた。




