33 Lorca
我が主からの重大な任務を遂行するため、ロルカはまずバルバタを探す為に広間へと向かっていた。食堂にトロリーを戻しに行きたいところだが、通過点を増やすと迷子になる回数も増えてしまうのでころころと音を鳴らしながら歩く。
「お! ロルカ」
「あら! どうしてここに?」
広間を目指し始めて間もなく、広間にいるはずのバルバタを見つけてしまった。
「広間のみんなは落ち着いてるから、他の所にいる影も集まってもらったほうが良いかと思ってな」
「なんということ!」
バルバタは指示を貰う前から主と同じ考えを持ち既に行動に出ていた。なんかまずかったか、と訊ねるバルバタにロルカは称賛と嫉妬が入り混じった複雑な気持ちになった。
「いいえ、まさにその事を伝えに行くところでしたのよ。やっぱり影たちにも影響があるかもしれないからあなたに皆さんを集めておいてほしいってサリ様が……」
「あら、同じ事を考えたのか」
唇を尖らせたり口角を上げてみたり忙しない表情をしているロルカにバルバタはなるほどな、とにやりと笑った。きっと悔しくて羨ましくて尊敬して忙しいんだろうなと。
「こっちは任せておけよ。あのお客さんの所にも行くんじゃないのか?」
「ええ! そうなのです!」
そこまでわかってしまうとは! とロルカは完敗だ、とでもいうように頭を振ってみせた。どこでそんな仕草を覚えたんだろうか、とバルバタは思ったが軽く手を振りパトロールに戻っていった。
「それじゃあ、緑の部屋へ!」
ふん! と鼻息を吐き出すとくるりと歩を返した。緑の部屋がある辺りはロルカの部屋とも近く薄明るかった。サリや王の部屋がある所は壁なついている燭台を頼りに足元も暗い中を進まなければならないが、こちらの方は明るい時間帯ということもあり燭台に頼らずとも進むことができる。暗い時間帯になっても月明りが照らしてくれるように高い位置に小さいながらも複数の窓があった。上がアーチ型の窓が並んでいる中に一つだけ左側がアーチになっている窓がある。不思議に思ったロルカは王に何か意味があるのかと聞いてみたことがあるのだが、ただのミスだという事だった。しばらく進んでいるのだが、薄明るいからと油断していたロルカはとっくに緑の部屋を通り過ぎていたようで応接間まで来てしまった。
「はあ……戻りましょう」
自分にがっかりしながらくるりと反対を向いた。どんどん気分が沈んてきた。どうしてこんなにミスばかりしてしまうのかしら。迷子になるのはいつもだし、考えが飛びすぎて突拍子もない事をしてしまうのもいつも。この間の甲冑を脱いでいるところを参謀さんに見られたのは恥ずかしかった。思い出し恥ずかしだ。
(でも誰も私を置いていったりしない)
この世の皆さんはそんな私にもいつも優しい。優しい皆さんを思い浮かべて頬が緩む。
「あ」
いけない、また通り過ぎてしまうところだった。ロルカは半歩下がり緑の部屋へ続く扉へ向かった。やはり通路の先は暗いけれど、蝋燭と通路の向こうの薄明かりで扉がはっきりと見えた。いつものように扉に嵌った石をつるつると確認して扉をノックする。起きているかしら。




