32 PRINCESS
眠りにつこうとマントを脱いだところでフードの重みに気づき、慌てて中にいた生き物を取り出した。うっかり落としてしまうところだった。
「やっぱりクロかな」
「ふすふす」
しばらくフラットのそばにいてもらっていたので久しぶりにそのふわふわの毛を堪能した。それにしても、とベッドに腰を掛けて耳の上辺りを擦る。久しぶりの固形物を口にしてサリの頭痛は悪化していた。不思議と体の怠さは良くなった気がするのに、きりきりと痛む頭のせいで話すことも億劫だった。早々に眠ってしまおうと小さな生き物を抱えてベッドに潜り込みうつら、うつらとし始めた頃扉の向こうが騒がしくなってきた。
ここですよ
わかっておりましたわ
ころころころ
ロルカと参謀か? サリは起き上がろうとして、やめた。頭が痛くて吐きそうだった。
「サリ様、眠ってしまいましたか?」
「いや、起きてる」
小さなノックのあとに小さな声で入ってきたのはやはりロルカと参謀だった。ロルカの引くトロリーにはティーポットとティーカップが乗っている。悪いが今は飲めそうにない。なんとか上半身を起こして枕をかき集めて背当てにした。神妙な顔をしている参謀に椅子に座るよう促す。参謀は一つ息を吐くと、顔色の悪いサリにもっと顔色が悪くなる話を始めた。
水底の世の状態を聞いたサリはそう、と言って腕を組み考えた。状況を聞いたところでやはり王が居なくてはこの世をどうにかすることはできない。できる事を探す。
参謀がジルに避難する様に伝えているから誰かに手伝いに行ってもらう。 参謀がいいか。
広間以外にいる影たちを集めておいたほうがいいかもしれない。バルバタに頼めるかな。
今は明るくなったばかりだから外の状況をサリが確認する事は難しい。いや、太陽を外してもらえばいいんじゃないだろうか。ジルが来たらできるか聞いてみよう。
シシモは来るだろうか。もし来たら早々に帰したほうがいいな。フラットは私と一緒にいてもらおう。
取り敢えず思い付いたことを実行してもらうべく二人に伝えた。ロルカにはバルバタを探してもらってから緑の部屋へ行き、フラットをサリの部屋まで連れてきてもらうという難易度の高い任務をあたえた。もちろんです! お任せくださいまし! というロルカの言葉に果たしてどのくらいかかるだろうかという考えと、もしかしたら順調に事を済ませて自信を付けるかもしれないという考えが浮かんだ。ロルカはフラットがこの世に来てから変化が見えている。もしかしたら、という思いが強くあった。
しかし希望を含んだ考えなので、任務完了まで休ませてもらう事にして一度解散した。
「ふう……」
自分が完全にこちらの存在だったなら、王を探しに行く事もできたのに。不甲斐ない。具合が悪いせいか考える方向も悪くなってしまう。最悪この世が崩壊したとしても、戻ってきた王が新しく創り直せば良い話。だが今ここに居る影たちやレギュラー民達は消えてしまうだろう。行き場を失いまた彷徨う事になるだろう。小さな黒い生き物がサリのやせ細った手を舐める。慰めているのだろうか。ふわふわの黒い毛を撫でてやると収まりの良い場所を探してぐるぐると回り眠る体制に入った。サリもふわふわの毛に顔を埋めるようにして少しでも眠ることにした。




