30 A Brain
参謀が宰相殿になっておりました。
修正しましたm(_ _)m
王があちらの世へ行ってから四度目の月が登った日、参謀ははらはらどきどきしながら王の帰りを待っていた。そろそろ月が沈む頃、居ても立ってもいられず城の外にあるジルの住まいで時間を潰していた。
「ジル、もう少し月を出しておいてくれないか」
「うーん、そうしたとしても意味はないでやんすよ」
「はあ……そうですよね、はあ」
月と太陽と天体ショーを操るジルはあちらの世に合わせて空を操っている。多少のズレが生じることはあるが、あちらとこちらの世では時間の経過がずれているので仕方のないことだった。一度、真夜中だと思って王が真ん中池からあちらの世に行ったら真昼間だった事があった。うっかりうっかりと戻ってきた王だったが、あちらの世の水溜りから顔を出してしまって犬と目が合ったという話を聞いた参謀はその時も胃を病んだり気に病んだり手を揉んだりしていた。
そういえば、と参謀がジルの手元を覗き込む。
「その顔、なんなんですか?」
「これでやんすか? ちょっと顔を描いてみたんでやんすよ」
やっぱり笑顔かなと思ってと参謀に今完成した太陽を見せる。見開いた目と弧を描いた口元が書かれたまあるい太陽だ。
「これはちょっと……」
面白いですね、と頷く参謀にジルはそうでげしょ、頷いて答えた。参謀は顎に手をあてて考える仕草をすると、これに王の顔とか描いたらそのまま昇るんですか、なんて聞いていた。
「それは……笑っちゃいやすね!」
「王は寝てる刻ですから気づかないでしょうね」
なんとも不敬な話で盛り上がっていると太陽を上げる時刻になった。ジルは水槽の中から月を取り出して水分を拭き取ると星台の上にそっと収納した。ほんのりと赤や青の色味が着いた月や先日初お披露目した金星などが並んでいた。ジルが太陽を水槽に入れようとすると参謀がちょっと待って下さい、と立ち上がった。空に浮かぶ瞬間が見たかったのだ。上まで上がるから60秒後に入れてくださいねと言って作業部屋を出ていった。
ばたんと扉が閉じてから数を数える。60秒で上まで行けるかしら。
30、31、32……
「急げ急げ!」
参謀は城まで続く階段をあっという間に登りきり太陽が見える所、城の正面へと急いだ。月の明かりも無く暗い道を走る。岩肌の地面に支えて転びそうになったが暗いうちに城の正面の扉にたどり着いた。はあはあと息を切らして扉により掛かると空を見上げた瞬間、ぽちゃんと太陽の飛沫が山の端から見えた。あ、しまった。山で顔が見えないじゃないか。しかし空の揺らぎを見れたので満足した。
「間に合いました……あれ?」
太陽の光に照らされ始めた地面がいつもより乾いている。ひび割れが増えたように見えた。真ん中池の水はどうなっているだろうか、確認しに行かなければ。参謀は浮かれた気持ちから疲れた気持ちになってジルの元へ戻ることにした。
「間に合いやしたか?」
「ああ、はい。顔はまだ見えませんでしたが水しぶきは見れました」
「ああ、そうでやんすね。山がありやしたね。星を浮かべるときは見ものでげしょうけどね」
「それよりジル。地割れが起きるかもしれません」
「え」
参謀は今見てきた状況を説明すると真ん中池がよく見える城の上部に行ってくるとジルに伝えた。
「王様はまだ帰ってきやせんかね?」
「ええ、そろそろ引き上げてきてもらなわないと危ないですね。ジル、貴方も城に入っておいた方が良いでしょう。サリ様に伝えておきますから準備をしておいて下さい。あとで迎えに来ます」
「わかりやした」
参謀はまず池を確認しないとと言ってジルの部屋を出ていった。
「頼りになるでやんすね。よし! 準備でやんす!」
ジルはほとんど使うことのない鞄を引っ張り出してお泊りの用意を急いだ。




