28 FLAT
「え? サリ様は気がついていませんから大丈夫ですよ! 安心してくださいまし!」
「ふ、ふ」
「え? 栄養の素が何かですか? 実は私も知らないのです。王様からミルクに混ぜるようにと言われただけなので」
「ん!」
「サリ様の体調ですか? 最近は頭がよく痛くなるみたいで、とても、心配なのです」
「……」
「そうなんです! サリ様は体調が悪くてもこちらに気を遣わせないように我慢するところがあるんです!」
サリ様は……とロルカの瞳にまた涙が盛り上がってきた。なんとも感情が豊かな人だとフラットは思った。しかし、そんなことよりも聞きたいことが全く伝わらない。サリの体が人間とはどういうことなのかを知りたかった。シシモ、戻ってきてくれないかな。
ロルカがサリの心配をして、涙をころころと零すのを慰めていると、ふ、と部屋が暗くなった。なんだろうと窓の外を眺めると月の姿が無くなっていた。
「ああ、もう月が沈む刻なんですね」
……月って沈むものだっけ。
ほんの少しの間を開けて今度は太陽が山の向こうから昇り始めたようだった。ロルカはサリの様子を見に行ってくるといい、小さな黒い生き物にフラットを任せるところころとトロリーを引いて緑の部屋を出ていった。
「……」
外はどうなってるんだろう。急にふと気になって。ベッドから足をおろした。そういえば、ベッドから降りるのは初めてかもしれない。ずっと寝ていたからか身体中がぎしぎしする。緑の床に足をつけると少し弾力があった。ふかふかしている。足に力を入れて立ち上がる。泥に沈むんじゃないかという考えが一瞬頭を掠めたがえいっと立ち上がった。しっかりと立つことができて安堵した。先程昇り始めた太陽はすっかりと顔を出していた。
「?」
窓に近づいて緑のレースのカーテンを避ける。太陽を直接見ても眩しくはなかった。確かに太陽が出てきて明るくなったはずなのに、しかも太陽に目と口らしきものがついている。にこりと笑った顔だった。疑問しか浮かばない。そして城下を見下ろす。ぞっとするほど何もなかった。遠くに見える山が二つと笑顔の太陽、山二つの麓にある池のような物、そしてかさかさに乾いたような岩肌の地面。家はなく、木も生えていない。太陽に照らされて明るい空とほとんど岩の地面しかなかった。
(明るいけど暗い、静かだ)
外は暖かいのだろうか。窓を開けようとしてやめた。何かいる。岩しかない地面に黒い影のような物が動いている。すごく不気味だった。フラットはカーテンを元に戻すとベッドへと戻った。小さい黒い生き物が目を開けてこちらを見ていた。真っ黒だと思っていた目は鉛のような色をしていた。
(名前、何がいいかな)
ふわふわの背中をそっと撫でると目を細めて気持ちよさそうにしている。サリは明るいのが苦手だと言っていたけど、この世界は夜に活動するんだろうか。だとしたら今から寝る時間なのかな。シシモもサリと一緒にいるんだろうか。
(なんだか疲れてしまった)
フラットはまたベッドに横になると眠りの中に沈んでいった。




