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CASTLE  作者: トロール
21/77

21 Cicimo

すやすやと眠るフラットの額の布を取り替えるたび、シシモはフラットの顔に見入った。


「かっこいいなー。僕も大きくなったらこの顔になれるかなあ」


 参謀殿のお使いを無事にこなしたシシモは、調べたい事があるという参謀に変わってフラットの看病をする事になった。もちろん断る理由は無く、むしろこのかっこいいお兄ちゃんと一緒に居れるという事で快く引き受けた。


「目がかっこいいのかなあ」


 実は凄く目が細くて起きても寝ている顔と変わらないかも知れない、なんて考えて一人でくすくすと笑っていた。起きたらどんな顔だろうかと考えていると刻が経つのはあっという間だった。

 シシモがフラットの少し長めの前髪を斜めに分けてみたり、真ん中で分けたりと悪戯をしているとフラットの瞼がピクリと動いた。


「あ!」


 しまった、起こしてしまったと慌てて手を引っ込めるも既に遅く、フラットは瞼を持ち上げてしまった。


「う……」

「あ、あの、僕起こしちゃって……」


 フラットはシシモを目に止めるも、まだ目覚めたばかりなのでぼんやりとシシモを見つめた。そんなぼんやりとした顔も素敵だった。何にせよシシモが理想とする男の子の顔だった。


「……ふ」

「ふ?」


 フラットは目覚めると、知らない顔の子供がいたので話しかけたかったのだが、言葉が出てこなかった。ああそうだった、言葉がちゃんと話せないんだったと思いだした。ロルカと話したのも夢では無かったかと改めて思った。


「あの、僕シシモです。起こしちゃってごめんなさい」


 目の前の子供、シシモは頭を大きく下げて謝った。気にする事はないとフラットは首を振って答えた。すると、頭から水分を多く含んだ布が落ちた。シーツに染み渡る程の水分量だった。フラットは自分の頭を触り、湿っている事に気がついた。ロルカの代わりにこのシシモという少年が側にいてくれた事に気が付いた。


「……お、んあ、りあお!」

「ん? ……あ! これ?」


 フラットは水分を多く含んだ布を手にしてなんとか感謝の言葉を絞り出した。シシモは良く聞き取ることが出来なかったのだが、フラットの手振りを見て言いたい事がわかった。シシモは照れくさくて自分の耳を触った。にまにまと緩むシシモの表情を見てなんとなく気の抜けたフラットはシシモのちいさな頭を撫でた。


「前よりも具合は良くなってる?」


 シシモの質問にフラットは身体を起こしてみる事にした。先程よりも大分良くなっている気がする。ふらつきもほとんどなかった。


「ふ!」

「良かったね!」


 シシモとフラットは顔を見合わせて微笑みあった。

 

「今さんぼうどのが、お兄ちゃんがどうやったらあっちに帰れるか調べてくれてるんだよ」

「?」


 さんぼうどの? あっち? フラットは首を傾げた。そういえば此処は何処なんだろうか。部屋の中を見渡すと立派なベッドや高い窓、つるつるとした素材の床。手元にある緑色のシーツもとても手触りが良い。なんだか懐かしい様な暗い様なイメージのある部屋だった。


「サリはきっと今起きたくらいだと思うんだ。後でくると思うよ。ロルカも一緒にくるかなあ?」

「……?」


 ロルカ、はわかる。先程の綺麗な人だ。サリは誰だろうか……。フラットは寝ている間の事を思い出そうとする。そういえば、女の子、おばあさんかな。黒いフードを被った人がいたはずだ。それともまさか、黒いマントの奴のことだろうか。フラットは此処にいる元凶だろう黒い影の事を思い出してぞっとした。


「王様はあっちに行ってるんだって。悪い奴を捕まえに行ってるんだよ! 王様もかっこいいんだあ」


 シシモは王の顔を思い出してふやけた顔をした。王様……王様? 王様と言われて思い浮かぶのはクラウディオ王子だった。まだ王子だがクラントロワでは今その話題で持ちきりだ。しかしシシモが言っているのはきっとクラウディオ王子の事ではない。それはフラットにもなんとなくわかった。だって王様と言った。それに、出掛けていると……? フラットは考えた。それは、此処へ帰ってくると言う事ではないかと。では王様が帰ってくる此処は、王城の中ではないか。部屋の中をもう一度見廻す。高い天井にしっかりとした作りの部屋。クローゼットの扉もなんだか素敵だ。王城だったとしてもおかしくはない。全て緑色なのは謎だが。と言う事は何処か違う国に来てしまったと言うことではないのか……? クラントロワには城は一つだけだ。フラットの頭は混乱した。そして色々な事を聞きたいけれど、言葉が出てこない。なんともどかしいのだろうと頭を抱えた。するとシシモが不安そうにフラットの頭を撫でた。


「また気分が悪い? また寝る?」


 なんとも優しい触り方にフラットは不覚にも泣きそうになった。しかしかっこ悪いと思ってなんとか耐えてみせた。


「サリまだ寝てるかなあ? 早く来るといいね」

「……ふ」


 窓の外には明るい月が見えた。一体何時なのだろうか。時間も、此処が何処かも、このシシモという少年やロルカが何者なのかもわからない。フラットの胸の中に不安が増えていった。

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