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CASTLE  作者: トロール
18/77

18 Karde

「メリー、具合どう?」

「うん……」


 カルデの街の小さな家で、メリーは熱に魘されていた。学校から帰り、晩御飯を食べたところまではいつも通りの元気があったのだが、夜が深まるにつれメリーの体調が悪くなっていったのだ。


「明日は学校休もうな」

「え〜行きたい……」

「ちゃんと治さないと、皆にも移しちゃうかもしれないだろ?」

「んん〜! ……わかった」


 だいぶ熱が高いのか、涙を零してむずがる妹をフォンテはなんとか宥めようと優しく頭を撫でた。


「沢山寝たらきっとすぐ良くなるよ。おやすみ」

「……うん、おやすみなさい」


 フォンテは寝室を出ると片付けを始めた。二人の家は内乱の後に建てられた長屋の様な家だった。寝室と台所だけがある小さな家だが二人は十分幸せに暮らしていた。それに、この長屋の大家がとても寛大な女性で二人にもとても良くしてくれていた。ミリヒカムという女性で二人はミリおばさんと呼んでいた。明日もミリおばさんにメリーの事を頼んで学校に行こうかとフォンテは考えていた。


「どうしようかな……熱が高いようなら僕も休むけど、ミリおばさんに言っておいたほうがいいか」


 だいぶ遅い時間だったが、大人が眠るにはまだ早いだろうとフォンテはミリおばさんの部屋を訪ねることにした。


「ん?」


 外に出てみると、なんだか騒がしかった。いつもなら皆こんな時間に外に出たりはしていないのに、今日はやけに人がいるようだった。何かあったのだろうか。フォンテはあまり気に止めずミリおばさんの部屋の扉を叩いた。するとすぐに中から返事が聞こえた。


「夜分にすみません。フォンテです」

「はーい」

「こんばんは」

「どうしたの? こんな時間に何かあった? ん? ずいぶん人がいるわね。まあ入って」

「ありがとうございます」


 ミリヒカムは夜分の客にも嫌な顔一つせずにフォンテを部屋にあげた。


「メリーは?」

「あ、メリーの事なんです。実は急に熱が出ちゃって、明日も下がらないようなら僕も学校を休もうと思ってるんだけど、良くなっているようだったら一人で休ませようと思ってるんだ」

「あら、可哀想に。わかったよ、一人になる様だったら様子を見に行くから朝声かけて行ってよ」

「はい! ありがとうございます」

「困った時は助け合わないとね!」


 ミリヒカムはフォンテに片方の目を閉じて目配せした。


「それにしても、今日は何かあったのかしら? まだ外に人がいるのね」

「ああ、やっぱり。僕も思ったんです」


 二人は扉を開けて外の様子を伺うことにした。話し声が聞こえるので耳を澄ませてみる。

 先生が来たぞ こっちだ うちの子も  

 はっきりと聞き取れたのはそれくらいだったが、どうやら他の家でも病人が出ているようだった。


「流行ってるのかしら?」

「うん、そうなのかも。メリーが心配だから戻ります」

「うん、明日どうするか声かけて行ってね」

「はい。おやすみなさい」


 フォンテはミリおばさんの部屋を出ると早足で自分の部屋に帰った。すぐにメリーの様子を窺う。少し苦しそうではあるが、ちゃんと眠っているようだった。


「早く良くなるといいな」


 フォンテも体調を崩すわけにはいかないと、翌日の準備を済ませて早く休む事にした。


「フラットも休みなの?」

「ああ、来てないみたいだな」

「へえー、ほんとに流行ってるんだな」


 翌日、メリーの熱が下がっていたのでフォンテは一人で学校に向かった。もちろんミリおばさんには言ってある。しかし、学校に来てみると、友人のフラットも学校に来ていなかった。いつもより生徒の数が少ないと感じていると教室に入ってきた先生がいつもと違った。


「ユニン先生は体調が良くないから今日はお休みです」

「ええー!」


 フォンテとエリダは顔を見合わせた。今日はクラウディオ王子の戴冠式の為の重要な学会があるのに先生まで休んでしまったのだ。フォンテもその為にメリーを置いて学校に出てきたというのに。続けていつもと違う先生がこう言った。


「悪い風邪が流行っているようなので、今日はお昼で学校は終わりにします」

「そんなに、休んでる人がいるのか」

「ああ、そうなんだな……」


 ただの風邪かもしれないが、学校が早く終わるなんて初めての事だった。フォンテとエリダは声を潜めて話した。


「お城の方は皆大丈夫なの?」

「あーどうだろうな? あんまり人に合わない時間に出てくるしなー」

「そっか。クラウディオ王子も体調崩さないといいね」

「それは一大事だな」


 エリダはクラントロワの城の中に部屋を借りて住んでいるから、城内の様子がわかるかと思ったのだがご近所付き合いはあまりしていないようだった。


「でも早く帰れるのは良かったな。メリーも心配だし」

「うん。フラットは大丈夫かな?」


 友人のフラットは一人で暮らしているはず。ポポタリの村の人達と上手くやっているようだけど、やはり少し心配だった。


「どうだろうな、帰りに様子を見に行ってくるよ」

「じゃあ僕も」

「いやいや、一人でいいよ。フォンテはメリーの所に帰らないとな」

「そう? ……うん、それじゃあフラットの事は頼むよ」

「ああ、任せろ」


 フラットの事も心配だが、やはりメリーも心細い思いをしているだろうと考え、フォンテは学校が終わったらまっすぐに家へ帰る事にした。


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