第五話 異次元執事
リアムつっよwと思ったでしょ?僕もそう思います。
【召喚・紅の王"リュオン・スカーレット"】
リアムの魔法が発動する。リアムに攻撃をしようとした賊はその魔法の余波で弾き飛ばされる。魔法陣の中心に立つ二人の人物、一人はリアム・ヴァンノエルであり、もう一人は、リアムが発動した魔法によって顕現した、異様な存在。紅の化身。その存在は、リアムに一つ、言葉をこぼす。
「行ってこい」
「ああ」
リアムはその瞬間大図書館の奥の方へと駆け出して行った。リアムに呼び出されたその男は、その眼を5人の襲撃者へと向ける。
「俺の前に立つには少々格が低い相手よのう。疾く失せよ。その場におるだけで不愉快だ」
「!俺たちは誇り高い吸血鬼狩りだぞ!お前なんざ余裕でーーーーー」
リアムによって呼び出された、リュオン・スカーレットは元ではあれど悪魔の王だ。紅の化身、暴虐の王、そして、暴食の刃。数多の二つ名で呼ばれた伝説の悪魔である。同族のために神殺しを成し遂げた、最強の悪魔である。そのような存在にかかれば多少戦えるだけの人間を殺すことなど、赤子の手を捻ることより簡単だった。気づけばすぐ隣にいた仲間の首が飛んでいるのだ。賊達が混乱するのは当たり前だった。
「っ!テメェ、何しやがった!」
「何が起こったのかわからんのか。所詮、2流以下といったところだな。貴様らのようなゴミ切れに興味はない。だが、この俺をお前などと読んでいいのはーーーーー我が親友であるリアム、そして…いや、言う必要はあるまい。貴様らには死んでもらうのだからな、必要ない」
リュオンは右手を水平に振る。そして左手を握り締める。賊はその攻撃を回避することはなかった。否、リュオンのその動きがあまりに自然体すぎたため、それが攻撃だと認識することもできずに頭と胴を亡き別れにさせ、まるで何かに喰らい付かれたように、その場から血液を残して姿を消した。その間、ちょうど20秒。
(20秒。やはり短いな。もっと長い間現世にいたいが、仕方あるまい。だが、ウィリアムよ、いつか、お前に会いにいくからな…)
リュオンは紅い粒子と化し、その場から存在を消してしまった。
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「ギャハハハハ!ほらほら、早く逃げないと殺されちゃうぞー。待て待てー」
「禁忌"レーヴァテイン"!」
「アハハハ!無駄だよ!だって今の君、弱体化してて人間の少女と変わらないくらいに弱いもん!」
「クララよ、私もそう思うだからここはそいつが走れなくなるか、仲間達がここにくるまでの間鬼ごっこと洒落込もうじゃないか!」
「アハハハ!クロにしてはいいこと考えつくじゃん!ほらほら早く逃げなよー!もっと僕たちを楽しませてよね!」
二人の正体不明の少女に追われているのは、フランドール・スカーレット。魔封じの魔道具によって『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を封じられ、さらに身体能力が大幅に下がっており、現時点の彼女の力では逃げることしかできないほどに弱体化していた。そのため、フランドールは全力を投じて走っていた。しかし、正体不明の二人の少女は足が速く、ついにフランドールは追いつかれてしまった。
「アハハハ!鬼ごっこもここまでだね!」
クララと呼ばれていた少女がその手に握っている剣をフランドールに向けて振り下ろされる…しかし、その凶刃がフランドールに触れることはなかった。
「え?」
執事服に身を包んだ青年が、フランドールを抱えていた。その青年は、怒気を孕んだ声で言った。
「貴様ら、楽に死ねると思うなよ?」
一瞬の出来事だった。クララの剣を持つ腕が肩から切り落とされ、クロと呼ばれた少女の頭と胴は亡き別れとなっていた。圧倒的な力の差。自身に叩きつけられる強烈な殺気。そして仲間が為す術なく殺されたという事実。これだけで、クララが腰を抜かし、恐怖で動けなくなるには十分だった。そして、さらに恐ろしい事実に気づく。
「美しい銀髪、その赤い眼…まさか、お前は!何故だ!何故お前が!悪魔に仕えている!悪魔殺」
少女の声はそれ以上続くことはなかった。リアムが仕込んでいた糸によって首を切り落とされたからだ。リアムはふうっと、息を吐き出す。そして、
「フランドール様、ご無事で…よかったです」
リアムは自らが抱えているフランドールが無傷であることを再確認すると、とても柔らかく、しかし儚げに微笑んだ。
キャラ紹介
リアム・ヴァンノエルについてその5
リアムは結構バカです。頭が悪いという意味ではなく、行動がバカという意味でもありませんが、バカです。言うなら親バカ…いや、身内バカです。