第一話 紅魔館
本文中に「**********」が入った場合、視点や場所が変わるのでご了承ください。
紅魔館の中には、先ほど殴り合っていたリアムと美鈴の姿があった。
「リアムさんって本当に人間ですか?」
「人間ですよ。…多分」
「最後の言葉で一気にわからなくなりましたね!?」
「それにしても…このギプスつけてると動きずらいですね」
「その怪我ですから我慢してください」
「この怪我を作ったの貴女なんですけどね…」
リアムと美鈴が談笑していると、いきなり目の前にメイドが現れた。そのメイドは美鈴に笑顔(目が笑ってない).を向け、こう言った。
「美鈴、門番の仕事はどうしたの?」
「え、ええと、ですねぇ…こ、こここの人が、け、怪我をぉ…していたので…や、休ませてあげようかと…」
「私この人に骨を折られましたよ?」
「裏切られた!?」
「美鈴、わかってるわね?すぐに門番の仕事に戻りなさい」
「は、はいぃ」
美鈴はトボトボとした足取りで来た道を戻って行った。メイドはリアムの方を見ると、
「私は十六夜咲夜と言います。美鈴がご迷惑をおかけしました。部屋にご案内するのでそちらでゆっくりとお寛ぎください」
「感謝致します。私はリアム・ヴァンノエル。いきなりで悪いのですが、此処で働かせていただくことは可能でしょうか?この怪我だと2日は仕事ができないかと」
「1ヶ月は仕事できない怪我だと思いますが…働くことについては私の一存では決められませんので、お嬢様に掛け合ってみます」
「承知いたしました」
リアムと咲夜はそれ以上話すことなく紅魔館内を進み、咲夜はリアムを部屋に通すとすぐに去ってしまい、リアムは部屋に一人きりとなった。リアムは椅子に腰掛けると静かに目を閉じて、寝息を立て始めた。ぱっと見無防備に見える姿だが、リアムは周囲に気を配り、警戒していた。よって、5分ほど経過して扉の前にやってきた人物にも気づく。リアムが目を開くと同時に、扉が開け放たれた。
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「お嬢様、少しよろしいでしょうか?」
「どうしたの、咲夜。またあのおバカ妖精かしら?フランの遊び相手にでもしてあげて」
紅茶を啜りながら咲夜の言うことを流している少女の名はレミリア・スカーレット。紅魔館の主である。だらけている姿からは微塵も想像できないが。
「いえ。例のおバカ妖精ではありません。この紅魔館で働きたいと言っている人間が訪ねてきています」
「その人間の情報は?」
「人間の名はリアム・ヴァンノエル。ボロボロの服を身に纏っていますが、歩いているだけでもそこそこ強いのは分かりました。私は人里で見たことはありませんし、幻想入りしてきた人間かもしれません。ただ、言っていることはは異常でした」
「なるほど、ねえ。言っていることが異常というのはどういうことなの?」
「腕の骨が折れているのに、2日もあれば働けると言っていました。ちなみに骨を折ったのは美鈴です」
「…面白いわね。ただ見栄を張っているのか、本気で言っているのか。いいわ。1週間、お試し期間として雇いましょう。それで紅魔館にふさわしい人間が見極めるわよ」
「承知いたしました。では、このことをリアムさんに伝えてきますが、お嬢様もいらっしゃいますか?」
「行くわ。この目で直接、見極めてやりましょう」
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「…………めでたしめでたし」
「リアムー。次の本も読んでー」
「承知いたしました。フランドール様」
リアムの膝の上に乗り、本を読み聞かせされている少女はフランドール・スカーレット。レミリア・スカーレットの妹である。リアムのいる部屋の扉を開いて入ってきた正体であり、入るなりリアムに本を読み聞かせしてほしいと言った者でもある。リアムは能力を利用して即座に清潔な執事服に着替え、フランドールはその膝に座った。その後、リアムは何冊か読み聞かせを行い、次の本に手を伸ばそうというところで、再び扉が開かれた。扉から入ってきたのはレミリア・スカーレットと十六夜咲夜だった。
「フラン?なんでここにいるの?」
「えーとね、なんだかワクワクしちゃったからここにきたの!このお兄さんが本を読んでくれたんだよー」
「そ、そう。で、貴方がリアム・ヴァンノエルでいいのかしら?」
「ええ、合っていますよ。貴女様がこの館の主でしょうか?」
「良くわかったわね。貴方は見込みがあるわね」
「恐縮です」
「リアム・ヴァンノエル、我が紅魔館は貴方をお試しで1週間雇うわ。その期間中に、この紅魔館にふさわしいか否かを見極めるわ」
「承知いたしました。2日後には仕事に取り掛からせてもらいます」
「2日で治る怪我ではないでしょう?」
「1日で治りますよ。もう1日は様子見です」
「意味がわからないわ…」
レミリアと咲夜が頭を抱えているが、無事リアムの就職が決定したのだった。
キャラ紹介
リアム・ヴァンノエルについてその2
リアムはプライベートだと一人称が「僕」で、仕事中などは「私」です。