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撃破


 迷宮主の部屋で両者が睨み合う。


【バトルオーラ】の効果で時間をかければMPは回復していくものの、封印者にも同じような特性を持っているために状況は変わらない。


 どうやって封印者の魔力障壁を突破して、一撃を入れてやるべきか。


 考えていると、先に動きを見せたのは封印者だった。


 封印者は長杖で地面を強かに打ち付けると。


 すると、地面にある黒いタイルが三枚ほどひっくり返った。


 それらには石像騎士、人面壺、バトルエイプといった魔物の彫刻が描かれている封印石板だった。魔力の供給を受けて石板からそれぞれの魔物が召喚されていく。


「アキト! さっきの魔物の召喚される石板だ!」


「俺が蓋をするからエレンは魔物の処理をしてくれ!」


「わかった!」


 人面壺からこちらに向かって放たれる炎弾を回避し、石像騎士の剣をするりと避ける。


 俺は人面壺と石像騎士を無視して即座に封印石板へと駆け寄る。


「【ストーン】」


 直方体の土を生成すると、俺は人面壺の封印石板に乗せて蓋をしてやる。


 すると、封印石板から人面壺が召喚されることはなくなった。


「ははははは! この封印石板の仕組みは罠部屋でわかってるんだ――あああっ!?」


 俺が高笑いをすると、蓋をしていたブロックが封印者の石弾によって粉砕された。


 蓋が無くなったことにより封印石板が機能を再開し、人面壺を召喚する。


 そりゃそうか。こんなちんけな蓋くらい破壊してやれば済むことだ。


 封印者を放置しては、蓋をしようがそれを壊されるだけでイタチごっことなる。


 やはり、あいつは抑えておかないといけない。


「エレン、他の魔物と封印石板を任せる!」


「ええ!? 私ではアキトのように器用に蓋は作れないぞ!?」


「なら魔物の死骸でも乗せてやればいい!」


 要は封印石板の蓋をできるものなら何でもいい。別に丁寧にブロックを生成して、乗せなければいけないわけじゃない。


「おお! それならいけそうだ!」


 エレンにできそうな対処法を伝えると、俺は浮遊している封印者へと駆け出す。


 封印者が長杖を地面に打ち付けると、闇色の触手がいくつも分裂して襲いかかってくる。


 俺はギリギリまで引き付けたところで【縮地】を発動。


 後方で触手が地面を叩く音を耳にしながら【縮地】の勢いを利用して封印者へ剣を振るう。


 封印者はすぐに魔力障壁を二枚展開。


 スキルによって勢いをつけた俺の一撃は、魔力障壁の二枚目の中ほどで止まる。


「ちっ、硬いな」


 魔力障壁を蹴りつけて距離を取ると、今度は封印者の展開した魔方陣から黒い鎖が射出される。縦横無尽に襲いかかってくる鎖を回避するが、一本だけ回避することができず右腕に巻き付いてきた。


 その瞬間、自身の所有している【縮地】が封印されたのを感じた。


 どうやらこの鎖を受けるだけでスキルを封印される効果があるらしい。


「無駄だ。俺に封印は意味がない。【解錠】」


 エクストラスキルを発動させると、俺の右腕の鎖が解放されると同時に封印されたスキルがすぐに使えるようになった。


 俺は即座に【縮地】を発動させて直進すると同時にスキルツリーを解錠する。


【シールドブレイク】を解錠し、獲得しました。


【サザンクロス】を解錠し、獲得しました。


【インフレーション】を解錠し、獲得しました。攻撃が30%上昇します。


 封印したはずのスキルが使えることに封印者は戸惑いつつも、すぐに障壁を展開して防御を固める。


「【シールドブレイク】」


 防御を打ち砕くことに特化した剣技スキル、さらに攻撃を上昇させる強化スキルを上乗せしたことによって封印者の展開した魔力障壁は一撃で砕くことに成功する。


「……ッ!?」


「【サザンクロス】」


 魔力障壁を破った俺は続けて獲得したスキルを発動。


 放たれた鋭い剣尖は封印者の胴体を十字に刻みつけた。


 豪奢な法衣が切り裂かれ、細い肋骨が何本かへし折れる。


 そのまま追撃を行おうとすると、封印者は上へと浮かび上がって回避した。


 普通の魔物であれば、刻みつけた傷を解錠してやってさらに負傷を負わせるのであるが、封印者の体は骨であるために通用しない。


 封印者はこちらを睥睨すると、長杖を下へと向けて次々と黒炎を射出してくる。


 上空から降り注ぐ黒炎に堪らず、俺は回避に専念する。


 やはり、封印者を倒しきるにはエレンの力が必要だ。


「エレン、そっちはどうだ!?」


「今、蓋をし終わったところだ!」


 回避しながら視線を向けると、ちょうどエレンがバトルエイプの死骸を封印石板の上に乗せて蓋をし終わったところだった。


 長期戦になれば、潤沢なMPと回復力を有しているあちらの方が有利だ。


 俺の【能力施錠】もずっと相手のエクストラスキルを封印できるわけではないので、できるだけ早めに決着をつけることが望ましい。


「よし、二人でやるぞ!」


「ああ!」


 封印者が長杖をこちらに向けて、一際大きな黒炎を収束させて撃ち出してくる。


「【灼熱吐息】」


 それに対してエレンが口から灼熱を吐き出した。


 黒炎と灼熱がぶつかり合うと、一瞬の均衡の果てにエレンの灼熱が黒炎を呑み込んだ。


 灼熱はそのまま上空へと伸びていき、封印者は慌てて回避を試みるが掠ったらしく左腕が炭化していた。人間であれば苦悶の声を一つも上げそうなものであるが、アンデットである封印者にそのよう

な感情はない。


 ふらふらと上空を漂う封印者へ跳躍する。


 また魔力障壁を張って防御に回るのであれば、【ジールドブレイク】で砕いてやればいい。


 そう考えて仕掛けてやると、相手は予想通りに魔力障壁を展開した。


 しかし、封印者はそれをただの障壁として利用するのでなく、こちらを押し潰すように落としてきた。


「ぐはっ!?」


 まさか、魔力障壁を飛ばしてくると思っていなかった俺は、直線的な動きをしていたということもあって回避することができない。


 正面からもろに障壁を受けてしまい、そのまま障壁ごと地面に叩きつけられる。


 背中に衝撃が響き、内臓が強く揺さぶられた。


 あまりの痛みに意識が飛びかけるが、意識を振り絞って何とか留めた。


 俺を地面に叩きつけてからも魔力障壁はさらに俺の身体をプレスしようと力を加えてくる。


 が、それは一瞬のことですぐに魔力障壁は霧散した。


 どうやらエレンが封印者を殴ってくれたお陰で魔力障壁が解けたらしい。


「アキト、大丈夫か!?」


「あ、ああ、なんとかな……」


 俺は慌てて獲得していた回復魔法の【ハイヒール】を発動させた。


 翡翠色の光が俺の肉体を覆うと、全身の痛みがスッと引いていくのを感じた。


 無事に立ち上がった姿を見せると、エレンが安堵の表情を見せる。


 あぶねえ。たった一撃を食らっただけなのに死ぬところだった。


 魔法に特化しているだけあって、一撃のダメージが桁違いだ。


 スキルツリーを解錠し、ステータスを底上げしているのに死にそうになるとはな。


 改めて迷宮主の実力の高さを理解させられた思いだ。


「エレン! 早めに決着をつけるぞ!」


「わかった!」


 封印者の繰り出した闇色の光弾を素早い動きで回避しながらエレンが返事する。


 俺も彼女と息を合わせようと走り出すと、封印者が長杖を地面に打ち付けた。


 また封印石板を出現させようとしているのかと思ったが、予想は外れて俺とエレンの周囲に青い結界が展開された。


「なんだ?」


 試しにエレンが拳を振るってみるが、結界は揺らぎを見せる様子はない。


「割れない上にスキルが使えないぞ!?」


 どうやらこの結界は魔力障壁以上の硬度を誇っているらしい。


【シールドブレイク】などの防御貫通スキルを使おうとするが、スキル自体が封印されていて使用することができない。どうやらこの結界内にもスキルを封印する効果があるらしい。


 しかし、俺のエクストラスキルまでは封印できていない。


 俺たちが出られないことを確認すると、封印者は杖を振り上げて闇色の炎を収束させていく。


「ああっ! あいつ自分だけ大魔法の準備をするなんてズルいぞ!」


 魔力を溜めて大魔法を完成させたところでこの結界を解除するか、結界ごと俺たちを消滅させるつもりだろう。


 しかし、その目論見は甘い。


「まだ俺のエクストラスキルのことをわかっていないようだな!」


 俺を閉じ込める意図をもってして作成された結界であれば、俺のエクストラスキルの効果の適用内だ。


「【解錠】」


 エクストラスキルを発動させると、俺を閉じ込めていた封印結界がガラスのような音を立てて砕けた。


 あっさりと脱出してきた俺たちを見て、封印者は完成間近の闇魔法を射出しようとする。


「させねえよ! 【能力施錠】」


 何らかの形をなそうとした闇魔法だが、俺の【施錠】によって呆気なく霧散した。


「【炎竜ノ右腕】」


 エレンは真紅の光を放ちながら右腕を肥大化させると、隙を晒している封印者を殴りつけた。


「【二門解錠】」


 俺は脳のリミッターを二門まで解錠。


 身体能力を一気に引き上げ、吹き飛んでいる封印者へと肉薄した。


 自分の中でも最高速度を無理矢理引き出し、剣撃によるラッシュをお見舞いする。


 剣を振るう度に封印者の骨が折れ、弾き飛んでいく。


 脳が焼き切れんばかりの速度で剣を振るい続けていると、封印者の眼窩を覆っていた札がシュルリと解けた。


 封印者の眼窩の奥は真っ黒であったが、突如して大きな眼球が浮かび上がった。


 異形の眼球はぎょろりと瞳を動かして瞳孔を向けると、黒色の光が収束して放とうとしてくる。奴のエクストラスキルにあった【闇光線】だろう。


 これが普通の魔物であれば、瞼を【施錠】してやるところだが、アンデッドである封印者には瞼がなかった。


「それを使うのを待っていたぜ! 【封印】」


 俺は封印者が【闇光線】を放つのに合わせて、封印石を掲げた。


 すると、放たれた闇色の光線が封印石の中へと収まる。


 奴のエクストラスキルには闇属性魔法のようで封印石が黒色に染まっていく。


 A級の封印石で封印者のエクストラスキルを封印できるかは賭けだったが、無事に封印することができたようだ。


「自分のエクストラスキルでくたばれ。【解錠】」


「――ッ!?」


 封印石に内包されていた【闇光線】が封印者に向かって至近距離から撃ち出される。


 封印者は咄嗟に何枚もの魔力障壁をかき集めることで対抗するが、【闇光線】はそれらを呆気なく砕いて眼球を貫いた。




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