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封印石


「アキト、さっきから綺麗な石が落ちてるぞ?」


 十五階層の回廊を進んでいると、エレンが透明な石を拾いながら言う。


 この迷宮ではマジックバッグを使用することができないので、倒した魔物の魔石をすべて持ち帰ることができない。持ち帰る価値のあるものだけを厳選し、大した金額にならない魔石などは放置され

てしまう。


 加工をしないまま長期間放置すると魔石に宿った魔力は抜けてしまい、濃紺な色から徐々に透明な水晶へと変化していく。魔石が透明になったということは完全に魔力が抜けてしまっている証だ。


「魔力の抜けた魔石に価値はない。持ち帰ってもお金にはならんぞ」


「これは魔石とは違う気がする。見てくれ」


 素材の対する知見の浅いエレンでも魔石を見分けることくらいはできる。


 彼女が魔石じゃないと言うのであれば、別の何かなのかもしれない。


「【分析】」


【火の封印石(E級)】 

 炎を封印することのできる石。


「エレンの言う通りだ。これは空魔石じゃなく、封印石というものみたいだ」


「ほー! どういう効果があるんだ?」


「試しに炎を出してくれるか? 【灼熱吐息】じゃない弱めのやつで頼む」


「わかった!」


 そのように言うと、エレンが手の平の上に火球を浮かべてくれた。


 火球に火の封印石を近づけて「封印」と唱えると、封印石へと火球が吸い込まれた。


「おおー!」


「こんな風に封印石の属性に合わせたものを封じる効果があるみたいだ」


 さすがは封印の迷宮。地上では見たことのない素材が落ちている。


「それはすごいな! 私の本気のブレスも封じ込めることができるか?」


「閉じ込められる属性の強さは封印石の等級によって変わる。エレンのブレスを閉じ込めるほどになると、S級のものを手に入れる必要があるだろうな」


「そうかそうか。S級の封印石じゃないと無理なのか」


 自身の力が評価されていることが嬉しいのか、エレンが腕を組んで嬉しそうに頷いた。


「とりあえず、これは便利な素材だ。積極的に拾っていこう」


「わかった!」


 魔力抜けの屑魔石ではないことが判明したので俺とエレンは回廊に落ちている封印席を拾っていく。分析してみると、水、風、土、闇、光といったそれぞれの属性に対応した封印石があった。ただ

等級はC、E、Dがほとんどであまり高い等級の封印石は落ちていなかった。


 これよりも高い等級の封印石は魔物が所持しているか、宝箱なんかに入っているのかもしれない。


「アキト、いっぱい拾えたぞー!」


 封印石を抱えたエレンが歩み寄ってくるが、踏んづけたタイルの一つが眩い光を放った。


「わっ! なんだ!?」


「転移の罠だ!」


 一緒に転移に入るべくエレンに駆け寄るが、それよりも先に魔方陣は展開されてしまい、エレンの身体が粒子化して消える。


 残念ながらエレンだけがこの迷宮のどこかに飛ばされてしまったようだ。


 彼女の足元にあった魔方陣は消失しており、なんてことのないタイルだけが残っていた。


「……まったく転移の罠とは質が悪い」


 やけに静かな回廊で俺は一人呟いた。


 スキルを封印され、仲間との緻密な連携が必要とされる封印の迷宮において、仲間との孤立は死を意味する。攻撃的なトラップや状態異常を付与する罠よりも何倍も質が悪い。


 だが、俺たちの場合は二人ともスキルが使えるし、俺よりもレベルが上であるエレンであれば魔物を相手に苦戦することはないだろう。


「さて、あいつはどこに飛ばされたのやら」


 エレンから加護を貰い、繋がりがあるお陰か何となく生きていることはわかる。


 その繋がりに意識を向ける。


「……下の階層か」


 なんとなく彼女は下にいることはわかった。


 しかし、彼女が具体的にどの辺りにいるのかはわからない。


 一階層下なのか二階層下なのかといった細かいところが不明だ。


 転移の罠で引き離される階層はそこまで大きくない傾向にあるが、闇雲に探していてはいつまで経っていても合流することができない。


「スキルを獲得しておこう」


 そう決めた俺は自身のスキルツリーへと意識へ向け、感知系のスキルが派生しているスキルツリーを解錠することにした。


【気配察知】を解錠し、獲得しました。


【魔力感知】を解錠し、獲得しました。


【追跡】を解錠し、獲得しました。


【バトルオーラ】を解錠し、獲得しました。


【バトルヒーリング】を解錠し、獲得しました。



 解錠したことにより感知系のスキルを三つほど獲得した。


 これで広大な迷宮内でエレンを探すための手がかりになるだろう。


 さらに一人でも継続的に戦闘が行えるようにMPを微量ではあるが自動的に回復していく【バトルオーラ】とHPを微量ずつ回復していく【バトルヒーリング】を獲得しておく。


 これらの強化スキルはかなり上位にあるものだったがレベルアップした恩恵によって賄うことができた。孤立してしまった俺の生存率を上げるのが優先だからな。



 アキト

 LV30

 HP:223

 MP:355/457

 攻撃:256

 防御:234

 魔力:339

 賢さ:323

 速さ:286

 エクストラスキル:【解錠&施錠】

 スキル:【分析】【身体強化】【隠密】【逃走】【剣術】【体術】【魔力増大(小)】

【ファストブレード】【ライオットソード】【レイジオブソード】【パリイ】【雷閃斬】【並列思考】【詠唱破棄】【魔力消費減(中)】【クリティカル率向上(中)】【縮地】【エアステップ】【火魔法】【土魔法】【風魔法】【回復魔法】【灼熱吐息】【炎竜ノ右腕】【気配察知】【魔力感知】【追跡】


 黒牛人を倒したことによって俺のレベルも上昇して30を越えている。


 数多くのステータス強化スキルも獲得しているので、通常のレベル30の冒険者よりもステータス値は遥かに高い。スキルの数もかなり増えているので封印の迷宮内を一人で彷徨うことに問題ない

が、それでも迷宮主に挑むには不安だ。


 封印の迷宮を攻略するにはエレンと合流するのはマストであるし、仲間となってくれた彼女を見捨てるなんて選択肢はない。


「よし、とりあえず下の階層を目指すか」


 下の階層にいることがわかった以上は、この階層に留まり続ける意味はない。


 どれだけ下かは不明だが、とりあえず下の階層に降りながら感知系スキルを使っていけば居場所を絞り込むことができるだろう。


 念のために魔力回復ポーションを呑んでMPを回復させてから進むと、目の前に壺が転がってきた。


 その壺の蓋には人間の顔がついている。真顔の表情を浮かべていた壺が醜悪な笑みを浮かべた瞬間に魔方陣が展開されて石弾が射出された。


 咄嗟に不意打ちに反応が遅れた俺は咄嗟に土の封印石を掲げた。


「ぐっ、【封印】」


 近距離から撃ち出された石弾は見事に封印石に吸収され、俺は被弾を免れた。


 即座に腰にある剣を引き抜こうとしたが、俺は咄嗟に封印された魔法を解錠すればどうなるか気になった。


「【解錠】」


 封印された魔法を【解錠】する、先ほど封印された石弾が解放されて人面壺に向けて射出された。まさか、魔法が自分に返ってくるとは思わなかったのか、人面壺は回避することもできずに顔面に石

弾が直撃した。


 人面壺

 LV35

 HP:70

 MP:250/250

 攻撃:45

 防御:56

 魔力:200

 賢さ:180

 速さ:165

 スキル:【火魔法】【土魔法】【隠密】【逃走】【挑発】


 動かなくなった人面壺を【分析】してみると魔法と速さに特化したタイプの魔物だったようだ。


「封印石に救われたな」


 拾ったばかりの土の封印石が早速と役に立ったシーンであった。


 解錠すれば、封印された魔法が解き放たれるのではと予想しての反撃だったが、予想以上に上手くいって相手の虚をつくことができた。


 封印石で相手の魔法を吸収し、解錠によってお返しする。


 アイテムの効果と俺のエクストラスキルを合わせた実にいいコンボだな。


 今後もこの技は活用していくとしよう。


 にしても、遂に魔法を使う魔物も現れるようになったのか。


 これまでスキルを積極的に使ってくる魔物はいたが、ここまで魔法に特化した魔物が出現したのはこの階層が初めてだ。


 ということは、ここから先はより冒険者に理不尽を押し付ける魔物が多いってことか。


 この迷宮の特性から存在してもおかしくはない封印石であるが、スキルを使うことのできない冒険者への救済措置的なアイテムなのかもしれないな。


 そんなことを考えながら俺はエレンのいる下の階層を目指すのだった。




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