22# ロリメイドさんの手作り料理はいかが?
「お邪魔します〜」
「ただいま」
今日は水曜日。放課後、一週間ぶり瑞ちゃんがあたしの家にやってきた。
「瑞お姉ちゃん、こんにちは」
トモくん、瑞ちゃんを見てなんか喜んでいる。まだ学校に通っていないトモくんはこの一週間ずっと一人で家に残ってだらだらしていて、あたしとお父さん以外の人にあまり誰とも会っていないからかな。
「こんにちは、トモくん〜」
瑞ちゃんは挨拶してすぐトモくんに抱きついてきた。この2人は先週一度だけ会ったばかりなのにこんなに仲がよくなったのよね。
それにしても、瑞ちゃんに抱かれたトモくんはなんか気分よくて全然抵抗感がない。あたしに抱かれた時とは随分反応が違う! やっぱり瑞ちゃんの方がいいの?
「柚ちゃん、嫉妬?」
「え? いや、別にこれくらい。あたしはトモくんと毎日抱き合っているよ」
あたしがドヤ顔で答えた。
「毎日抱かれたから飽きたんじゃない?」
「そ、そんなのことは……ないよね? トモくん?」
あたしにそう訊かれると、トモくんは答えずにそっぽを向いた。これ嘘だよね!? 毎日愛を注ぎすぎると却って逆効果なのか?
「ところでトモくん、今日も相変わらず男装ね」
そうだよね。結局あの土曜日以外は毎日今まで通り男装している。
「そんなトモくんのために、今日私はいいもの持ってきたよ」
今瑞ちゃんの手は紙袋を持っている。実は今日瑞ちゃんがここに来たのは、その『いいもの』ってのは本題だ。
「これは?」
瑞ちゃんが自分の持っている紙袋の中に手を入れて、中のものを取り出してトモくんに渡した。
「メイド服?」
「どう? これを着てみてね」
「なんでこんな服?」
トモくんが呆れたような顔をした。まあ、これは予想通りの反応だ。
「実はね、このメイド服、トモくんが料理を作っている時に着て欲しいの」
「は? なんでだよ?」
「ロリメイドが心を込めて作った料理は特別に美味しくなるのよ」
可愛い女の子の手料理を食べたいのは当たり前のことだよね。
「関係ないだろう。また言い訳ばかり」
「私もトモちゃんのメイド姿を見たいよ。トモちゃんの料理も食べてみたいし」
「瑞お姉ちゃん、今日ここで晩ご飯を食べるの?」
「うん、だってトモくんが料理上手でしょう? 柚ちゃんが絶賛したよ」
「いや、そこまでは……」
トモくん、褒められて照れているようだね。
「だから、今夜メイド服を着て、私に美味しいご飯を作ってね。お願い〜」
「料理のことはいいけど、メイド服とは関係ないし」
「せっかく買ってきたんだから。着てみて欲しいな」
「でも毎回料理を作る時はさすがに……」
「じゃ、私が一緒にいる時だけでいいよ」
「まあ、これくらいなら……」
「ありがとう。トモくん、いい子ね〜」
瑞ちゃんはなんか調子に乗ってトモくんの頭を撫で撫でした。
「別に、鈴ちゃんがいない時でも……」
「いや、別に姉貴のためにこんな服を着るってわけじゃないんだからね」
トモくん、ツンデレだ。素直じゃないね。これもこれで萌だけど。
「瑞ちゃんはこれからもよくここに来るつもりだよね? 今トモくんはまだ学校に通っていないからすごく寂しかってるよ」
きっと寂しいよね。だから瑞ちゃんが今ここに来てくれてこんなに喜んでいる。
「そうよね。来年の4月までだよね」
「うん」
「わかった」
「毎日来てもいいよ」
「いや、毎日はさすがにね……。でも毎週なら……。今日みたいに水曜日もいいよね」
「うん、それでいい」
毎週の水曜日来るのはちょうどいいかもね。
「それと、土日一緒にどこかに出掛けてもいいよ」
「いいね。じゃ、この日曜日はどう?」
「オッケー。決まりね」
やっと瑞ちゃんとトモくんと一緒に出掛けるね。なんか嬉しい。
「オレの意見も訊かずに勝手に……」
「トモくん、行きたくないの?」
「まさか女の子の服で?」
「もちろんよ」
「却下!」
案の定すぐ断られた。やっぱりトモくんは今でもまだ女の子の格好で外に出掛けたくないようだね。
「トモくん、でもね……」
「やっぱり女の子っぽい服は……」
「そう言われてもね。やっぱりトモちゃん今はもう女だよ……」
せっかく可愛い女の子なのに、可愛い服を着ないともったいない。
「ふん? 『今は』って? まるで昔は……」
「いや、何でもない」
今あたしはつい『今は』を強調してしまったね。そんな言い方だと『昔が男』だと疑われてしまうよね。瑞ちゃんもなんか勘がいいし。
「まあ、週末のお出掛けのことはさておき。とりあえず今日のトモくんはメイド服ね〜」
その後しばらく夕飯の時間まで、3人であたしの部屋で色々遊んだりお喋りしたりしていく。
ロリメイドの作る料理、今夜楽しみね〜。