17# どうやら一気に妹も弟もできた?
「やっぱり変かな? オレはこんな格好」
トモちゃんが男の子の格好をした理由を説明した後、今もまだその格好のままで自分の部屋に戻って話の続きをしている。
「そんなことないよ。むしろ意外といけるかもね」
やっぱりトモちゃん……トモくんは元男だから男のような格好をしている時の方が自然って感じだ。
それに子供だから性別を誤魔化すことが難しくない。今は問題ないけど、数年後大人になったらやっぱり無理だろうね。
「本当?」
「うん。でもずっとこんな服のままではいかないと思うよ。女の子の服もちゃんと着ないとね」
「それはわかってるけど、やっぱりこっちの方が落ち着く」
「まあ、家の中一人で誰とも会わない時なら構わないよ。でも女の子の服を着なければならない時も多いはずよ」
「わかってる。昨日の葬式とか、学校に行く時とかだね」
「うん、わかったらそれでいい」
少なくともトモちゃんは自分の体が女の子であることを自覚している。現実逃避しているってわけではない。
「でもやっぱり、もし乗っ取とられたのが男の子の体だったら、この状況はただ昔に戻るみたいなことになるよね。その場合だったらあまり大変じゃないかも」
「そうね。部屋や服とか、生き方とか、色々変える必要もなくて大分楽だよね」
お兄ちゃんが子供の頃着ていた服も残っている。今着ている服もその一着だった。だから男の子だったら昔の服はすぐそのまま着用できるよね。
今持っている女の子の服もあたしのお下がりしか持っていない。もっと買わないとあまり足りていない。
「でももういいよ。覚悟できたからこれから女の子として生きていくよ」
「そうか。ならよかった」
やっぱりトモくん強いよね。多分これは燈樹お兄ちゃんの性格のおかげでもあるよね。
「それって、つまりこれからも、その……男の子と付き合うっていうことになるのかな?」
これについてやっぱりあたしは気になっているのだからついでに訊いてみた。
「……え? それは……まだそこまで考えていないよ。恋愛のことなんて昔でも全然経験なかったし」
「そうね。そもそもお兄ちゃんは彼女いなかったよね」
確かにお兄ちゃんは今までまだ誰とも付き合ったことがないね。
「まあ、告白したことくらいはあるよ」
「は? こんなことあったっけ?」
お兄ちゃんはあたしにこんな話をしたことがないよ。てっきり恋愛のこと興味ないかと思っていた。
「断わられちゃったけど」
「やっぱりね」
「なんでオレが断られて当然だね、みたいな言い方!?」
「で、相手は誰なの?」
「どうでもいいよ。もう今のは忘れて。どうせ昔の話だ。今更もうどうでもいい」
「男の人?」
「まだ訊くのかよ!? てか、女に決まってるじゃん!」
「あはは、冗談よ」
「まったく、オレは何だと思ってるの?」
確かにそうね。でも別にお兄ちゃんがホモだったとしてもそれはそれでよくて、あたしは別に構わないけどね〜。うふふ。
「お前、また何か嫌らしいことでも考えているよね」
「えっ!?」
また顔に出たね。さっき考えたことはさすがに言えないよね。何とか言って誤魔化そう。
「いや、恋愛って難しそうだなって。それはさておき、結局トモちゃんはこれから女の子として生きていく覚悟ができたのね?」
お兄ちゃんの昔の恋愛のことも気になっているけど、やっぱりもう昔のことだ。本人もあまり言いたくないようだし。今大事なのはこれからのことだ。
「まあ、そうするしかないよ。でも……、男と付き合うとか想像したら……やっぱり嫌かも」
「そうか。でも女の子として生きていくと気が変わるかもしれないよね?」
数日前までは男だったから、そう考えてもおかしくないかもしれないけど、体が女の子になった以上、精神も変化していくだろう。
「それはよくわからない」
「まあ、今すぐ考えなくてもいいか」
でももし大人になっても恋愛対象がまだ女の子のままだったら、その時あたしにもチャンスがあるってこと? なんちゃってね。
「あ、でも男装趣味の女の子って……」
「いや、趣味じゃないし。ただ……、やっぱりたまに昔の自分に近い姿になってみたいだけ」
「そうか。なるほど」
そんな気持ちはあたしでもわかるかも。
「まあ、実はあたしは弟も欲しいよね。だからトモちゃんが男でも女でもいいかもね。じゃ、男装している時は弟扱いでいいかもね。こうしたら同時に弟も妹もいるって感じ」
「そうだな。それでいい。姉貴がそう言うのなら……」
これがいいアイデアかもね。本当にトモちゃんもトモくんもあたしは好きだ。今はなんか同時に弟と妹をゲットしたみたいで嬉しかった。
昔は『兄』で、今は『弟』と『妹』。なんか不思議だよね。そういえばまだ『姉』がいないね。あ、でも今あたし自身が姉だよね。ならそれでいいかも。
「そろそろ晩ご飯の準備をしないとね。今のオレは普通より時間かかりそうだから」
「あたしが手伝うよ」
今日の晩ご飯もまたトモちゃんの手作り料理が食べられるね。まだ小さい体で慣れていないのだから朝の時みたいにあたしが手伝わないとね。
「それはいいけど、勝手なことはするなよ。お前が食材に手を出すと危ないから」
「相変わらず酷いよ!」
料理のことになるとあたしが全然信用されていないね。でも力仕事だけなら問題ないだろう。今あたしが大きくて頼れる姉だから。
「ね、トモちゃんはそのままの格好で料理を作るつもりなの?」
「うん、そのつもりだけど」
「えー」
「それは何の問題があるの?」
「だって、やっぱり料理を作るのなら女の子の格好の方が似合うのよね」
「昔からオレがずっと料理を作っていたのに。今更……」
確かにそうだった。お兄ちゃんが男性だった時から料理が上手だ。あたしもお兄ちゃんが料理を作っている姿が好き。
「まあ、そうだけど。でもせっかく女の子になったし」
「別に昔のままでいいじゃん」
「あ、それともメイド服とかも悪くないかも」
ロリメイドさんが料理を作ってくれるって、なんかいいよね。
「そんな服は持ってるのか?」
「今度プレゼントに買ってあげる」
持っていなければ買えばいいってことだよ。
「要らないよ! メイドカフェじゃあるまいし!」
「それと、猫耳や尻尾も面白いよね」
メイドで猫耳のトモちゃんの姿を想像してみたら……うん、悪くないかもね!
「オレは着せ替え人形かよ!?」
「それとも、兎耳の方がいい?」
猫もいいけど、兎もきっと可愛いよね。狼や狐も……。
「お前本当に全然人の話聞いてない! もういい。オレはもう台所に行く」
「ちょっと待って! 行く前に写真撮らせてよ」
トモちゃんの可愛い服姿も見たいけど、やっぱり『男装幼女』も悪くないか。とにかく今『ショタっ子』の写真ゲット〜。