13# 謎のショタっ子が弟になってくれた?
放課後、下校したらあたしはすぐ家に帰る。だってトモちゃんが一人ぼっちであたしの帰りを待っているはずだから。
トモちゃんはあたしがいないと寂しがっているんだろうね。待っててね。このお姉ちゃんはすぐに帰るから。
「ただいま。トモㅊ……えっ?」
家に戻って玄関に入ってきたら、あたしを出迎えに来たのは帽子を被っている男の子だ。
この子はトモちゃんと同じくらいの身長のようだから年齢も同じく、10歳くらいかな。
格好は男の娘らしい地味なTシャツとズボンだ。家の中なのになんで帽子? この子の顔をよく見てみたらなんかどこかで会ったことがあるような気がするけど、なかなか思い出せない。
「えーと、君は誰なの?」
まさかトモちゃんは男の子を家に連れてきた? 女の子が軽々しく男の子を家に連れてくるのはなんか……。まあ、トモちゃんも元男だから男の子と遊ぶのもおかしくないかも? ……いやいや、そもそもトモちゃんはまだ学校に通っていないし。いきなり友達が家に来るのは変だよね。
「えーと、オレのこと覚えていなっ……覚えていませんか?」
「え?」
男の子が作り笑顔であたしにこんな質問をした。でも口調はなんか不自然でわざとっぽいって感じだね。
今この瞬間なぜかあたしがちょっとドキッとしちゃった。別にあたしはショタコンじゃない……と思うよ?
「いや、あたしは君のような可愛い男の子に会った覚えがないと思うけど」
「そうか。じゃそういうことにしておく……しておきます」
「何それ?」
なんか適当にこっちの答えに合わせているような……。それに無理に敬語を使おうとしているみたいね。
「もしかしてトモちゃんのお友達とか? じゃ、トモちゃんはどこ?」
「さあ、どこだと思ってます?」
また質問かよ!? なんかあたしをからかっているみたい。
「いい加減に! どうせトモちゃんはどこかで隠してあたしを観察して楽しんで笑っているだろう?」
「さあ、知らないよ〜」
そう言い残して男の子は家の奥へ走り出した。
一体全体何なのこの子? しかも人の家で勝手に……。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
あたしはすぐ追いかけて男の子の肩を掴んで留めた。突然止められた所為か、男の子は足を踏み外して彼が転んでしまった。
「痛っ……」
「ごめん、大丈夫?」
でも君が悪いのよ。突然勝手に現れて、わけのわからないことばかり言って、いきなり走り出して……。
「あれ? 髪の毛が」
さっきまでちゃんとこの子の頭に被っていた帽子が落ちて、中に隠されていたぼさぼさの長い黒髪があらわになった。
「これって、もしかして……」
「あ、バレちゃったみたいだね」
「トモちゃんなの? なんで男の子の格好を?」
謎の男の子(?)の正体はトモちゃんだったんだ。なるほど、長い髪を帽子の中に隠して男の子だと誤魔化したか。
「姉貴、とにかくお帰りなさい」
それってつまり、トモちゃんは男装している!? やっぱりトモちゃんは元男だから男の子の服を着たくてもおかしくないよね。
「これはどういうことなの? 説明してもらえない?」
「うん、わかった」
要するに、トモちゃんがいきなり燈樹お兄ちゃんの子供の頃の服を着てみたくなった。そしてどうやらサイズがぴったりでいけそうなので、そのまま着ていてあたしを驚かせようとした。
そもそもトモちゃんは今でも心は男の子のようだから、こうやって男装したらほとんど違和感なく男の子に見えるよね。
結果として、今のトモちゃんは可愛いショタっ子になった。女のあたしが見惚れてしまうくらいだ。
トモちゃんったら、何てことやったのよ! もしショタコンに会ったらどうするのよ? 襲われちゃうかもよ?
残念ながらあたしはショタコンというよりも、ロリㅌ……いや、何でもない。
とりあえず、どうやらこうやってあたしは妹だけでなくいきなり弟もできちゃったようだ。