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電車の中でぼーっとつづってみました
風呂場に歌声が響き渡る。
そこは日本でよく見るような風呂では無く、洋風な広めの浴場であった。
他に人影は無く、貸し切りのような状態。
そのど真ん中で彼女は陣取り鼻歌を奏でている。
「急に知らない所に飛ばされた時は頭の中真っ白になったけれど、住みやすい世界だね」
彼女は湯から出るべく立ち上がった。
脱衣場に向かう。
歩を進める度にたわわなソレは揺れ動く。
ウエストは締まっていて足もスラリと長い。
そんな女性的なラインをした身体に対して顔はキリッとしており、美女と言うよりも美男と呼ぶのが相応しい。
彼女はそのまま湯煙の中を進み脱衣場に入る。
「にしても、私がこんなVIP対応を受けていいのかな。
たまたま召喚されただけで特別な力も無いのに」
頭にふわっふわのタオルを被せてわしゃわしゃと水気を拭き取ってゆく。
「まぁ、私に出来る事ならやるけどさ……」
この世界では男女ではなく似合うかどうか、好きかどうかで自由に身を着飾るのが常識らしい。
彼女はスーツを選んだ。
カッチリしたものでは無く、ラフなファッショナブルな物にした。
「前の世界じゃこんなの着れなかったからなぁ。
やっと好きな服を着れるのは召喚されて良かったなぁって思うね」
一瞬表情を曇らせ、それ以上にいい笑顔でにかっと笑う。
そこらの女性はイチコロであろう程に眩しいイケメンスマイルを浮かべていると、脱衣場にメイド姿の女性が入って来た。
「真琴様、お食事が出来ております」
「すぐ行くねメリー、いつもありがとう」
二人は脱衣場を後にした。
そこはそれなりに大きな屋敷だった。
真琴は国王よりこの屋敷とメイド二人を譲り受けた。
城下町の端っこの人気の少ない、自然が多めのエリアのその屋敷にメイド二人と暮らしている。
本来であればもっといい屋敷を与えたかったと言われたが、真琴からすると十分広すぎる位だった。
大広間なんて500人規模のライブハウスがすっぽり入ってしまいそうな位広く、これ以上広いと落ち着かなさすぎて逃げ出してしまいそうだ。
一人だったらこの屋敷すらも落ち着かないだろう。
そんな屋敷なのだ、当然廊下も広い。
少なくとも国会議事堂の廊下よりは広い。
そんな廊下をメイドと共に歩き食堂に向かっている。
この金髪メイド、メリッサは私の2つ下の女の子だ。
艷やかなセミロングの髪は紙を切ってしまいそうな程に細く強く真っ直ぐ。
羨ましいキューティクルの持ち主だった。
仕事中は表情をあまり変えないようにしてるが表情豊かで可愛らしい子。
真琴はそんなメリーが好きであった。
メイドではあるが妹のように溺愛している。
一緒に歩きながら、メリーの頬を突いてみたり、頭を撫でてみたり、ずっと構っているのが日常である。
メリーも「やめてください!」とは言うが本心から嫌ではなく満更でもない。
食堂につく頃には真琴がメリーの事をおんぶしていた。
メリーはちょっと恥ずかしそうな表情をしていたがとても嬉しそうである。
続くかはわかりません