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8 忌み子じゃない!

ヒロイン確定(`-ω-´)✧

「そうか・・・あれに会ったのか・・・」


泣き疲れて寝てしまったエミリアを部屋に送り届けてから俺は陛下に謁見していた。あ、ちなみに部屋の位置は使用人に聞いても渋い顔をして知らないと頑として言われたので、エミリアの記憶を軽く見せてもらってたどり着いたが・・・そのついでにあの子の壮絶な部分を見てしまったのでわざわざ謁見に来ていた。


「知っての通りあれは特異でな。本当なら忌み子として処分するしかなかったのだが・・・私がいけないのだろうな。我が子をそのようには出来ず中途半端に情けをかけた結果がこの通りだ」


この世界でも所謂アルビノと呼ばれるものが存在する。しかし双子とアルビノはこの世界では忌み子として邪険にされるのだ。例え王族だろうとそれは例外ではない。


使用人からの冷遇に他の側妃からの嫌がらせ。そして陛下自身のこの煮え切らない態度に正直言って俺は腹を立てていたのだ。リリィといいどうして子供がこんなに不幸な目にあわないといけないんだよ。ふざけるなと思う。


それは確かに陛下の気持ちも分からなくはない。国王として容易にエミリアを贔屓に出来ないのもわかる。でも、親なら例え世界が敵でも子供を幸せにしろよと言いたい。守るべき国があるなら子供が生きられるように変えろと言いたい。


わかってる。これは俺のエゴだって。だから俺はその怒りを1度リセットする為に一息ついてから言った。


「陛下は今後あの子の将来をどうお考えですか?」

「・・・わからないというのが素直な言葉だ。忌み子のあの子はどこに出ても迫害を受けるだろう。このまま王族の影として日陰で過ごすのが1番かもしれないな」

「そうですか。ではあの子を預かってもよろしいでしょうか?」

「なに?」


俺の言葉に驚いたような表情を浮かべてから陛下は不思議そうに聞いた。


「正気かグロ爺?あの子は忌み子だぞ?」

「そんなもの私達老害が勝手に決めたものです。子供達には関係ありません。それにエミリアはエミリアです。この世界にたった1人の女の子です。泣いてる子供を守るのは大人の責務です。ここにいても苦しいのならあの子は私が育てます」


わかってる。自分から厄介事を持ち込んでるのは。でもさ・・・泣いてる子供とそのブラックな背景を見たらもう無視は出来ないでしょ。それをスルーしたら俺はもうリリィの祖父としてあの子の前で立派な祖父は出来ないと思うんだ。


「病弱な上に忌み子だ。間違いなく厄介だぞ。それでもいいのか?」

「陛下があの子のことを本気で心配して幸せにしたいなら私は出しゃばりません。でも陛下は・・・」

「・・・ああ。私はあの子を苦しめることしか出来ないだろうな」

「であれば、1度私が引き取ります。時々親として会って欲しいですが・・・とにかく、あの子がもし仮に私の元に来てもいいと言ったならその許可を貰いたいのです」


俺の言葉に陛下はしばらく考えてから頷いて言った。


「あい、分かった。あれのことは貴公に任せた」

「ありがとうございます」

「それにしても・・・貴公がこうまでお節介だとは知らなかったぞ」

「自分でもびっくりです」


多分リリィという可愛い孫が出来たからかな。あの子みたいな悲劇を繰り返したくないし、それにいつだって俺はあの子の祖父としてカッコ良くいたいのだ。


そうして俺は自分から厄介事を背負い込んだのだが・・・うん、まあ仕方ない。帰ってからリリィにはちゃんと説明しようと思いつつとりあえずエミリアの部屋に向かうのだった。





「さて・・・隠れてないで出てきたらどうだ?」


グローリーの退出を確認してから、スフレ王国の国王であるアルフレッド・スフレはそう呼びかける。グローリーは気づいてなかったが、後ろからちょこちょこ着いてきて、柱の影で2人の会話を聞いていた人物がいたのだ。


ひょこっと顔を出したその子にアルフレッドは痛ましい表情を浮かべながら言った。


「久しぶりだなエミリア。元気だったか?」

「・・・(びくっ)」


怯えるように1度隠れてからエミリアは少しだけ顔を出した。その顔は少しだけ赤くなっており、その様子にアルフレッドは苦笑して言った。


「熱烈な告白だったからな。忌み子のお前のことを本気で心配していた。お前がグロ爺に惚れたとしても私は構わないと思っている。だから・・・行ってくるといい」

「・・・(ぺこり)」


軽く頭を下げてからとたとたと歩き出すエミリア。グローリーは歳のせいか歩くのが遅いので多分今のエミリアの歩幅でも余裕で間に合うのだろう。それにしても・・・


「変わったなグロ爺。どうかあれを幸せにしてくれ」


それはアルフレッドの偽らざる本音。自分の甘さで苦しめた子供へのせめてもの罪滅ぼしだった。それがエミリアとって最良だと知るのはそう遠くない未来の話なのだった。



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