閑話 私のお爺様
生まれた時から私はいらない子と言われてきた。本当のお母様は私を産んでからすぐに亡くなって、その後に来たお義母様に私は教育として色々とされた。
使用人も皆お義母様には逆らえない。唯一の味方は生まれた時からの侍女のレレナだけ。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
そうして謝っても許しては貰えない、でも、私に出来ることはそうして謝ることだけなのでそうして耐えてきた。
でも、それは本当にいきなりのことだった。いつものように部屋の片隅で怒られないように大人しくしているといつもは殴られるだけの頭を優しく撫でられたのだ。
「リリアナ」
その声は微かに聞き覚えがあった。
「大丈夫。私は君に何もしないから。今まで1人でよく頑張ってきたね」
「・・・お、じいさま?」
「そうだ。よく覚えていたね」
お爺様とは生まれてから2回くらいしか会ったことがなかったけど・・・その笑顔を見ると安心して自然と涙が浮かんできた。
「今まで大変だったろう。すまないね。これからは私が必ずお前を守るから・・・安心して泣きなさい」
「・・・!?お、お爺様・・・わ、私・・・」
「うんうん」
「お父様とお義母様にいらないって・・・」
いつも言われてること・・・これを言えばきっとお義母様やお父様にまた怒られるとわかっていても、そのお爺様の優しい微笑みに思わずそう呟いていた。そんな私を抱き上げてお爺様は優しい笑みを浮かべて言った。
「そんなことはないさ。私にはお前が必要だよ。お前は私の可愛い孫なんだからね」
「お爺さまぁ・・・うぅ・・・」
初めて安心して泣けた。お爺様は私が泣き止むまで側にいてくれてから、何やらやることがあると1度出て行った。
その後久しぶりにレレナがちゃんとした食事を持ってきてくれたけど・・・途中で上手く飲み込めなくて吐き出してしまった。
「レレナ・・・ごめんなさい・・・」
「お嬢様のせいではありませんよ!大丈夫です!」
レレナにはいつも助けられてばかりだと思ってベッドでしばらく横になっていると、レレナと入れ替わりでお爺様が部屋に入ってきた。
「リリアナ。気分はどうかな?」
「お爺様・・・はい。大丈夫です」
優しく頭を撫でられてそう笑みを浮かべるとお爺様は持ってきたものを出して聞いてきた。
「スープを作ってきたが食べれそうかな?」
「・・・スープ?お爺様が作ったのですか?」
「ああ。無理なら後でいいが・・・っと」
起き上がるのも手伝ってくれるお爺様。
「大丈夫か?」
「ありがとうございます・・・お爺様の手作りなら食べたいです」
「なら、食べられるだけ食べるといい」
そう言ってからお爺様はスプーンでスープを掬うと私に食べさせてくれた。優しい味と温かさでポカポカしているとお爺様は微笑んで言った。
「リリアナ。今日からお前は私が面倒をみる。だから何も心配しなくていいからな」
「・・・でも、私がいるとお爺様に迷惑をかけるかも」
「どうしてそう思うのかな?」
「お父様もお義母様も言ってたの・・・『お前は居るだけで迷惑』だって。『邪魔な前妻の子供』って・・・」
不安になってしまう。私のせいでお爺様に迷惑をかけてしまうのではないかと。だけどお爺様はそんな私を優しく抱きしめてくれて言ってくれた。
「お前は私の大事な孫だよ。私はお前に側にいて欲しい。だから・・・遠慮なく私には甘えなさい。私はお前のことが本当に愛おしいのだから」
「おじさま・・・うぅ・・・」
愛おしい。生まれて初めてのその言葉とそのお爺様の温もりで私はまた泣いてしまった。この日から私の好物はお爺様の作ったスープになって・・・私は優しいお爺様のことが大好きになるのだった。