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謎生物とゴブリン達



武器かぁ………だいたいどれくらいするんだろう?

まず向こうなら銃刀法違反だから、相場が分かんないな……


ま、とりあえず……万能なモフ太(ヘルプ)がいるから大丈夫か!




「なあモフ太。だいたい剣一本は何え…何Gぐらいするの?」

『そーだなぁ……5000G?材質とか付与効果によるからね。』




ああ、鉄とか合金とか?

付与効果ってことは、攻撃力アップとかつくのかな?




『とーりーあーえーずー、そろそろゴブリンの巣窟につくよ!今のリュウには武器ないから、一応………はいこれ。』




はいどーぞ、と言われ、ぽん、と手の上に乗っかったのは木剣。

ん?木剣?


そこにあったのはまさに木剣としか言いようがない木でできた剣だった。刀じゃなくて、剣。




「え、こんなのどこから出したの?」

『まあ、「出した」っていう表現はあながち間違いじゃないけど………ボクの【想像イメージ】で作ったんだよ。』




いめーじ…………ああ、モフ太の固有スキル。

ぽん、と頭の中に浮かんだそれは、目の前の木剣と合致した。


確か、頭の中で思い浮かんだものを実物化できるんだっけ?そりゃあ便利な能力だ。


質感といい、軽さといい、確かに本物の木から作られた初心者用の剣っぽい。

でも、モフ太が命令しない限り壊れない破壊不能オブジェクトらしい。規模が大きくなるにつれて持続時間が短くなるらしいけど。




「へえさすがモフ太。」

『へっへーん!もっと褒めてくれてもいいんだよっ』

「いやそれはいいや。」

『えええ、なんで!!』




わずか二、三日ほどの付き合いだけど、こいつは絶対に褒めたりなんかしたら調子に乗るタイプだ。水樹みたいな感じだろうな。


ぷんすかぷんすか、と赤い毛を逆立てながらモフ太は俺の肩を殴ってくる。

あははーきもちいー、さすが物理一桁ー(笑)




『とりあえず、ゴブリン薙ぎ払ってね!リュウの物理なら瞬殺だから!』

「あいよ。」

『ボクは支援してるから、なんかあったらヒールかけてあげる。』

「あーい、あざっす~」

『………気の抜けた返事。』




そんなこと言われても、剣とかふったことないし。

体術系なら余裕なんだけど、見よう見まねでやってみるしかない。


モフ太の大げさなため息が聞こえたような気がするけどスルーしておいた。




そして、しばらく歩いたあと、俺たちの目の前に姿を現したのは大きな洞窟だった。

うわぁ、なんか本格的。観光名所にしても怖くて誰も来なさそう。




『ここがゴブリンの巣窟だよ。ゴブリンは特異種を除いて夜行性だから、昼間はこういう洞窟で過ごしてるの。』

「へぇ……夜行性なら暗闇に目が慣れてそうだね。それなら一瞬で片を付けないと。」

『何かあったら援護してあげるからさ。』




ふっふっふっー、と気味の悪い笑いをして、モフ太は言う。


ゴブリン。

スライムと並ぶ定番の初級キャラで、くすんだ深緑の体に金棒の木バージョンみたいな武器を持っている。

攻撃力は高いけど防御力が低い。夜行型が多く、夜に活発に活動する。


脳内のモンスター図鑑をめくり、改めて特性を確認する。

これいいかも。すぐに欲しい知識が解るから。ま、見たことがない物はさすがに無理だけど(笑)




「それじゃ、行ってくるわ。」

『はーい、行ってらっしゃーい!』




どこかに出掛けるくらいの軽さで会話をすると、俺は洞窟の中に飛び込んだ。

内部には松明がぽつ、ぽつと十メートル間隔でおかれているぐらいで、まったく明かりがない。

これはひどいな。かといっても明かりをつければばれる。これは時間の問題だぞー。


そして、そこまで考えてから俺は重要なことを思い出した。


やばい。忘れてた。この洞窟の形が分かんない。どこらへんにゴブリンているんだろう。

どれぐらいの長さなのかも高低差も分かんないからどうしよう。



今から戻るのもあれだし…………仕方ない。

使いたくはなかったが………まあいいだろう。





伝家の宝刀【勘】!






まあ、まだまだ初級キャラの巣窟だろ?それなら複雑な洞窟じゃなくて直線とかの小さな洞窟にするはず。

松明でもとって道を照らしたいところだけど、ぎりぎり届かない位置にある。なんかいらっとするな。


いって俺は背が高いほうだ。全体でも五、六番目くらいに。

幼馴染の優香や、女友達の水樹や桜と、あとは数人の男友達の中でも俺は高いほうだった。一番小さかった桜はよくジト目で「涼太の身長の三分の一を今すぐ渡してほしい」と言っていた。


だいたい今の身長が170強くらいだから、松明の位置はだいたい地面から2メートルといったところだろう。なのに天井はやや薄暗く見える程度。それだけこの洞窟の天井が高いということだ。

だけど、何かの声がさっきから聞こえる。くぐもっていて何を話してるのかは分かんないけど、明らかに人間じゃない。魔獣だ。





「ーーーにーーーーがーーーーそう」

「だかーーーーだろ!ーーーーーぞ!」

「ーーーーてーーーーよ!ーーーーーーー」

「やばいってーーーーーーだ!」





んんん?なんか焦ってるっぽいな。

忍び足で歩きつつ、会話の様子を探る。

距離が近づくたび、なんとなくはっきりと聞こえるようになってきた。




「だからーーーだって!」

「嘘ーーーぇだろ!」

「まさかーーーーー者か!」

「でもーーーーーーーだぞ!」

「大丈夫だ!だってーーーーーだぞ?」

「確かに。並の冒険ーーーーーーもんな!」




ん?ぼうけん……しゃ?ぼうけんしゃ、冒険しゃ、冒険者…………

まさか、気づかれてる?いや、んなわけないか、いくら夜行性で目が慣れてるからって言って………




「っでも、見張りが言ってたぞ!ーーーーーーーって!」

「マジかよ!ーーーーーーー体制に入れ!」





み、見張りがいたのかよ!

どこにいたんだ?てかいつあいつらに伝えたんだ?分かれ道もない一本道だぞ!




「出ーーーーれ!」

「やめとけ!ーーーーーーーそうだぞ!」

「突然背後からーーーーーーーらしい!」





……………ふむ。モフ太が殺ったのか。

だが一匹二匹逃がしたってところか。いや、あいつのことだ。()()()逃がしてやったんだろう。どーせ「リュウのために生かせてあげたんだ。感謝してね。」とか言ってそう。クエストのために。つまり、お金のために。


今回のクエストはゴブリンのドロップ品【ゴブリンの核】を提出することになっている。しかも、その数が初めの方のクエストにしては多すぎる。

この世界でのドロップ品のドロップ率は、実は魔法でとどめを刺すよりも、武術とかの物理攻撃でとどめを刺したほうが高いらしい。

そりゃあ魔法は奇襲が簡単だからな。専用の結界でも張れば物理も防げるし、万能だ。だけど、物理攻撃はそんな結界でも張られればたまったもんじゃない。不便なことも多い。だからドロップ率が高いんだと。上手くできてるような、そうじゃないような…………


もちろん、魔石系や討伐品だけじゃなく、落ちるお金や経験値の量も変化する。

たくさん倒してお金を手に入れれば、あいつとアスティリオスっていう神様の思惑である「俺にこの国の教育制度をどうにかしてもらいたい」とかいう正義感でできた理由に早く近づけられるんだろう。



……………はあ。



思わずがっくりとうなだれながら、俺は近くの岩陰に隠れる。

目がいいとはいえ、やつらの目は熱感知センサーじゃない。だからこういう方法をとらざるを得ない。

つまりは【奇襲】だ。


ゴブリン達は軍団でこっちに来ているみたいで、足音もほぼない。

だが、「声」が聞こえる。どうやら魔獣だけが発することのできる人間には聞き取れない「声」らしく、あいつらは呑気に話している。距離が近くなったことで、会話の内容が大体わかるようになってきた。




「冒険者なんだって?侵入者って。」

「ああ、どうもそうらしい。目が退化した人間には俺達の姿も見えないだろうよ!」

「暗闇は俺らのテリトリーだもんなー。」

「何人組なんだ?」

「人間一人だ。」

「なんと……たった一人で我らの巣穴にのこのことやってきたのか!」

「愚かな…………人間はそこまで落ちぶれてしまったのか。」




うーわ。むっちゃこいつら人間侮辱してる。

それに、俺一人じゃねーし。まあ、あいつは人間じゃないからある意味人間は俺一人か。ここにいるのも俺だけだし。


ま、君たちはこれから散々なめくさった()()に殺られるわけなんだけど。




俺が隠れている岩の近くに、ゴブリンがやってくる。

先頭から狩るんじゃなくて、あえて後方から攻めることで逃げられる場所をなくす。もし逃げたとしても、入り口には最強兵器(モフ太)がいる。つまりは挟み撃ちだ。

だが、この作戦の要は、俺がやつらに見られないことにある。



お願いだから……こっちみんなよ…………



心臓の音がうるさい。

一応いつでもかかれるように剣を構える。

俺は魔獣の声を人間の言葉として聞くことができるだけだから、ゴブリンみたいな目を持ってるわけじゃない。見つかったら、終わりだ。松明でかろうじて影が見えるけど、頭を出そうものなら一瞬で見つかる。



俺のすぐ横をゴブリンが通っていく。

お願いだ、警戒心の薄い馬鹿達であってくれ!



そんな願いを、どうやらモフ太の言うアスティリオス様とやらは聞き入れてくれたようだ。

末端のゴブリンが横を通り過ぎていく。あっぶねぇ………

これなら予定通り背後から襲える。



二、三メートルほど向こうに行ったゴブリン達の後ろ姿を、松明のかすかな明かりを頼りに見ながら、俺は岩陰から姿を出した。


— 一瞬で終わらせる。


俺は気配を見よう見まねで殺し、末端で呑気に背中を見せている。

これは、簡単かもしれない。ゲームで鍛えた腕、見せてやる!



肉を切り裂く無残な音が、やけに洞窟を振動させる。




「っ、敵襲だーーー!」

「全員、出口に向かえーーーー!!」




ふん。

出口に着くまでに、お前ら全員狩ってやるよ!




「………逃がさない。」




知らず知らずのうちに、俺の口元には微笑が浮かんでいた。




訂正:提出アイテムを【ゴブリンの角】・【ゴブリンの肉】から【ゴブリンの核】に変更しました

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