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前編

短めの話です。自サイトより、リメイクをしたものになります。次で完結です。


 「佐藤センセー! ここに香宮かみや来なかったぁ?」

 「何か〜こっちに向かったのを見たって聞いたんだよね~」


 新学期が始まったばかりのある春の日の放課後。僕(保健医)、佐藤の職場でもある保健室へ、怪我をした訳でもなければ、気分が悪い等といった症状も見られない派手めな雰囲気に制服をアレンジ(といった感じなんだよね…)している女子生徒達が二人やって来た。


 「いや、来ていないけど。香宮君がどうかしたの?」


 “香宮君”は校内一(まあ前年度までの話で、今年は知らないけど)モテる長身の美形男子で、今年三年に上がった生徒だ。


 「えーっとぉ、放課後アタシ達と遊びに行こーって話してたんだけどぉ、いつの間にか居なくなっちゃっててぇ」


 明るい茶色の長い髪を内巻きにしている女子がそう説明した後。


 「もう帰っちゃったんじゃないの?」


 僕は彼女達から少し視線を反らし、そう答えた。(制服のブラウス、胸元開けすぎじゃない? スカートも短いし。目のやり場に困るなあ――…)


 「あ~、そーかもー? 香宮ってぇ、テキトーなトコあるしぃ。とりあえず、アタシ達も帰ろっか」

 「そーだねー、じゃ、アタシ達行くね。またねー!」

 「「じゃーねー! 佐藤センセー!」」

 「う、うん。気をつけて帰ってね」


 彼女達を見送り、ドアが閉まったのを確認してから。ふぅ、と小さく息を吐いた。


 「へーえ? さとセンセー顔が少し赤いんだけど。さとセンセーは、ああいう子達が好みなの?」

 「うわあっ!?」


 換気の為に開けておいた窓の窓枠にいつの間にか腰を掛け、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべているのは正に今、女子生徒達が探していた、そして先に述べた長身美形で学校一の女子人気を誇る香宮君だ。


 「よっ…と。お邪魔しまーす!」


 香宮君は履いていたローファーをポイッと無造作に室内に投げ込むと、自分も保健室内に入って来た。


 「見ていたの? と言うか…女の子達、放っておいていいの?」


 呆れた視線を向け、ローファーをいらないプリントの上に置いて上げた後。僕は眼鏡のブリッジを押し上げながら問いかけた。


 「ええ? あーあー、女の子達には悪いけど、いいのいいのー。っつーか、約束なんてしてねぇし」

 「そうなの?」

 「そーだよ。だって、んな約束したら、さとセンセーに会う時間が無くなっちゃうじゃん」

 「あのねー。もう、いつもいつも。大人をからかわないでくれるかな?」

 「…――本気、なんだけどな」


 ぼそりと何かを呟いたらしい香宮君に聞き返そうとした時――…


 「ん? 今何を…うわっ?!」


 後ろからグイッと腕を引かれてバランスを崩した僕は、気づけば香宮君の腕の中に捕らわれていた。


 「な、ななな、何!?」

 「ふはっ! センセ、慌てすぎ。なー、さとセンセーさー。俺にばーっか答えさせてるけど、俺の質問には答えてくれないの?」

 「…しつも、ん?」

 「あれ? 解らない? さとセンセーは、ああいう女の子が好きなのー? ってやつ」

 「な、何言ってるの!? べ、別に僕は、ああいう子達が好きだって訳じゃないよ! その、僕は――…」


 好きになった子が好みのタイプだから、と。


 ありがちな答えを呟く。(あれ? これ別に言わなくても良かったんじゃ…?)


 「へぇ、そうなんだ? それは良い事聞いちゃった。じゃ、さとセンセーが俺を好きになれば、俺はセンセーの好みのタイプになるんだよね?」


 何を言うのかな、この生徒は―…。また、僕をからかっているのか?


「ま、まあ…そうなる、のかな?」


 そう返せば。香宮君は嬉しそうな…はにかむような笑みを浮かべていた。


 (えっ、僕をからかっていたんじゃないの、か?)


 うっ、何だろ、こういう顔を見ると香宮君も高校生って感じがする。それに、ちょっとドキッとしてしまった。


 「…って、はあっ!?」


 待った待った! ドキッて何!! 相手、生徒なんだけどー!?



ここまでお読み下さりありがとうございます!!

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