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パッとしない主人公はお腹いっぱいなのでイケメンをトラックに跳ねさせた話  作者: 千葉丸才
異世界童貞2~ダンシング太っちょ~
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level54



「オラオラァ!!休んでんじゃねぇぞてめぇら!!まだまだいけるだろうが!!」



『『ひぃ~~っ!!突撃ガー!!突撃ガー!!突撃ガー!!』』



今、俺の目の前には二匹の首領猪ドン・ブーが吊るされている。


あの後、幾つかの食べ物の探し方を教えて食べさせたのだが、日が暮れて来た為に一旦秘密基地に連れて帰り一夜を明かした。


そして、朝飯を済ませた後にコイツらを吊し上げ、限界まで種族技能スキルを使わせているのだ。


地面に置いたままだと、周辺の景色が変わってしまう為、このスタイルなのだ。



『はぁ…はぁ…はぁ…!ノシーシ!このままだと死んでしまうんでねぇか?』



『はぁ…はぁ…はぁ…!イシーシ!でも、逆らったらもっと死んでしまうだよ!頑張ってこなさないと駄目だべ!』



「正解だノシーシ。イシーシ、逆らったらもっとキツい特訓メニューにするぞ。分かったら可能な限り種族技能スキルを使え。

自分の限界を知る事は、食物連鎖サバイバルの基本にして奥義だからな。

分かったら返事をしろ!!」



『『はい!○ロリ先生!』』



「声が小せぇ!!」



『『はい!!ゾ○リ先生!!』』



「もっと出せるだろッッ!!」



『『ハイッッ!!!ゾロ○先生!!!』』



「もっと情熱的に!!」





『『ハァァイッッ!ゾロリ○生ェェェェェェッッ!!!!』』





「うるせぇぇぇぇっっ!!」



俺は近所迷惑な二匹の猪にビンタをかました後、地面に座って鬼神装きしんそうの術式を組み直し始める。


…ふーむ、やっぱり費用対効果コスパが悪過ぎる。

やはり、俺のスペックでアイゼンの全身を再現するのはキツい様だ。吸血鬼の種族技能スキルである血液貯蔵庫ブラッドプールに保存出来る血液量は、今の所大体2t程。


自分の血と混ぜ合わせて、各種の種族技能スキルに使用出来る様に成るまでの待機時間が約10時間程。


まぁ、例えスッカラカンに使い切っても、俺の場合は再生チートで補完出来る為ある程度の融通は利くが、それでも費用対効果の悪さは目に付く。


10時間に一発、しかも血液貯蔵庫ブラッド・プールをフルに使うってのは、ほぼ実戦での使用は出来ないという事に成ってしまう。



「休んでんじゃねぇぞノシーシ!!」



『あいた!!』



とりあえずサボってた悪い猪はビンタした。

俺は見てない様で見ているのだ。甘えは許さない。


…つまり、全身では無く、部分的に再現するのが理想的なのだが、それだと擬龍化…この場合は擬鬼神化とでも言うのか?

まぁ、そこは置いといて、そっちの術式前提が崩れてしまい、術として成立しなく成ってしまう…。



「イシーシ!!テメェ口だけで突撃ガー突撃ガー言ってんじゃねぇ!!種族技能スキル発動させろや!!」



『関節がぁぁぁっ!!関節がぁぁぁッッ!?』



全く…。油断すると直ぐこれだ。

俺を騙して楽しようとした悪い猪には、テキサスクローバーホールドを極めておいた。



…つまり、“部分的に再現した状態”で、俺を含めた全身を何かに見立てれば、術式を完成させる事が出来るかも知れない…。


俺がそこまで考えを纏めると、後ろから声が聞こえた。



『ちょりーっす!ユーリ!』



「…ビィ!ビィじゃないの!!

どうして私を置いて行ったの!?こんなに貴方無しじゃいられない体にしておいて…酷いじゃないの!!」



『理由は昨日も説明しただろう?

それと、そんな体にした覚えは無い。ユーリ…君は元々イヤらしい体だったんだ…』



息を吐く様に俺のボケに合わせて来た。

正に阿吽の呼吸である。

言わずもがな、我が親友にして地妖精のビィだ。



「予想以上に早かったな。街の見物は良かったのか?」



ビィの事だから、夢中に成って街中を飛んでそうだと思ったのだが…。


そう聞いた俺に向かい、若干不満気な顔を浮かべながらビィが答える。



『それがさ、登録自体は直ぐに終わったんだけど、街中を一人で出歩くのは駄目だって言われたんだ。

だからボク、皆に“連れてって!”ってお願いしたんだけど、タナスじぃも節子先生もメイリィもルイスも忙しくて一緒に出掛けるのは無理って言うんだ。

だからボク、退屈に成ってグリムに頼んで此処に連れてきて貰ったんだよ』



そう言ってため息を吐くビィだが、分からない単語がある。



「ビィ、“メイリィ”と“グリム”ってのは誰だ?」



『あぁ、ごめんごめん。メイリィはルイスの彼女で、グリムはグリフォンだよ』



成る程、メイリィはルイス氏の彼女で、グリムはグリフォンか。


…いや、ちょっと待て…



「お前、グリフォンに乗って来たのか?確か、騎獣は街中では飛行許可が必要な筈だぞ?お前、許可はとって来たのか?」



そう、飛行する魔族もわんさか居るこの世界では、街中で騎獣を飛ばす際には許可申請が必要なのだ。

そうしないと、そのルートを飛翔しているのが、結界を破り街を襲撃に来た魔族なのか、使い魔(サーヴァント)なのかの判別が難しく、手違いで迎撃される恐れがある為だ。



『許可申請?そんなのして無いよ。だって頼もうにも皆居ないし、許可待ってる間暇だもん。』



成る程…確かに暇なら仕方ない。俺も暇ならそんな許可申請はしないかも知れない…。

ビィの正論に納得しかけた俺だが、そこでハッと気付いた。



「お前、“ルイスの彼女”って言わなかったか!?

あの人彼女なんて居るのかよ!?」



確かにルイス氏はイケメンである。俺というイケメンを到達不能極クラスとすると、富士山五合目クラスには来ている。

しかし、彼はセシリアの父。

彼女なんて居ないと勝手に思い込んでいた…。



『本人は“彼女は優秀な秘書官だ”とか言って否定してたけど、絶対にあれは恋人同士だよ。もう、目を見たら分かるよ』



そう言って腕を組みながら頷くビィ。どうやら確信している様だ。


ふ~む…。

しかし、ビィはまだ幼い。もしかしたら、誤解かも知れない。

男女の心の機微を正確に理解するのは、例え超絶イケメンでも難しいのだ。

そんな風に考えていると、ビィが声を掛けて来た。



『ねぇねぇユーリ。一つ言っても良い?』



「なんだビィ?改まって。俺とお前の仲だろ?遠慮せずに言えば良いだろ?」



『ありがとう。じゃあ言わせて貰うけど、


 さ っ き か ら 食 い 付 く 所 が 微 妙 に ズ レ て る 。』



ナイス突っ込みである。

俺も正直このボケには不安が有った。


ありがとう、マイフレンド…!



『『○ロリ先生~もう無理だべよ~っ!』』



そんなこんなビィと話していると、イシーシとノシーシがそう叫んだ。



「なんだ、お前達だらしないな…。結局二匹共128回でギブアップか…」



いや、生後一ヶ月程度ならこの回数は脅威的と言えるか…。



『『…ゾロ○先生、ちゃんと数えてくれてただか!?』』



そう言って、驚いた顔で俺を見る二匹の首領猪ドン・ブー



「当たり前だろ?なんの為にこんな真似したと思ってんだよ。お前達の限界が分からないと、上手く指導も出来ないからな。俺は見てない様でも、しっかり見てるんだ。…お前達は大切な俺の生徒なんだから…」



『『せ、先生~っ!』』



キラキラした瞳で俺を見る二匹。

しかし…チョロすぎる…!チョロすぎるぞお前達…!!まるで雑なエピソードで主人公に惚れる携帯小説のチョロインの様だ。

先生は悲しい。もう少しまともなエピソードで心と股を開いて欲しい。若人わこうどよ、チョロインよりもツンデレで在れ。



『おほん!…そろそろボクにもその二匹を紹介して欲しいんだけど?』



哀しみに暮れる俺の背中から、ビィがわざとらしい咳払いをしてそう言って来た。

確かにまだ互いに紹介して無かったな。



「ビィ、コイツらは首領猪ドン・ブーのイシーシとノシーシ。まだ生まれて1ヶ月程度しか経って無いんだが、将来有望な俺の生徒だ。

イシーシ、ノシーシ。コイツは地妖精のビィ。生まれてから3年しか経って無いが、下位妖精にまで至っている将来有望な俺の友達だ」



『『イシーシとノシーシです!よろしくおねげぇします!!』』



『ボクはビィ。こちらこそよろしく!』



そう言って紹介を終えると、ビィが二匹の背中に乗ったりして遊びだした。

相変わらずのコミュ力の高さである。


まぁ、妖精の無邪気さと、素直なコイツらの気質は、元々良相性だとは思っていたが。




ーーーーーーーーーーーーー



この日はこの後、ビィも交えて鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたりして、遊びながら二匹を鍛えて終わった。


ビィは一旦街に帰した。グリフォンとビィが居なくなっていたら、流石に大騒ぎしてるだろうし、このまま泊める訳にもいかなかった為だ。

まぁ、“明日も来るよ!!”と言って帰ったので、また直ぐに会えるだろう。



明日は腹一杯飯を食べさせてから、この森の危険について教えよう。


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