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パッとしない主人公はお腹いっぱいなのでイケメンをトラックに跳ねさせた話  作者: 千葉丸才
異世界童貞2~ダンシング太っちょ~
63/68

level49



晴天。まさにそう呼ぶに相応しい天気だ。


青い空。白い雲。穏やかな風は、春の到来を感じさせる。

今日と言う日は、確かに旅立ちに相応しい。

しかし問題がある。


…俺は旅立っていないという点だ。



「よし、状況を整理しよう。俺は置いていかれた。以上」



むなしい…。誰も突っ込まないし、誰も笑わない…。ついでに言えば、言ってる俺も面白いとは思っていない…。



そう、俺は置いていかれたのだ。

討伐適正ランクSS、擬龍蜂オーデンヴァルトと言う強大な敵を打ち破ったにも関わらず、なんと放置されたのだ。

飛び去ったグリフォンは、此方に一瞥もくれず、背に乗せた裏切り者達を運んで行く。


…間違いない師匠の差し金だ。昨日のハゲいじりの復讐に違いない。

額は常人よりも遥かに広い癖に、心の広さは猫の額程も無い。これは正に“矛盾”と言う言葉の一つの完成形と言えるだろう。


許せん…!!あのハゲジジイ!!

俺は今だかつてこれ程の怒りを抱いた事は無い。

正に激おこスティックファイナリアリティプンプンドリーム状態だ。

絶対に許さない。もう二度と口も聞かない。そう俺は硬く誓った。この誓いは絶対に破らない。俺の怒りは本物なのだ。


そうして俺が固い誓いを立てた直後、師匠からビィの精神感応テレパスで連絡が入った。



『ユーリか?』



「師匠ですか?僕は一人でとても寂しいです。早く迎えに来て下さい。師匠に会いたいです。」



『…かれこれ3年程お前さんの師匠をしとるが、時々無性にお前さんが可愛い時がある。

今がその時じゃ』



「ならさっさと迎えに来いハゲ。後頭部の髭擬ヒゲもどきを抜くぞ」



『…かれこれ3年程お前さんの師匠をしとるが、時々無性にお前さんを半殺しにしたい時がある。

今がその時じゃ』



軽いジャブである。

しかし、実際なんのつもりで置いて行ったのか知りたい。

師匠はたちの悪い冗談をかます事は有るが、無意味な冗談はあまり言わない。

まぁ、あくまでも“あまり”ではあるが。



『おほん…、まぁ、色々ゴタゴタはあったが、これを期に居所を街中に移そうと思うてな。

その為に色々な手続きと根回しをしてこようと思ったのじゃ。…お前さんも街に居られる様にのぅ。

しかし、今のままお前さんを連れて行けば、門番に止められるじゃろうし、要らぬ誤解も招く。

じゃからお前さんは暫くそちらに居ってくれ。

二日程で招く事が出来ると思う』



流石師匠。なんと街に住む事に成る様だ。

良かった。俺もそろそろ街に行きたかった所なのだ。そう、俺は超絶イケメン。街に行けばナンパしまくりお持ち帰りしまくり。最終的には男しか居ない臭い街へと変わるだろう。

しかし、一つ問題がある。



「師匠、その間俺は一人ぼっちで寂しいです。ビィを帰して下さい」



そう、俺は寂しがり屋なのだ。元居た世界でも、俺は常に誰かと一緒に居たいタイプの人間だった。

学校の往き来は友人と。帰ってからは社会人の彼女と。と言う具合に、誰かと一緒じゃないと寂しいのだ。

師匠やセシリア達は仕方ないとしても、ビィは返して欲しい。


しかし―



『ノポポイ』



不意に中性的な妖精の声が聞こえる。

我が友、地妖精のビィだ。



「ビィか?何度も言わせるな。ノポポイは金色の○ッシュを知らない読者には意味が分からないんだ。

多用は避けなさい」



『ノポポイ』



この妖精…出来る!

まぁ、冗談はさて置き彼はどうやら此方に帰るつもりが無いらしい。



「ビィ…我が儘を言うんじゃ有りません。ビィが帰って来ないと、俺が寂しいでしょう?大した用事は無いけど、帰っていらっしゃい」



俺は諭す様にそう言った。

全く…寂しんボーイである俺を置いて街に行くなんて、ふざけた話だ。しかし、これで帰って来てくれるだろう。

そう思ったのだが―



『ノポポイ』



「…貴様、三度目だ…。三度も金色のガッシ○ネタを使ったんだぞ?最早Googl○で検索して元ネタを見て貰うしか無い程の愚行だ。次は無い。

早く帰って来なさい」



『やだよ、ボク街に行きたいんだもん』



「“ノポポイ”って言えやァァァァァァッッ!!」



俺の渾身の突っ込みにも怯まず、ビィは飄々と言葉を返した。



『だってだって!街には人がいっぱい居て、色んな物が有るんでしょ?

ボク、もう好奇心が止められないもん!早く行きたいんだもん!』



なんて事だ…齢三歳にして反抗期が来るとは。

確かに妖精としては成長の早いビィだが、三歳で反抗期は早すぎる。せめてイヤイヤ期を経由して欲しい。


…どうやら正攻法では言う事を聞いてはくれないらしい。



「…良いかビィ。街には人がいっぱい居る。良い人もいっぱい居る。だがな、悪い人もいっぱい居るんだ…。」



『悪い人?』



「そうだ。妖精は稀少な種族だ。それに、容姿も可愛らしい。そんな妖精は、ペットとして高い需要が有るんだ。そんなお前が一人で街に行ったら、誘拐されて売り払われてしまうかも知れないんだぞ?」



そう、これは事実だ。

妖精と言う種族はペットとして高い需要が有る。

明確な自我と高い知性を持っている種族にも関わらず、平然とそんなやり取りの対象とする人間の業には反吐へどが出るが、俺個人にどうにか出来る訳でも無い。


…だからこそ、側に居てやらないと心配なのだ。



『ノポポイ』



「このタイミングでか?お前、モノローグ的には結構良い事言った後だぞ?言葉にはしていないがな」



俺の心配を察した様に、師匠が語りかけて来た。



『案ずるな、ユーリよ。ワシもその点は考慮しておるわい。確かに野良の妖精ならば誘拐されるやも知れんが、正式な手続きを行った使い魔(サーヴァント)ならば誘拐はまずされまい』



使い魔(サーヴァント)


契約や制約等で対象と主従関係を結び、使役される霊獣や魔獣を指す言葉だ。

彼等は光の民と共に暮らし、その存在は一般的なものとして捉えられている。

オールドランド大王国に於いてもそれは同じで、様々な管理態勢が敷かれており、正式な手続きをすればとして認められる為、盗難等の被害が有れば相応の対応が成されるのだ。



『ビィも大別すれば霊獣目に属す妖精じゃ。

ワシの使い魔(サーヴァント)として制約し、正式に登録すれば、街におってもまず誘拐されたりはせん。

じゃからビィも連れて行くんじゃ』



「…個人的には嫌です。友達ダチに主従関係を結ばせるなんて…」



『…“嫌”と言う事は“反対”では無いと言う意味じゃな…?』



「…」



俺は何も答えない。

師匠の言ってる事は正論だし、理解出来る。

それが最も効率の良い選択肢だという事も。

ただ、俺はそれを肯定する気には成れなかったのだ。

それはビィを()()()()()()手続きに他成らないから。



『ユーリ、ユーリ。ボクはそんなの全然平気だよ?タナスじぃが良い人なのは知ってるし、使い魔(サーヴァント)契約はメリットの方が遥かに大きいもん。

そんな複雑に考えなくても、得をする方を選ぶだけだよ』



ビィはそう言っておどけて見せた。…まぁ、本当に気にして無いのだろう。これ以上俺が何か言っても、ビィは言う事は聞かないだろうし、俺の意見を押し付けるだけになる。俺は軽く溜め息を吐き、諦める事にした。



「…分かった。俺が行くまで変な遊びはするなよ?やるなら一緒にやろう」



『おっけー牧場!』



「師匠、ビィを頼みますよ。

そいつは賢いけど、それでも子供なんです。ちゃんと気にかけて下さい。賢い子供は、賢い老人の次にたちが悪いんですから」



『ああ、分かっておる』



「セシリア、黒のパンツはどうかと思う。白にしなさい」



『ちょっとなんで知ってるのよ!?』



『殺すぞ貴様』



最後のはルイス氏だな。本当に殺されるかも知らないから、セクハラは程々にしよう。


そんな話を最後にビィの精神感応テレパスは切れた。効果範囲から出たのだろう。

まぁ、言うべき事は言ったし、俺は俺でやるべき事をやるとしよう。


…今回の事件は気になる事ばかりだったからな…。


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