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level38



さえずるな!!下郎めがッッ!!』



奴はその声と共に息を吸い込む。

大きく膨らんだ胸部では、無数の蜂達が羽音をたてていた。


龍の息吹(ブレス)!!』



瞬間、奴の口元から大漁の蜂達が飛び出す。


淡く光りを放つ蜂達は、巨大な濁流と成って森を飲み込む。



「クソッッ!!」



俺は慌てて移動しようとするが、その効果範囲は広く、血操術のロープで届く範囲の木々は次々と飲まれて行く。


奴は勝利を確信し、笑みを浮かべたが、直後驚愕へとその表情を変えた。


()()()()


()



俺は事態を察すると、まだ無事で届く範囲にある木へとロープを伸ばして巻き付けた。


そして、そのロープを縮めながら木に手繰り寄り、スリングの様に円周を描きながら、遠心力を利用して飛び上がったのだ。


十分な加速度で飛び上がった俺は、無事に息吹の範囲から逃れる事が出来た。


そうして再び樹上に戻った俺に、奴が声をかける。



『フン…随分と器用だな……。曲芸の猿か?』



「お前の目は節穴か?

こんな超絶イケメンの猿が居たら、そこは曲芸じゃなくてミスターユニバースの会場に成るだろうがよ。

お前こそ随分と語彙があるじゃねぇか?

王を気取らないで詐欺師にでも成れよ」



軽口を叩く俺に、しかし笑みを崩さずに奴は続けた。



『フハハハハッッ!これは一本取られたとでも言って置こうか?

…しかし、もう少し周囲に気を配った方が良い』



「!?」



風切り音と共に、左頬を蜂の弾丸が掠める。

驚いた俺は、周囲を見て驚愕する。

無数の蜂達が、俺を囲む様に飛んでいるのだ。



「…いつの間に…!」



『余が放ったのは息吹を構成している兵だけでは無かったという事だ…。

…さて、何か言い残す事はあるか?』



そう言った奴に、俺は高らかに宣言する。



「有るッッ!!」



『ほう…?』



興味深そうな顔で此方を見つめる擬龍蜂。

その顔には、圧倒的優位から来る笑みが浮かんでいた。


流石は魔王候補。


しかし、俺はこういった修羅場を幾つも掻い潜って来たのだ。


冷静沈着な判断能力と、それに伴う行動力。


超絶クールな超絶イケメンとは、正に俺の事。


俺は奴に向き直り、ハッキリとこう告げた。












「ごめんなさぁぁい!!許して!!堪忍して!!堪忍してぇぇぇぇぇ!!悪気は無かったんです!!靴でも舐めます!!許してぇぇぇぇぇ!!許してぇぇぇぇぇ!!家で病気の兄弟と両親と祖父母と犬と犬に住んでるノミとバクテリアと隣の佐藤さん家の太郎がランバダ躍りながら待ってるんですぅぅぅぅうぅ!!!」






―“命乞い”―



これは昔、教育実習に来ていた新人教師に告白した時に身に付けた48の恋愛テクニックの一つだ。


なんとこの新人教師、かつて俺が告白してしまったOBの彼女の従姉妹だと言う。

それだけなら問題無いかも知れないのだが、彼女はそのOBと付き合っていると言う理由で、俺の告白を断ったのだ。


後日呼び出され、行ったファミレスには両頬を真っ赤に腫らしたOBと、泣きじゃくる二人の女性。


三者三様な理由で俺を責めて来る様は、正に阿鼻叫喚の修羅場だった。


しかし、そんな俺を救ってくれたのがこの“命乞い”。


命乞いする様さえイケメンな俺に、人々は声を失うのだ。


『“蜂散弾ビーショット”』


こいつは蜂だった。





ーーーーーーーーーーーーーーー




『…ふぅ…。これで良いかな。』



ビィはそう言って胸を撫で下ろす。



ここはユーリに指定された地下空洞。

立地的に出入口を除けば密閉空間に成っており、彼の語る罠に最も適した場所である。


言われた通り、魔術的な仕込みと、大量の小麦粉を用意していたビィは、ユーリの事を思い返していた。



『…随分とんでもない事を思い付いたもんだよねぇ…』



そう一人ごちる。

彼の語る作戦は、確かに最も合理的に擬龍蜂を葬る事が出来るだろう。

しかし、この罠は正に規格外の罠である。


こんな罠を思い付く友人に、ビィは寒気すら感じる。



―無論、面白過ぎて。



その次に思い返したのは、優しきオーガの事だ。

アイゼン…彼等の友は、もう居ない。

それを思うとまた泣きそうに成ってしまう。



『…駄目だよね、アイゼン…』



泣くのは奴を倒してから。

ビィはそう思い、再び前を見る。



『今頃命乞いしてるだろうなぁ…』



彼はそっと呟いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



『“蜂散弾ビーショット”』



奴がそう言った瞬間、周囲に強烈な精神干渉が巻き起こる。


周りに居る全ての蜂達が、淡く光り、そして俺を目掛けて飛んで来る。

このままなら、文字どおり蜂の巣にされてしまう。


なんて器の小さな奴だ。

奴の心の広さは猫の額ほども無いだろう。



だが―



「“吸血鬼の霧(ヴァンパイアミスト)”!」



飛来する蜂達が俺の体に触れる直前、俺の体が霧となり、その全てがすり抜ける。



吸血鬼の霧(ヴァンパイアミスト)



俺がアイゼンを食ったおかげで使える様に成った種族技能スキルで、文字どおり、自身の肉体を霧にするものだ。


劣化してない吸血鬼なら、そのまま移動したり出来るらしいが、生憎と俺は劣化吸血鬼。


霧状態での移動速度は正に牛歩であり、正味その場で霧になるくらいしか使い道は無い。


しかし、今はそれで十分だ。



―ガガガガガガッッ!!―



すり抜けた蜂達が、俺の立っていた枝をへし折ると同時に術を解除する。


そしてそのまま次の枝へと移り、俺は呆然とした奴を指差しこう言い放つ。












「擬龍蜂・うんこティンティン。」




響き渡る静寂。


あ、あの雲おっぱいに見える。Bカップ…いや、メーカーによってはCカップくらいかな?




『殺すッッ!!糞ガキがぁぁぁぁッッ!!』



鬼ごっこはまだ始まったばかり。





祝!50話目!

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