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level28




「…勝負?」




セシリアが怪訝な顔でこちらを見る。

俺がさっき言った言葉と合わせて、こちらの意図が掴めないでいるのだろう。



「そうだ。負けた方は勝った方の言う事を一つだけ聞く。どうだ?」



「…私に何のメリットがあるの?

そんな事をしなくても、私には貴方を殺すだけの力があるのに。」



そう言って、その手のひらに炎を宿すセシリア。

確かにそれだけの力をセシリアは持っている。



「まぁ聞けよ。

勝負をして、お前がもし勝った場合に望む物は?」



「貴方の命よ。」



間髪入れずに答えるセシリア。

まぁ、予想通りの答えである。



「ならメリットはある。

勝負を受けるなら、俺はさっきも言った通りこの場から一歩も動かないし、お前の魔術を避けもしない。」



「!?」



彼女の顔に困惑が浮かぶ。

俺は更に続ける。



「勝負の内容は、この場から一歩も動かない俺に対して、お前が放てる最強の魔術を俺に当てる事だ。

俺が生き延びたら俺の勝ちで、死んでたらお前の勝ち。

勝負は一度きりだ。

どうだ?手間が省けるだろう?」



そう言った瞬間、彼女から凄まじい怒気が放たれる。



「…嘗めてるの?

下等な劣化吸血鬼レッサーヴァンパイアが、私の魔術を受けきれる訳が無いでしょう?」



彼女の意思に反応したのか、手のひらの炎が激しさを増した。



「逃げるのか?」




―ビキッ―




俺がそう言った瞬間、セシリアを包む空気が一変した。


その顔は憤怒では無く静寂を称えているが、そこに秘めれた感情は、先程までよりも遥かに強い怒りだ。



「…私が吸血鬼から逃げるとでも言うの…?」



その怒りを絞り出す様にそう言ったセシリアに、俺は続ける。




「逃げたんだろ?」




「―ッ!」



セシリアは何も言わない。



が、熱量を増し、荒れ狂う大海原の様に変化した手のひらの炎は、彼女の感情を分かりやすく伝えてくれた。


やがて冷静に成ったセシリアは、俺から距離を取り向き直った。



「…いいわ。

その勝負受けてあげる。

ただ、御得意の地系統の魔術で逃げ切れるなんて思わないでね?

確実に殺してあげる。」



「動かないって言ってるだろ?

あぁ、それとビィは非難させても良いか?

さっきはぶちギレてたけど、こいつが無関係なのはお前にも分かるだろ?」



「…いいわ。」



そう言った俺に対して、ビィが驚いた様に話かける。



『ちょっ!ちょっとユーリ!』



この小さな友人は、俺の事を思い、気遣っている。

俺と一緒に居ようとしてくれているのだ。

しかしそんな事は分かっているが、これは譲れない。



「ビィ、分かってくれ。

この勝負は、俺にもどうなるか想像出来ない。

そんな勝負にお前を巻き込みたく無いんだ。」



俺はそう言ってビィを見つめる。



すると―















『何言ってんの?

“ナイス!死ぬならユーリだけで死んで欲しかったんだよね!”

って言うつもりだったんだよ!!』



…この小さなショウジョウバエは、俺の命さえ平気で売り渡す屑野郎だった。

そんな事は分かっているが、一人は寂しい。

やっぱり巻き添えにしたい。



「なぁ、ビィ。やっぱり一緒に…」



『死ぬならユーリ一人で死んでね!!

僕は上で見守ってるから!』



そう言うとビィは上空へと飛び去って行った。

それを見ていたセシリアが俺に話かける。



「…良い友達ね?」



「だろ?生まれたての頃から一緒に居て、あいつの人格形成にまで影響を与えた仲だからな。」



「凄く納得いったわ。」



どういう意味だ。

俺は心も超絶イケメンなんだぞ。


セシリアは再度向き直り、俺に告げる。



「…さて、じゃあ始めましょうか。

…貴方の死刑をね。」



そう言った彼女の手のひらの炎が、更に熱量を増す。


それを見た俺は、()()()()()()()()()を口にした。



「セシリア、“()()()()”で来いよ。」



「!?」



セシリアの顔に驚愕が浮かぶ。

怒り等無く、純粋な驚きの顔だった。



「驚いたわね…。

どうして得意魔術じゃないと分かったの?」



「そういうのには勘が働くんだ。

やりあってる時からずっと無理してる感じがしててな。」



そう、俺は彼女との戦闘中、ずっと違和感を感じていた。


確かに凄い精度と威力だったが、彼女が最初に放った上級魔術は、俺の無詠唱の中級魔術で防ぐ事が出来た。

無論、吸血鬼ヴァンパイアという、彼女にとってのトラウマと対面した動揺はあったと思うが、戦闘特化の神託者オラクルの魔術にしては弱かったのだ。


どうやら彼女にとって炎の魔術は思い入れのある魔術らしい。


…恐らくは亡き母の得意な魔術だったのだろう。



「…これでも十分貴方を殺せるのよ?」



それを聞いた俺は、笑いながら伝えた。



「なら、冥土の土産に見せてくれよ。

お前の最強の魔術をさ?」



「…いいわ。」



そう言うと、彼女は俺と同じく笑みを浮かべた。






―ゴウッ!!―






瞬間、彼女を中心に、とてつもないが巻き起こる。

その冷気は周囲を焼いていた炎を全て消し去り、木々は凍てつき悲鳴を上げだした。


この惨状を生み出した()は、鷹揚に俺に告げる。






「…この国には、優秀な魔術師に贈られる“二つ名”と呼ばれる制度があるの。

私は史上最年少でその二つ名を授かったわ…。」




そう言うと、彼女は両手を上に掲げ、そして続けた。




「私の二つ名は“氷姫”。

さぁ、感謝して死んでね?」











…命乞いの出番かも知れない…。










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