ビィ様無双。
『何やってんの?新手のSM?』
そう言い放った人物。
身長は40㎝程。
その身に薄い緑のローブを纏い、顔立ちは中性的な美形。
目を離せば何処かに行ってしまう様な、野良猫に似た印象を与える彼の名は、“ビィ”。
この世界で初めて出来た、我が友である。
「…!?」
この闖入者の登場に、セシリアは呆け、右手の力が緩む。
ビィはその様子を無視する様に俺に話し掛けて来た。
『ウェ~イ!ユーリ!
何やってんの?ビジュアル系バンドもビックリな赤さだね!
紅に染まってるじゃん。』
「…お前…それ…ギリギリだ…。」
『多分、ギリギリセーフさ。』
そう言ったビィは、しかし何事も無かったかの如くセシリアに話し掛ける。
『特殊性癖の発散中に悪いんだけどさ。
ちょっとユーリに用事があるんだ。
少し借りてくね。』
…なんちゅう深刻殺しだ…。
…この妖精出来る!
セシリアの拳が止まり、俺の体が回復していく。
暫く思考停止していたセシリアは、ハッと目覚め、ビィにこう言い放った。
「私の復讐の邪魔をしないで!!
貴方は無関係でしょ!!」
怒気を含むその訴えを聞いたビィは、笑みを浮かべながら答えた。
『邪魔してないじゃん。
僕は、君の復讐とは無関係のユーリに用があるんだ。
僕がユーリを連れて行った所で君の復讐にはなんの影響も無いでしょ。』
「ふざけるなッッ!!」
セシリアの怒気に併せ、彼女の背後に炎が巻き起こる。
凄まじい熱波が頬にあたるが、ビィはやはり何事も無いかの如くに振る舞う。
「その男は劣化吸血鬼なのよ!?
無関係な訳が無いでしょう!!」
怒るセシリア。だが―
『それが無関係なんだなぁ~。
ユーリがこの世界に来たのは3年前だから、君が言ってた“好血姫の乱”とは完全に無関係だよ。』
「はぁ!?」
…こいつ…人の秘密をべらべらと…。
俺はその展開嫌いなんだぞ…。
読んでて冷めるだろ…。
ビィは俺の内心の不満を無視し、セシリアに続ける。
『ユーリはこの世界の出身じゃあ無いんだって。
元居た世界で死んだと思ったら、この世界で劣化吸血鬼に成ってたんだってさ。それでこのゲルシュの森をさまよってた時にタナスじぃに拾われて、弟子に成ったの。
分かる?
4年前の事件に、3年前にこの世界に来たユーリが関わってる訳が無いでしょ。』
そう、矢継ぎ早にセシリアに事実を伝えるビィだが、しかし、セシリアは当然の反応で返す。
「そんな馬鹿な話信じる訳が無いでしょうがッッ!!」
その声に反応して、背後の炎が更に高く燃え上がる。
ですよねー。
“異世界から転生して来ました!”
なんて、病人がランバダ踊るくらいに有り得ない話なのだ。
少なくとも、超絶イケメンたる俺なら信じない。
しかし―
『…ふーん。そっか。信じないのか…。』
ビィは冷めた声で返す。
それなりの付き合いだから分かるが、ビィはかなり怒っている。
この状況を作った、セシリアに。
そして多分、それ以上に俺に対して。
ビィは俺をチラリと一瞥するとセシリアに向き直り続けた。
『じゃあ、良いよ?
さっきの話は全て嘘だと仮定しようか。
で、君はユーリをどうするつもり?』
「真祖血族の居場所を聞き出し、そして殺す!!」
『馬鹿じゃないの?』
「なっ!?」
一刀両断である。
ビィは続ける。
『分かんない?
“聞き出して殺す”って言ったけど、ユーリが嘘ついてたらどうするの?
言った場所に行って、罠が張ってあったりしたらどうするの?
普通さ、尋問するなら対象を二人以上は確保して、証言の信憑性を高めないと意味無いでしょ。
一人しか居ない劣化吸血鬼から情報聞き出そうなんて、馬鹿じゃないの?
そう言ったの。どう?分かった?』
「…ッッ!」
セシリアは押し黙る。
何か反論を考えているのか、随分と悔しげな顔をしている。
やっと何かを思い付いたのか、セシリアは話始める。
「それでも構わないわッッ!
罠なんて焼き尽くせばいい!!
違う場所なら、また新しく劣化吸血鬼を捕らえれば良い!!
私が吸血鬼を見逃す理由には成らないわッッ!!」
『ふ~ん。まぁ、軽く突っ込むけど、新しく劣化吸血鬼を捕まえれるんだったら、ユーリ殺さずに置いといて、二人確保してから尋問した方が良いんじゃない?』
「~ッッ!!」
セシリアは押し黙る。
顔は真っ赤だ。
ビィは続けた。
『まぁ、それが出来たらってのを前提に話てるけどね。
聞きたいんだけど、君ってお母さんよりも強いの?』
「そんな訳が無いでしょ!?
お母さんは、円卓の12勇者候補にも名前が上がる程の魔術師なのよ!?
私なんか相手にも成らないわ!!」
『そんなお母さんを倒した相手をどうやって倒すの?』
「……ッッ!!!………ッッ!!!??」
セシリアが凄い顔をしている。
なんか…真っ赤を通り越して黒く成ってる。
『…馬鹿?』
「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
『君がね?』
「ああ゛ぁぁぁぁあ゛ぁぁぁぁッッ!?」
………なんてこったいビィ様無双である。
悶絶しているセシリアを尻目に、ビィは俺に向き直った。
『まぁ、馬鹿はほっとくとして…ユーリ。
…何諦めてんの?』
ビィは真剣な目でそう言った。
「諦めてねぇよ。話聞いて貰えなくて、打つ手が無か『嘘つけ。』
ビィは俺の話を遮り、続けた。
『タナスじぃの娘が吸血鬼に殺されたって知った途端に諦めたよね?
“師匠の娘を殺したのが俺と同じ吸血鬼だなんてぇぇ!!”
って事?
何厨2病やってんの?』
「…」
俺は押し黙る。
何も言い返せない。
俺は確かに動揺して動けなく成っていた。
正直…今もそうだ。
『…いい?ユーリ。
タナスじぃは、ユーリが劣化吸血鬼だと分かった上で弟子にした。
娘さんの事も飲み込んで、その上で弟子にしてるんだ。
ユーリがその事で負い目を感じる必要は無いよ。』
「…分かってる…でも…。」
言い淀む俺にビィは続ける。
『そんなに気になるなら、直接タナスじぃに聞きなよ。
タナスじぃは包み隠さずに教えてくれるよ。
それにユーリはいつも言ってたでしょ?
“超絶イケメンはうじうじしないものだ”ってさ。』
ビィはそう言って俺の目を見つめる。
俺を、勇気づける様に。
「…そうだったな。」
『そうさ。超絶イケメン君。』
俺はそう言って立ち上がる。
この小さな友人の気持ちに応えるのは、言葉では無く行動なのだから―。
「何良い話ぶって終わろうとしてるの?」
その言葉が聞こえた瞬間、俺達の視界は炎に包まれた。
明けましておめでとうございます。
今一PVの伸びないこの小説ですが、今年も地道にがんばって行きます。
どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。




