level23
沈黙―
正に沈んだ様に黙っているこの二人の状況に相応しい言葉だろう。
一人は、緩やかなウェーブを描く艶やかな金髪と、海を彷彿とさせる蒼い瞳。
すっと通った顔立ちの美少女、“セシリア=アルバーン”
もう一人の人物は、10人女性が居れば、11人が毎日味噌汁を作り、残る35億人が
ビーフストロガノフを作る程の超絶イケメン―
この俺、ユーリ=ネルタナスである。
「…」「…」
痛い程の沈黙である。
師匠達が俺達を置き去りにし、飛び立って行ってからはや30分。
その間ずっとセシリア嬢は此方を見ているのだ。
不細工や、女の子馴れしてない童貞共なら、美少女にこうしてじっと見つめられると、阿呆な勘違いをするだろう。
「ブヒヒ、僕ちんに気があるブヒね?」
と―。
気持ちが悪い。
お前の何処にそんな価値があるのか。
客観的に考えてそんな訳が無い事ぐらい分かるだろう。
と、俺は思うのだが、彼等はそうは思わないらしい。
まぁ、無論そんな事を思わない童貞が大半だろうが、残念ながら勘違い野郎も沢山居るのだ。
しかし、俺は超絶イケメン。
彼女が何を考えているのかは手に取る様に分かる。
―間違いなく俺に気がある。
そう、俺は超絶イケメンなのだ。
確かに今はこんな仮面をしているが、それでも俺の超絶イケメンオーラは出ている。
無価値の童貞共とは違う、圧倒的超絶イケメンのオーラにセシリア嬢は目を離せないのだ。
…なんて事だ…。
我ながら罪な男である。
こんな幼気な美少女の心を奪ってしまったのだ…。
だが大丈夫。
彼女は間違いなく俺の合格ラインに居る美少女なのだ。
俺は受け入れる事が出来る。
「さぁ!おいで!」
そう言って俺は両手を広げてセシリア嬢を待ち構えたら鳩尾を全力で殴られた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「全く!何故タナス様は貴方みたいな軽薄で弱い男を弟子にしたのかしら!?」
セシリアはそう言って此方を睨む。
この視線、馬鹿な童貞なら自分に気があると勘違いするだろうが、超絶イケメンの俺は、彼女に気が無い事ぐらい直ぐに分かる。
これは軽蔑の眼差しなのだ。
「はは、これは手厳しいですね。
ですが、非才な我が身とは言え、弟子入りを御決めに成られたのは師父タナスです。
私としては、それに恥じぬ様に努力しているつもりですよ。」
「フンッ!!
どうかしらね!?
弟子入りも得意の命乞いで勝ち取ったものなんじゃないの!?」
…なんだと?
余りの言い種に怒りが湧く。
言うに事書いて“命乞いしたから弟子に成れた”と言い放ったのだ。
俺がいつ命乞いなんてしたんだ。
俺は命乞いと嘘をつかない事を信条にしている超絶イケメンなんだぞ?
しかし俺は超絶クールな超絶イケメン。
努めて冷静にこう言った。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………違います…?」
「なんで疑問系?」
「…まぁ、話はさておき、屋敷へ入りましょう。
客人を外でずっと立たせる訳にはまいりません。」
俺がそう言って切り出すと、セシリアは気に触ったのか、感情的にこう言い放った。
「嫌よ!貴方と二人きりで屋敷に入るなんて、身の危険を感じるわ!
貴方みたいな下浅な輩は何を考えているか分からないですもの!!私は入らないわ!!」
随分嫌われたものである。
こんなに嫌われているのに、自分に気があるなんて勘違い出来る童貞共は凄い神経だ。
超絶イケメンの俺には理解出来ない。
「…では、師父タナスは客人を外で待たせる様な非礼な輩という事に成ってしまいますね…。」
「なっ!?タナス様は関係無いじゃない!!
悪いのは貴方よ!!」
師匠の名を出すと、セシリアは目の色を変えた。
彼女の師匠に対する敬意は本物の様だ。
「はい。それは否定しません。
ですが、私は師父に留守を任された身です。
私の非礼は師父の非礼と成るでしょう。
いかに客人である貴女が私のみの責任と主張されても、この状況ではタナスアート=ラファガが非礼な人間という事に成ってしまうのですよ。」
「…!」
セシリアが悔しそうに此方を睨みつける。
俺への怒りと、師匠への尊敬がせめぎあっているのだろう。
やがて、ゆっくりと師匠への尊敬に天秤が傾く。
「…分かったわ!でも良い事!?
私に指一本でも触れたら、その全身を消し炭にするからね!?」
「ありがとうございます。
これで師父タナスに顔向けが出来ます。
それとご安心下さい。
私の守備範囲は11歳からと健全なものです。
決してセシリア様に手出し等しません。」
「全然健全じゃないわよ!!」
そう言って二人で屋敷へと入った。




