幕間―龍王と吸血鬼―
―巨大な城がある。
それこそ、“山の様に”が相応しい程の巨大さである。
城自体もそうだが、そこに備えられている門や出窓等も、極めて大きく、およそ人間には扱える物では無い。
それもそのはず、ここは人間の城では無いのだ。
“ノイシュヴァンシュタイン城”。
光の民と呼ばれるこの世界の霊長達の中で、最強と呼ばれる種族。
“龍族”の築き上げた城である。
聳え立つ山々の上に建てられた城で、白と黒とを基調としたこの城は、世界屈指の美しさと言われている。
…しかし、今は様子が違った。
その城を、無数の異形が囲んでいるのだ。
種族は様々だが、その全てに共通した点が幾つか見られる。
発達した犬歯―
白い体毛―
黒い眼球―
深紅の瞳―
“劣化吸血鬼”。
そう呼ばれる魔族である。
素体とされた種族の特長と、幾つかの種族技能を持ち合わせるが、しかし、さして高くない知能の為、討伐適正ランクはD-という、下から数えた方が早い魔族である。
しかし、数は力。
その軍勢に、龍族達は劣勢を強いられていた。
だが―
“閃熱よ我に従え”
突如として上空から閃光が走る。
その閃光は、意思を持った濁流の如く、劣化吸血鬼の軍勢を焼き払った。
“龍の息吹”と呼ばれる、龍族の魔術である。
それを放ったのは、龍族の王。
純白の体に、金色の鬣。
“白龍王レグナート”である。
龍族の中でも最強種の一角に数えられる白龍。
レグナートはその中でも最強と言われ、そして更に世界に選ばれし救世主足り得る存在、“勇者”でもある歴代最強の龍王だ。
そんなレグナートの放った龍の息吹は、ほぼ全ての劣化吸血鬼を消し去ったが、しかしレグナートの顔には余裕が見られない。
彼の眼には、上空に居る一人の人影が写っていた。
『…流石は白龍王レグナート陛下。
よもや、私と戦いながら配下を助ける余裕がおありとは。
これでは城は落とせませんね…。』
『…止める事も出来ただろうに、そのまま見逃しただけであろう…。
忌々しい“真祖血族”めが…!』
『それは過分な評価と言うものですよ陛下。
あの龍の息吹を受ける等、この身には叶わぬ事です。』
そう言いながら、その人影は笑う。
背は高く、すらりとした体型ではあるが無駄は無く鍛え上げられており、その錬度が伺える。
その頭には、兜を被っており、その顔を伺い知る事は出来ない。
『…その兜を取ったらどうだ。
王の前で無礼であろう。』
怒りの滲む声でそう言ったレグナートだが、その言葉を向けられた仮面の真祖血族は、薄く笑う様に答えた。
『私としてもそうしたい所ですが、我が君にそれを許されていないのです。申し訳ありません。陛下。』
『ならば貴様を殺して剥がしてやろう!!』
『ああ、怖い。では続きと参りましょう。』
そして、黒き光と白の閃光は、この空を覆った。




