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level18




「見事に頭だけ潰れてるな…。」



『そりゃあ、地妖精の僕が狙って干渉したんだもん。頭以外には当たらない様にね。』



「知ってはいるけど、狙い通りに当てるのは難しいもんだからな。」



『それって褒めてる?』



「あぁ、お前に俺の濡れたズボンをやろう。」



『もう持ってるからいらない。』



なんで持ってんの?


俺達は頭の潰れた突撃猪ガー・ブーの前で話をしている。


俺達の張った罠は以下の通り。



・まず、おおよその突撃猪のサイズを確認する。これはビィの担当。


・次に、崖の上に確認したサイズを元に削り出した岩を用意する。これはビィの担当。


・次に、落下地点の直ぐ下に人一人分の入る穴を開け、さらにそれに蓋をする。これはビィの担当。


・更に別の場所から穴を開け、前述の穴と繋げてトンネルを作る。これはビィの担当。


・そして、ここまで誘導して、ぎりぎりの所で蓋を無くして激突させる。これは俺とビィが担当。


・最後に激突の衝撃で落ちる岩を魔術で誘導して頭に当てる。これはビィの担当。


こうして俺の負担が99%の作戦を成功させたのだ。

流石は超絶イケメンの俺。



『…なんか、不愉快な事考えてない?』



「考えてる。」



『普通隠さない?』



そんな話をしていると、上位構造世界帯アストラルサイド突撃猪ガー・ブーの様子に変化が起きる。



「…くるぞ…“経験値”だ。」



“経験値”―



これは俺の言語化チートがそう言ってるだけで、正確な表現かは微妙なのだが、俺の知ってる概念では一番近い表現に成る。


さっきも説明したが、上位構造世界帯アストラルサイド現実世界アッシャーサイドはお互いに対して相関関係にある。

上位構造世界帯アストラルサイドに存在する物は、特別な干渉が無い限り現実世界アッシャーサイドにも存在し、その逆もしかり。

しかし、例外的な事象もあるのだ。


それが、“死を迎えた魂”である。


上位構造世界帯アストラルサイドに置いては、マナと魔力で構成されている魂だが、現実世界アッシャーサイドでは“魂”として存在している。


そして、“死を迎えた魂”は、始まりの光。

つまり、神々の元へと帰って行くのだ。

…まぁ、そう言われてるだけで学術的立証はされて無いが。


すると、現実世界アッシャーサイドでは魂が失われているのに、上位構造世界帯アストラルサイドでは、マナと魔力で構成された魂はそのまま存在していると言う矛盾が起きるのだ。


なら、上位構造世界帯アストラルサイドになぞらえて、現実世界アッシャーサイドでの魂が再構築されるかというと、そうは成らない。


何故なら、魂が宿るべき肉体も、死を迎えているのだから。


結果、上位構造世界帯アストラルサイドの魂は霧散し、消える。

その際、魂を構成する膨大なマナと魔力は、その存在を維持しようと、周囲にある自分と同性質のマナと魔力に結び付く。


つまり、近くに居る者の魂と同化するのだ。


これによって、同化した魂は、通常のマナと魔力で構成された魂よりも、より高い次元へと押し上げられる。

それによって、より高い干渉力を持つ事を、“存在力レベルが上がる”と表現しているのだ。



『あ!きたきた!!』



ビィがそう言うと、俺とビィの魂に、突撃猪ガー・ブーの魂が同化しはじめる。

なんとも表現しにくいが、独特な心地好さである。



『やったね!結構レベルアップしたよ!!

やっぱり凄い経験値だったね!』



「ああ、俺も今ならゴブリン相手に右手足を折らないレベルだろう。」



『ゴブリン相手に右手足折ったの?』



そんな話をしながら、血の回収と肉の切り分けをしていたのだが―



『ゴゴデ…ナニジデル…。』



何者かが俺達に突然話し掛けて来たのだ。



『あれは…』



「…オーガだな…。」



“オーガ”。



体長2m半程の巨躰と、強靭な膂力、“金剛皮”と呼ばれる種族技能スキルで、鋼鉄並の固さを持つ上に、武器を扱うだけの知能を兼ね備えた魔獣だ。


討伐適正ランクは“B”。


レッサーヴァンパイアは“D-”。



『ゴゴ…オデノナワバリ…。

オマエダヂ、ナニジデル。』



そう言ってオーガがコチラを睨み付ける。



『…どうする…ユーリ…。』



「決まってるだろ…。マナと魔力は回復してる。血の回収も済んでる。」



『その心は?』



「先手必勝!!」



俺はそう言うと、オーガにむかい走り出す。


オーガは慌てて右手に持っていた棍棒を振り上げた。

恐らく自分で切り出したであろうその棍棒は、粗雑な作りではあるが、サイズはゴブリンのそれの比ではない。

すさまじい威力を誇るだろう。


…当りさえすれば。


レベルアップでより強い干渉力を持った俺は、ゴブリンを相手どった時とは比較に成らない速さで距離を埋め、奴の棍棒を掻い潜り鳩尾みぞおちを殴り付ける。


ゴウッ!!という音と共に、俺の右腕が逆を向く。


そのまま股をくぐり抜け、その股間目掛けて右足を跳ね上げる。


ガッ!!という音を立てて、俺の右足がへの字を描き、俺は直ぐ様距離を取り、奴に話し掛ける。


































































『ごめんなさぁぁぁぁい!!許してぇぇぇぇぇ!!!堪忍して…堪忍して…!!

後生だからぁぁぁぁ!

病気の兄弟と両親と祖父母と犬と犬に付いてるノミがランダバ躍りながら僕の帰りを待ってるんですぅぅぅぅ!!』





“命乞い”―。


これは昔、部活のOBの彼女に告白してしまった時に学んだ、俺の48の恋愛テクニックの一つである。


あの時はOBの彼女だと知らずに告白してしまったのだ。

知らなかった事とは言え、そこは上下関係の厳しい弓道部である。

呼び出された時は正に命懸けの修羅場だった。


そんな時に俺を救ってくれたのが、この“命乞い”。


命乞いする様さえ、イケメンである俺に、人々は声を失うのだ。



『…ゾウガ…。オヤギョウダイガマッデルノガ…。』


「“ランバダ”って言えやぁァァァァッッ!!」



俺の突っ込みを意に介さず、そのオーガは続けた。



『ナラ…ゾノイノジジハヤル。モウグルナヨ…。』



…そう言ってオーガは去っていったのだ。


これ程の逆境すら回避してのける俺のイケメンぶりたるや、既に世界遺産に等しいだろう。



「やれやれ…口程にも無い野郎だったな…」



『……………ユーリ、死ぬほど格好悪いね。“試合に負けて、勝負に負ける”って奴だね。』



「試合に負けて、勝負に勝つだろ。」



『いや、両方負けてるじゃん。』



こんな感じの日々を過ごし、あっと言う間に3年が過ぎていった。


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