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―序章―
俺は深い森の中をひたすら走っていた。
息も上がらない。
夜にも関わらず、昼と変わらず見渡せる。
周囲には、それこそ世界遺産に選ばれる様な木々がところ狭しと並ぶ。
全くもって現実感の無い状況だが、
俺の肘から先の失われた右腕の傷みが、これは現実だと教えていた。
―後ろから迫る、俺の腕を食ったあの醜悪な化け物が実在していると。
―死ねない―
それこそ、腕を失おうとも。
―死ねない―
例えこのまま永遠に逃げ惑う事になろうとも。
―死ねない―
どんな事があろうとも、それだけの理由が俺にはある。
「…死んでたまるか…!」
俺の昂った命への執着が、思わず口にでる。
そう、死ねないのだ。
「 あ の 美 人 の 姉 さ ま と い っ ぱ つ ヤ る ま で !!!!!!」
そう、俺は死んでも治らぬ女好き。
これは、転生前はリア充だった俺が、異世界で童貞を卒業する迄の物語り。