物語は唐突に
妄想全開での初投稿ですので、色々なミスがあったり、変な箇所があったりで読みにくかったりするでしょうが、幼女を見守るときのような優しく温かい目でご覧ください。
やばい。死ぬ。おかしい。違う。どんな手違いだ。必死に考えてみたが、やはりわからない。誰か教えてくれ。
俺は『恋愛ゲーム』をしようとしていた筈だ。なのに。どうして――。
「盗賊に捕らわれているのだ……」
薄暗い洞窟。地面に置かれてあるランプと、盗賊共が座って囲んでいる焚火だけが唯一の明かり。多分そこそこ深いのだろう。外からの明かりはない。
「なんか言ったかガキ」
一番近くにいた目つきの悪い小太りのいかにも盗賊らしい恰好をした盗賊の一人が、俺のつい声に出てしまった愚痴。というか疑問。不満。それを聞いて声をかけてきた。
「えっと、なんでもないです……」
下を向き疲れきった様子で俺は言った。逆らえば何をされるかわからない。ここは大人しくしているのが良いだろう。
「なら黙ってろガキ」
小太りの盗賊はそれだけ言うと、もう俺に興味をなくしたのか、他の盗賊が集まっている焚火の方へと戻った。
盗賊の人数は五人。全員俺よりも大きな体で小太り。動きは遅そうだし、全力で走れば逃げ切れるかと考えてみたが、そもそも出口があるであろう方向に集まっているので無理があるか。外にも仲間がいるかもしれない。考えたくはなかったが、どう考えても八方塞がりである。
どうしようもない現実を受け入れ、悲しみに暮れていた時、そんな俺の事など知るよしもなく、全く気にもせず、盗賊共は何やら真剣な表情で話し始めた。
「あの捕まえたガキを利用して村の奴らから金や食料を巻き上げるのはどうだ」
やたら眉の太い盗賊の一人が物騒な事を言い出した。まぁ、そんな事になるだろう。という気はしていたが。
少し前、俺はとある小さな村にいた。なぜその村にいたのかという経緯はあとで話すので今は置いておく。簡潔に説明すると、その村で俺は村人と会話をしていた。そこに村の周辺で悪事を働いているという盗賊が現れた。俺は運悪く村の入り口付近にいた為に襲われ、人質として捕まったのだ。
つまり、村にいた俺を利用して村人を脅そうとしている。という事である。だが、俺はその村の住人ではないし、俺が村に着いたのがそもそも盗賊が来る数分前なので、知り合いと呼べる村人なんて一人もいないし、俺の顔すら知らない奴ばかりだろう。そんな村人に俺を人質として交渉したとして、交渉など成立するのであろうか。よっぽどのお人よしでもいなければ無理だろうな。
だが、それを伝えれば俺は実際無関係だし、解放してくれるのでは? そう思った俺は盗賊の顔色を伺いながら慎重に言った。
「あの、実は俺、あの村とは全然関係ない旅人なんですけど……。多分交渉の素材にはならないと思うので解放してくれませんか……?」
一斉に五人の盗賊共がこちらを見る。すると、最初に俺に話しかけてきた盗賊が、重い腰を上げてダルそうに近づいてきた。
「ガキ。そんな嘘を言って俺たちを騙せると思ったのか? ガキ。あの村で仲良さそうにじじいと会話してたじゃねぇか。ガキ。くだらねぇ事言ってねぇで黙ってろガキ」
「で、ですよねー……。はい、黙ってます」
俺の事を散々ガキ呼ばわりしたその盗賊は、俺の言葉を全く信用するはずもなく、ただの戯言だとしか思わなかったようだ。まぁ、そうなるよな。
見事な空振りをした俺の発言後、数分の会話で作戦を決めた盗賊共は、村に行く準備を始めた。
「今晩は宴でも開けそうだな!」
「美味い飯! べっぴんな娘!」
「はっはっはっ! これだから盗賊はやめられねぇぜ!」
「この辺には王都のような警備隊もいねぇから最高だぜ!」
「早く行こうぜ! 待ちきれねぇよ!」
盗賊共は随分気がはやく、既に村から奪った金や物で今日の夜を楽しむ予定らしい。髭の濃いテンションが上がった盗賊なんて準備中に酒まで飲み始める始末。
「ガキ! お前も来い! 早く歩けガキ!」
やたらガキ呼ばわりしてくる盗賊に強引に押される。俺は手を拘束されたまま村へと連れて行かれるようだ。さて、どうなる事やら。このまま隙を見て逃げられれば良いが。
しばらく歩くと外の光が見えてきた。丁度昼時だろうか。洞窟を出ると太陽の光で一瞬目が眩む。おそらく数時間しか洞窟にはいなかったが、外の空気がとても久しぶりのように感じられた。ゆっくりと外の空気を堪能できる時間を与えてくれるはずもなく、強引に押され歩かされる。前を見ると小さな林があり、そこを真っ直ぐに進んだ。軽い森林浴気分だが、状況は最悪。とても楽しめたものではない。
林を通過すると、そこには村が見えた。俺が捕まった村だ。
「村についても暴れるんじゃねぇぞ。少しでも怪しい行動をしたら殺すからな」
眉がやたら太い盗賊がナイフをちらつかせながら言った。
「勿論です!絶対に大人しくしてます!」
俺はそう返事をしたが、村には大勢の人がいる。盗賊が村に来れば大勢の村人が絶対に集まるはず。その時がチャンスだ。そこで何としても逃げなければ。
それからどう逃げるかを必死に考えてみたが、村が見えてから考え始めても良い方法などすぐに思いつくはずもなく、気が付けば村の入り口に立たされていた。
「このガキを返してほしければ金と食料をもってこい!」
村に到着すると、眉がやたら太い盗賊が大声で叫んだ。それを聞いた村人達が何事かと恐る恐る集まってきた。そこには俺が会話をしていたお爺さんもいた。盗賊も俺と会話をしていたお爺さんに気が付いた。
「おい、じじい! このガキを返してほしいだろ? この村の大事な大事な住人なんだろ? 早く金と食料と若い女をもってこい! 早くしねぇとガキの命はねぇぞ!」
やはり盗賊は俺を村の住人だと思っているようだ。お爺さんと目が合う。お爺さんは何故か微笑んでいる。どうして微笑んでいるのか。まったくわからない。何か策があるのであろうか。そんなお爺さんは俺の事を見ながら盗賊に言った。微笑みながら。
「おぬしら。その少年はこの村とは全然関係ない。どうか離してやってはくれぬか。関係のない者を巻き込むのはやめてくれ」
お爺さんは俺を助けようとしてくれているのか。なんと優しい人だ。盗賊はたったの五人なのだから、村の男達で追い払おうとすれば追い払えるだろうに。村とは関係のない俺の事など無視して盗賊を追い払えば良いのに。しかし、盗賊はお爺さんの言うことを全く聞き入れる気はないようだ。
「ふざけるなよ。そんな事を言って俺達がガキを解放すると思ったか? 馬鹿か? もう一度言うぞ、じじい。金と食料と若い女だ! もう次はねぇぞ。早くしろ!」
お爺さんの言葉に盗賊はイライラしていた。このままでは盗賊共は何をするかわからない。緊張で汗が出る。まずい。どうする。焦る俺。
しかし、周りの村人を見てみると、盗賊を恐れてはいるようだが、どこかに余裕を感じた。相変わらずお爺さんは微笑んでいる。何故だ。やはり策があるのか? それとも恐怖で村人全員の頭がおかしくなったのか? なんにせよ、早くしないと俺の身が危ない。だが、まだ逃げる隙がない。そして、焦っている俺の事を見ながらお爺さんは言ったのだ。
「少年よ、安心しなさい。すぐ助かる」
俺を少しでも落ち着かせる為に言ったのか。それとも本当に助かると確信しているから言ったのか。わからなかった。
「じじい。ガキが助かるだと? どうやら俺達の言うことを聞く気はないようだな……。それなら――」
お爺さんの言葉を聞いた盗賊がキレた。後ろで俺を拘束していた、やたらガキ呼ばわりしてくる盗賊がナイフを首元に突き付けてきた。怒りで鼻息が荒く興奮しているのがわかる。これはまずい。
「これが本当に最後だ! ガキが死ぬぞ! 早くしろおぉぉおっ!!」
激昂している。他の盗賊もイライラしている。しかし、先ほど同様にお爺さんは微笑んでいる。まったく動じないお爺さんや村人の様子にさすがに違和感を感じ始めているのか、髭の濃い盗賊が一人冷静に辺りを見回している。
そして髭の濃い盗賊は気が付いた。村の奥からこちらに近づいてくる者に。盗賊は知っていた。それが誰なのか。腰まで伸びた長く赤い髪。その赤い髪は風に吹かれて舞い、陽の光に照らされ、まるで炎が激しく燃えているかのようであった。俺は綺麗だと思った。しかし、それと同時に恐ろしいとも感じた。
「な、なぜお前がこんな田舎の村にいるんだ……」
髭の濃い盗賊は震えていた。怯えているのだ。そこに現れた者に。その赤い髪の『少女』に。
「なんだ嬢ちゃん! 自分から出てきたって事は俺達と遊びてぇって事だよなぁ!?」
「はははっ! 村の男が情けねぇから自分から犠牲になるとは優しい嬢ちゃんだなぁ!」
盗賊共はようやく要求したものが一つ来て意気揚々としだした。しかし、髭の濃い盗賊だけは違った。
「馬鹿野郎! 逃げるぞ! あの女はヤバイんだよ!」
一人慌てる髭の濃い盗賊。しかし、他の盗賊は何をそんなに慌てているのか。というような感じであった。
「何をそんなにビビってんだ? あんな嬢ちゃんがどうしたってんだ」
「そうだぜ? 早く捕まえちまおうぜ!」
盗賊はそう言うと、少女に近づいて行った。そして少女を捕えようと手を伸ばした。
しかし、その手が少女を捕える事はなかった。何故か。俺は恐ろしいものを見た。
盗賊は燃えたのだ。少女に触れる直前で。
そして、赤い髪の少女は不適に笑い盗賊達に言った。
「お望み通り……。遊んであげる――」
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