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アリステレスは普通に暮らしたい  作者: マンダイ
第一章 ドリント良いところ、一度はおいで
9/19

第九話

評価ポイントが100越えしてる……だと!?( ; ゜Д゜)

いつの間にこんなに増えたのかは謎ですが……皆様ありがとうございます!


あと、次回は番外編みたいな物を入れようと思っています。フォーカスの過去、ジョンドがどうなってしまうのか等、一部のことがそれで分かりますのでお楽しみに!


……ちなみにですが、ジョンドの出番は次を除いてもう無いです(ちょっとしたネタバレ




 他の街と比べたら遥かに血の気の多い者が居るドリントではあるが、まさかそれに加えて頭のネジまで吹っ飛んでいるとは思ってもおらず、責められることが無くてほっとしている反面、どうしてこうなったと頭を抱えたくなった。


 住民達に謝ろうとしていた私が馬鹿みたいに感じ、ある意味吹っ切れた私はやけくそ気味に朝食を食べ、明日終わらせようとしていた今日の分の書類を片付けてから街の警備へと乗り出した。


 すると、何処からも昨日の決闘のことについて住民達が興奮したかのように話しており、私に気付いた途端「凄かった」や「格好良かった」と、手紙に書かれていたような言葉を投げ掛けてくる。


 時々「調教してください!」やら「私を貴方様の下僕にさせてくださいぃ!!」などと聞こえてきた気がしたが、私が声の聞こえてきた方に向いた時には誰も居なかったので恐らく気のせいだろう。


 朝から多大な精神ダメージを負っていた筈なのだが、住民達の声を聞いている内に重くなっていた私の心はいつの間にか大分軽くなっており、今ならある程度までなら集中出来る状態まで戻った。


 ……ただ、軽くなった要因が決闘を楽しんだ住民達である為、私は何とも言えない気持ちになった。


 この街をより良くする為には住民達の意識改革をする必要があることを認識し、またこれからやらなければならないことが増えてしまったことについて、ため息を吐きたくなる。


 私の目標はいつになったら叶うのか。雲一つ無く晴れ渡る青空は何も答えてくれない。


 感傷的になりつつある心をどうにか保ちながら街の警備をしていると、私の行く手を遮るかのようにして一人の少女が前に出てきた。


 肩まで伸びたふわふわとしてそうな栗色の髪、そこからピョコンと伸びた一房のアホ毛、優しげな黒い瞳、花のように可愛らしい顔、そして何処かで見たことのあるような裾の短いメイド服。


 一瞬この少女が誰だか分からなかったが、メイド服と顔を見た途端にこの少女が昨日私が気絶させてしまった少女の近くで意味不明な言語を繰り返していた娘であることに気が付いた。


「フォーカスの処で働いている子か。昨日は迷惑を掛けてすまなかったな」

「い、いえいえ!迷惑だなんてそんな……」


 私が話し掛けると、少女は顔をトマトのように赤く染めながらブンブンと首を横に振った後、もじもじと何かを言いたそうにしている。


 まさか、口では迷惑に思ってないと言っておきながら、本当は迷惑代として私から金をせしめようという魂胆なのだろうか?

 もしもそうなら全面的に非はこちらにあるので、本人への謝罪と共に幾らかの金なら用意する所存である。


「……何やら、私に言いたいことがあるようだが?」

「ふぇあ!?」


 話を進める為に私がそう言うと、少女は私が内心でびっくりする程の奇声を上げた。


「え、えっと……その……」


 覚悟はとうに出来ている。あとは用件を聞くのみ。


 意を決した私は少女が話し出すのをじっと我慢し、歳の割には大きな胸の前で両指をもじもじと絡ませていた少女は、やがて一つの行動へと出た。


「ありがとうございました!!」


 目をギュッと瞑りながら、少女は私に向かってその頭を下げたのだ。


「……何がだ?」


 これには流石に驚きを隠せず、私の口からは思わずそんな言葉が出た。


「え、えっと、実はその、私の友達のミーニャちゃんは、前からジョンドっていう人に迷惑を掛けられてたんです」


 頭を上げてから少女によって語られたのは、昨日私と決闘をした青年のことについてだった。


 どうやらあの青年、昨日私が気絶させたミーニャという少女に対し、ずっと前からセクハラ行為をしていたらしい。


 具体的に例を上げるとするなら、勝手に髪を触ったり、撫で回すように手を握ってきたり、魔法が使えることを自慢してキスをせがんだり等。


 とにかく、あの青年はミーニャという少女にぞっこんで、逆に少女の方は青年から受けるセクハラに迷惑していた。


 少女はフォーカスに青年から受けるセクハラのことを話そうとしたことは何度もあるらしいが、その度に青年から魔法での脅しを掛けられ、ただの少女ではどうすることも出来なかった時に起こったのが、私と青年の決闘だ。


「これでしばらくはジョンドって人も此処には来れない筈です。ミーニャちゃんは昨日から自宅で休んでいるので、代わりに私がアリステレス様に感謝しようと思って……」

「なるほど、そういうことか」


 少女の話を聞いていく内に、私は何とも感動的な気持ちになった。


 苦しみから解放された友達に代わって、頭を下げてまで感謝の言葉を伝えた彼女の行動は、本当にその友達を思っていなければ出来ないだろう。


「安心したまえ。もうそのようなことが起きないよう、私がしっかりと注意しておく」


 この友達思いの少女の為にも、強いてはセクハラに苦しんでいた少女を助ける為にも、私は強くそう宣言した。


「あ、ありがとうございます!」

「気にしなくてもよい。これも私の役目だ」


 再び頭を下げた少女にそう言い残し、私は足早に警備隊本部へと向かう。


 私の予想が正しければ、決闘の後に手当てされた青年は警備隊の手によって捕まっている筈である。


 あの時の青年は決闘が終わった後に魔法を私に放った。つまりそれは、決闘のルールが適用されていない状態での攻撃であり、もしも私が怪我を被う物なら立派な傷害罪に当たっていた。


 今回は私が怪我を負っていないので良かったのだが、どうしてそんなことをしたのか話ぐらいは聞かなければならない。


 そうなると、青年は警備隊によって拘束されている筈であり、三日も経っていない今なら確実に警備隊本部に居るだろう。


 何で三日かと言えば、私がこの街に敷いた法律の一つに『警備隊に拘束された場合、最低でも三日間は釈放しない』というのがあるからだ。


 この法律は偽りの罪によって拘束された者の真偽を測る為に作ったものだが、これが適応されているなら青年は警備隊本部に間違いなく居る。


 ーーーそう思っていたのだが。


「昨日決闘した青年ですか?ソイツならもう居ませんよ(・ ・ ・ ・ ・)


 警備隊本部へと着いた私がベルナンドから言われたのは、思わず耳を疑うような言葉だった。


「どういうことだ。何故もう居ない?」


 まだ昨日の出来事が起きてから一日も経っていない。なのに青年が居ないというのはいったいどういうことなのだろうか。


「隊長から渡されたヤツなんですがね、此処に連れてくる途中に意識を取り戻しましてね。そしたらいきなり魔法を使って暴れ出して、俺達がどうやって止めるか考えてる内にヤツは逃走。必死になって追っかけましたがヤツの逃げ足の方が速く、あっという間に街の外へと走り去っていったんです」

「門番はどうした?追手と門番で挟み撃ちにすれば捕まえられただろう?」

「そん時はちょうど門番が交代する時間だったようで、誰も門には居なかったんですよ」

「……………………」


 ……頭が痛いというのは正にこのことだろう。


「……門番から青年らしき人物が戻ってきた報告は?」

「今のところ何も無いですね」

「……そうか」


 意気消沈となった私は、ベルナンドに青年らしき人物が確認出来たら報告するよう頼み、警備隊本部から出る。


 今日は早めに帰って寝よう。私は心の中でそう決めた。








 ▼▼▼








 アリステレスが警備隊本部から出ていった後、ベルナンドの所に部下の一人が訪れる。


「いいんですか?隊長に嘘なんかついて」

「あ?しょうがねぇだろ」


 部下の言う嘘とは勿論ジョンドのことである。ベルナンドはもうジョンドはこの街に居ないと言っていたが、実はそれは違う。


 ーーージョンドは今、この警備隊本部の地下にある牢屋の中に居るのだ。


「隊長に嘘をつくのは忍びないが、俺だって死にたくないんだよ」

「ーーーあら、それは良い心掛けですね」


 ベルナンドの言葉に答えるかのような声が聞こえてきた直後、警備隊本部の入り口が開き、一人の女性が中へと入ってくる。


 ゆらゆらと揺れる腰まで伸びた薄紫色の髪。水面のように写る碧い瞳、出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ身体、そして長裾のメイド服と黒縁の眼鏡。


 それだけの特徴を挙げられて、誰かと答えられない者はこの街に一人として居ない。


「出勤お疲れ様ですーーーマリア・ミラゲリス尋問官」


 彼女の本名を告げつつ、ベルナンドは頭を軽く下げた。


「ありがとうございます。それで、どうでしたか?」

「いいえ。魔法を使えるから貴族関係の奴かと思ってましたが、違ったようで。これがその詳細です」


 ベルナンドが一枚の紙をマリアに渡すと、マリアは軽く目を通してからその紙をベルナンドに返した。


「分かりました。では、今回は始末する(・ ・ ・ ・)ということでよろしいですね?」

「えぇ、異論はありません」


 それだけを確認すると、マリアは地下にある牢屋へと続く階段を下りて行き、完全にその姿が見えなくなった所でベルナンドとその場に居た他の者達は息を吐いた。


「全く……隊長もヤバい女に惚れられたもんだな」


 ベルナンドの呟きは誰にも答えられること無く、虚空へと静かに消えていった。

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