一ノ谷の戦い
範頼本隊と別れた金吾軍は三草山での前哨戦に勝利したのちも迂回進撃を続け、
鵯越に達したところで兵を2つに分け、
大半の兵を部下に与え平家軍1万騎が守る夢屋口に向かわせる一方、
金吾はわずか70ばかりの兵を引き連れ
辛うじて鹿が通ることが出来る
と言われる鵯越の難路を進み、
平家一ノ谷陣営の裏手。断崖の上に到達するのでありました。
迎えた2月7日の明け方を迎える少し前。
まだ暗い時間帯に
金吾隊70の内、先駆けせんと隊を抜け出した5騎が
塩谷口(福原の西側)に現れ戦闘開始。
わずか5名であったため多勢に無勢。
討ち取られようかとしたその時。
源氏方。7千余りの部隊が助太刀し激戦となる。
日が昇ると同時に
源氏平氏双方の本隊が福原の東側。生田口でも戦闘開始。
時を同じくして先に金吾と別れた部隊も夢屋口(福原の北側)での戦いが始まるなど
各所で激戦が繰り広げられているのでありました。
一方その頃、一ノ谷の金吾と正成は?
と言いますと
金吾:「正成。あの時と似ておるの……。」
正成:「関ヶ原にございますか?」
金吾:「左様。激戦を繰り広げるも双方決め手に欠け、
こう着状態となっているこの状況。
彼らの命運は我らの手に委ねられている。」
正成:「関ヶ原の時は大谷隊が用心して構えておりましたが
今回はその様子も見られない。」
金吾:「この断崖を見せられたら誰しもがそう思うであろうし、
今。実際。この地に立ってみて
普通に考えれば無防備になるのも致し方ないことかな……。」
正成:「ただ殿。降りれば勝利。
とは申せ。
無事。駆け下りるのは命懸けになりますぞ。」
金吾:「たしかに……。なぁ正成。」
正成:「なんでございましょうか?」
金吾:「この坂下るのと、大谷隊に突っ込むのとでは
どちらのほうがリスクが高いかの?」
正成:「それは大谷隊に突っ込む方にございます。」
金吾:「ワシもそう思っておった。」
「ならば駆け下りるまでよ。」
と一ノ谷の断崖絶壁を駆け下る金吾隊。
予期せぬ方向からの来襲に一ノ谷の平家軍は大混乱。
そこに駆け下った金吾隊が各所に火を放ったからさぁ大変。
算を乱した平家軍は我先にと船を目指すのでありました。
その後。塩谷口から夢谷口。生田口の各所で源氏方が平氏の防衛線を突破。
敗れた平氏方は、この戦いで多くの一門を失うのでありました。
ただし当初の目的の1つでありました
三種の神器を奪い返すことが出来なかったため、
戦いはまだ続くことになるのでありました。