第一話
身体の何処?
君と同化した部分・・・
確かに存在する其れを僕は知らない
まるで引き寄せあうかのように
出会いと表現するにはあまりに陳腐でそぐわない
それは再会
遥か遠くから導かれた同士
決められた運命など要らない
あるのは現実と幻想の狭間
言葉とメロディー
すべては君に届くように
いつからだったか。
それは耳鳴りのように彼女の鼓膜を刺激していた。
彼女高田蒼音は、ただ生きている。
朝起き・仕事に行き・出来るだけ何も起きないように働き・帰る。
まわりの人々と同じように、波風が立たないように。
小さな頃は人見知りで内気な子だった。
そして歳を重ねるにつれて人との付き合い方を身に着けた。
初対面の人には笑顔で少し冗談を交えて挨拶をする。
仲良くなってもそれは変わらず、笑顔で相手を笑わせながら会話をしていれば人間関係などに問題が起きたりは殆どしない。
しかし蒼音にとってそれはとても心を磨り減らすことだった。
相手の顔色を窺う作業。
友達や仕事仲間に「蒼音は面白いとか明るい」などと言われても、正直嬉しいなんて思えなかった。
まるで、他人と接している時の自分がピエロのように思えて仕方ない。
本当の自分が何処にあるのか分からないことに気付かないフリ。
人と心の底から分かり合うことなど、どう考えても無理に思える。
私の心は何処にある?
この鼓膜に響くメロディーは私のもの?
それとも他の誰かのもの?