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俺の妹が厨二病なのだが…ドウシテコウナッタ…  作者: 甘党代表 ツブアン派
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1.俺と妹


『お兄ちゃん、朝だよぉ〜起きて〜。もう、遅刻しちゃうよぉ〜。はやくぅ〜ご飯覚めちゃうからぁ〜』


ユミたん、今日も最高にかわいいね。


俺は『妹』と表紙に書かれたノートを取り出し、新しいページに『NO.43 高宮由美』と記入する。ユミたんは俺の43人目の妹になった。さぁてと、次はどの妹に、会いに行こうかな。本棚に綺麗に並べたゲームを眺める。


あぁ、この薄いスクリーン越しにしか会えないなんて。薄いのに厚い壁…2次元と3次元の厚い壁…俺もそっちの世界に行きて〜よ、ユミたん。


バンッ


勢いよく俺の部屋の扉が開いた。


「時は満ちた。汝、我に供物を捧げよ。さもなくばそなたの命を差し出せ!」


現実とは残念なものだ。そう、これが俺の妹、萌華である。黒いローブを羽織り、右手には包帯を巻き、目には片目ずつ青と赤のカラコンを入れている、自称魔王サタンの隠し子で命を刈り取るハーヴェストらしい…見ての通り厨二病なのだ。


「おい、萌華。お前勝手に俺の部屋入るなって言っただろ。」


「汝、我が欲求を満たせ。我が名はハーヴェスト。魔王サタンを父に持つ正統な魔族の血を引き継ぐもの。人間よ、我と話せることを感謝せよ。」


あぁあぁあ…お前の父親はただの人間だぞ、痛すぎる。こいつが言いたいのはタブン俺の二次元の妹たちが言うように変換すれば、


『お兄ちゃん、お腹減ったよぉ〜ご飯まだぁ?』


こんなとこだろう…初めは何言ってんのかわからんかったがわかるようになってきた。慣れって怖い。


「食いもんなら買いに行かないとないぞ。」


「供物がないだと…今こそ旅立ちの時。ここ失われた楽園ロスト・エデンを出て世界の果て《ワールズ・エンド》へいざ行かん。」


こいつは本当に大丈夫なのか…お兄ちゃん心配だよ。それにしてもいちいちカタカナが、ウザい。


『お兄ちゃん、外にお買い物に行こぅよ〜』


なぜこう言ってくれんのだ、妹よ。そしてお前と出かけるのは嫌だ。俺も痛い目で見られるじゃんかよ。



*・*・*・*・*・*・*・*・*



だから嫌だって言ったんだ…萌華は黒いローブを羽織っているせいですごく目立つ。通り過ぎる人からの『なんだこいつら』と視線が刺さる。俺は無関係だよー。


「わぁー、ママ、魔女がいるよ。」

小さな男の子が指をさしてきた。やめろ少年そんなことしたら…


「少年、我は魔王サタンの子。魔女ではない…特別に我が真名を教えよう。我が真名は命を刈り取るもの《ハーヴェスト》!」ババッ黒いローブを風が吹いたかのようになびかせる。もちろん、自分で。(効果音も自前。)


だから、嫌なんだよ。やめてくれ頼むから。


「おい、萌華。はやく買い物行くぞ。」


「人間、気安く触るな。」


萌華を引っ張りスーパーに入る。


「萌華、何食う?」


「人間の食物で我が腹が満たせようか。」


「わかった、なんでもいいのか。」


とりあえず、肉と野菜買って野菜炒めでいいか。萌華が、カゴにすっとコーラのボトルを3本入れた。おい、そんなにいらんだろ。確か、まだ家に2本はストックがあるはず。


「萌華、コーラ家にまだあるから、戻してこい。」


「これこそ、我が力の源。ブラック・スプラッシュ!」


「コーラは買わん。」


「…汝、後悔することになろうぞ。」


コーラ=ブラック・スプラッシュ…どうしてそうなる。ダサいから、それ、かっこよくないから。俺の妹は…ドウシテコウナッタ!


*・*・*・*・*・*・*・*・*


ミッション1 『妹に“お兄ちゃん”と呼ばせよう』


〜本屋にて〜


厨二病の取り扱い説明書は無いものだろうか。


「すいません。躾けの本てどこに置いてありますか。」


「はい、躾けの本ですね…こちらになります。」


店員さんに連れてきてもらったのは“犬”の躾本売り場。えっと…聞き方まずかったかな。人間も動物か。それに萌華は言葉が通じないから犬と同じか。とりあえず“犬”の躾本を買ってみた。



〜家にて〜


夕飯の時間。父と母は共働きで夜遅くに帰ってくるので料理や家事は俺がしている。萌華は全くできない。まぁ、まだ中2だからしょうがないか…


萌華の部屋の前に立ち深呼吸。こいつの部屋は開けたら何が起きるかわからない。この前はなぜか骸骨(勿論、偽物)が飛んできた。なんでも侵入者対策らしい。誰も入んねぇから。ノックをして声をかける。


「萌華、夕飯。」


「我が名はハーヴェスト。待ちわびたぞ、人間。」


『お腹減ったよぉ〜お兄ちゃん。』

うん。すかさず、脳内変換。


2人でテーブルに着く。今日はハンバーグとスープにサラダ。いやぁー俺の家事力あがったなぁ。萌華はさっそく箸をとる。


「おい、萌華。おて。」


手を差し出せばその上に手を乗せる。なんだ、素直だな。


「お兄ちゃん。」


なんだよ、首傾げんなよ。おてみたいに流れで“お兄ちゃん”て言うと思ったのに。


「人間、時は満ちた。我には時間が無い。」


「お兄ちゃん、いただきますといえ。そしたら食ってよし。」


「人間、何…」


「お兄ちゃん。」


「人間…」


「お兄ちゃん。」


頑固だなこいつ。昔はお兄ちゃんって言ってただろ。いつから兄を人間呼びになったんだ。


「…お…にい…ちゃん…いただきます…」


おぉ!いったぞ。ミッションクリアー。感動したぜ。


「ふむ、我は呪文を唱えた。今こそ時間は進み出す。」


え…呪文だったのか。呪文ならもっと違う呼び方にすればよかったーーー“ニィニィ”“兄様”“兄たん”“お兄”とかさ…このやろう、俺の感動返せよ。でも、一様ミッションクリア?でも、心こもってないのはな…


どうやら“お兄ちゃん”と呼ばせるのは難易度が高いようだ。(犬の躾本のご飯を与えるときのやり方真似たのにな…役立たずなこの本は!)






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