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別れ

慶太郎が父親の元に戻り中学2年になって夏休みに入った頃俺の元を慶太郎が訪ねてきた。


『壮ちゃん!お金ちょうだい!』


ただいま!壮ちゃん!会いたかったよ!


『慶太郎!なんだその頭は!ちょっと入れ!』


慶太郎!おかえり!良かった!お前と会えた。


『痛い!引っ張っるなよ!』


『お前の学校では金髪は校則違反じゃないのか?許される事なのか?』


『そうだよ!公立は緩いからね!ちょー楽だよ!』


『堂々と嘘をつくんじゃない!そんな学校あるわけないだろ!慶太郎!お仕置きだな。嘘をつくなと俺は躾たはずなんだけどな』


相変わらずくだらない嘘をつく子だね。君は。


『はあ?なんで今更壮ちゃんにそんな事、うわっ、ちょ、ちょっとやめろ!はなせよ!嫌だ!痛い!いってぇー!やだ!何すんだよ!っつ!痛い!ご、ごめんなさい!壮ちゃん!痛い!痛いよ!いてっ!やめて!痛い!っぐ』


『さすがに中学2年にもなると泣かなくはなったな。でもまだ終わらないぞ。慶太郎!ルールはどこへ行っても守るものだ。社会だってルールを守らなければ罰されるんだよ。秩序が乱れるからな。ルールは守る為にあるんだ。中学生であるお前はお前の通う学校の校則に従う義務があるんだよ。その頭丸めるか?どうする?慶太郎!まだ尻を叩かれたいか?』


慶太郎!この世はルールで縛られているけどそれは人間が愚かだからだよ。この世で生きる限り人様に迷惑をかけない事をルールで持って縛らなければ愚かな人間だらけでは収集がつかないからね。それでも君が気づきを得た時この世の常識は非常識だと言う事がわかるよ。まだ気づきがない者はこの世のルールを守るべきなんだ。縛られなきゃ人様に迷惑をかけるレベルなんだから人を傷つけるだろう。気づきを得た者はそんなルールなど必要なく人様に迷惑などかけるはずもないし愛を抱き上を目指して行くようになる。だからこそ気づきを得た者程この世がとても不自由だと感じるだろう。籠の中にいたらこの世の不自由さに気づく事なく死を迎えて大抵の者が迷子になるんだよ。生きづらさを感じた時に何故?と謎解きをしてごらん。その時が気づきのチャンスだ。君は人生と言う航海中に気づく事が出来るはずだよ。お前がそこにたどり着くにはまだまだ時間がかかるだろうね。それでもいいんだよ。君はまだ14歳だからね。14年程生きただけで悟りに至れば俺より優秀だ。まあ今の君ではまだまだ修行が足りないよ。だからとにかく今は生きなさい。けして宗教や人に頼らず自分自身で気づきを得なさい。その為に偉大な自然があるんだ。所詮人間の教えだけでは足りないし間違いだらけであると言う事だけは覚えておきなさい。見えない世界は複雑だよ。俺もまだわからない事だらけだ。謎解きは俺もまだ続けていくよ。


『嫌だ!なんでそんな事をしなきゃいけねーんだよ!いったぁー!俺、お仕置きされに来たんじゃないだけど!痛い!やだ!はなせよ!やめろよ!バカ!いってぇー!いや!痛い!っつ。いたっ!マジ痛い!もうわかったからやめて!痛い!無理!』


相変わらず痛いよー壮ちゃん!俺泣きそう!


『相変わらず痛い思いをしないとお前はわからないんだな。慶太郎!反省がまだだ。尻出して立ってろ!覚えてるだろ?悪い事だってわかっててやったんだからな!しっかり反省しなさい!反省ができたら頭を丸めに行こう』


慶太郎!頑張れよ!君は努力が出来る子だ。地球や宇宙について科学的ではなく精神的に考えるようになるにはもっと大人にならなきゃ無理だよ。だから君はまだルールを守っていなければならない愚か者なんだからしっかり反省しなさい。


『マジかよ!嫌だよ!うわっーぎゃーいってぇー痛い!痛い!行く!行くから!やめて!いたー!ごめんなさい!』


俺が坊主?マジで?壮ちゃんなら絶対マジだよな。いってぇー。


『ん?お前タバコの臭いがするけどまさか持ってるのか?今出せば10発で勘弁してやるよ。でも嘘をついたら50発だ』


まったく。家に帰って君の居場所はあるの?ないなら自分で作りなさい。君も歩み寄る努力をするべきだよ。逃げていたって何も解決しないんだからね。まあ思春期のお前にはまだコントロールは難しいかな。


『・・・・・。えー?えっと持ってるかな?ごめんなさい!』


なに?壮ちゃんの嗅覚やばくない?俺かなり香水つけてきたんだけど。


『お金がいるのはタバコを買う為に必要なのか?』


『違う!痛い!違わないけど!いてぇー!ゲーセンに行くの!痛い!いたっ!もうやめる!痛い!っつ、いったぁー!ごめんなさい!マジ限界!痛いっ!』


50発だったらもう絶対俺泣いてるよ!マジ泣きそう。痛い。壮ちゃんに会いたかったから来たのに!なんでお仕置きなの!


『正直に言ったから約束通り10発で今日は勘弁してやるけど反省は倍させるぞ』


『そんな!壮ちゃん!ごめん!もう許してよ!なんで俺が壮ちゃんに怒られるわけ?』


『俺はお前を実の息子のような弟のような気持ちで半年間接してきたし今も変わらずそう思っている。お前の事が誰よりも心配だ』


『・・・。壮ちゃん?ごめん。俺心配ばかりかけてるね』


俺、壮ちゃんに迷惑と心配しかかけてないね。壮ちゃんの目には涙がたまり今にもこぼれ落ちそうだった。


『本当に心配していたんだぞ!学校にはちゃんと行っているのか?友達はできたか?』


『うん。出来たよ』


『そうか。良かった。慶太郎!生きててくれてありがとう。生まれてきてくれてありがとう。俺と出会ってくれてありがとう。俺の息子になってくれてありがとう。頑張れ慶太郎!お前は強い子だ。お前ならいつか試練を乗り越えて誰も教える事が出来ない真理を自分で掴んでくれると信じているからな!慶太郎!俺が教えた事を覚えておいてくれよ。お前は勉強以外の事となると忘れっぽいからね』


とにかくお前は生きなさい。君の知らない事を真の理解が出来るまで。


『壮ちゃん。あったけー。俺も壮ちゃんみたいに抱きしめてやれる人間になれるかな?』


壮ちゃん。俺、壮ちゃんと居たい。これからもずっとこうやって抱きしめてほしい。


『なれるよ!お前は俺が育てたんだから』


『うん!』


『ほら!反省がまだだ!しっかり自問自答を繰り返しなさい。コラ!壁向いて立ってろ』


『え?なんでそうなるんだよ!いってぇーするよ!反省します!』


慶太郎!おかえり。相変わらずやんちゃ度は増してきているようだけどお前が生きててくれるだけで俺はいいよ。バカな事をやったなって振り返る時が必ず来るさ。お前はお金を持っているじゃないか。使いきれない程に。お父さんも相変わらずお前にお金しか渡せないんだな。お前が欲しがっているのは親の愛情なのにね。だから俺に会いに来てくれたんだろ。お小遣いを理由にして。ありがとう慶太郎!でもお前をお仕置き出来るのももうこれが最後だよ。ごめんな慶太郎!あっちでお前の事を見守っているからな。でも俺は手を貸さないよ。荒れた思春期ちゃんと乗り越えて大人になれ!慶太郎!


『じゃあ慶太郎!行こうか!頭を丸めに。その後夕飯を一緒に食べよう!』


お前と食事を共に出来るのもきっと最後だよ。慶太郎!お前の顔をずっと見ていたかった。まだ右も左も理解出来ていない愛しい息子を置いて行くのは辛い。でもこれもまた試練だ。俺にとっても君にとってもね。俺はこの世で学ぶべき事をだいぶん終えたように思うよ。俺にとってはもうこの世は不自由過ぎる。やっと少し自由を与えてもらえそうだから先に行っているよ。君がちゃんと空の上の世界に上がって来れるように慶太郎自身が真の真理に気づく事を願っているからな。この世はマヤカシだ。また逢おう!慶太郎!


『えっ?やっぱマジ?マジだよね。痛い!行く!行く!行きます!』


壮ちゃんに会えたのはこの日が最後だった。末期の癌だったらしく夏の終わりと共に壮ちゃんも遠くへ逝ってしまった。なんだよ!もっと会いに来れば良かった。医者が何やってんだよ!バカじゃねーの!壮ちゃん!俺の事置いていくなよ。壮ちゃんだって忘れてるよ!俺また1人じゃん。坊主にされた髪も少し伸びてきたよ。また金髪にしたら壮ちゃんに逢えるの?俺宛ての遺書にお仕置きはお前がこっちに来る時が来るまで待っててやるから回数増やす事をするな。しっかり見てるぞって書いていた。壮ちゃん!そんな遠くから脅されたって俺全然怖くないよ。俺のそばで怒ってよ!壮ちゃんの葬儀をしてくれたのは壮ちゃんの友人の人達数人で多くの病院関係者の人達ばかりだったから学生服を来た俺は浮いていた。壮ちゃんが亡くなったと知ったのは会話がほぼなかった親父から聞かされ親父と葬儀に向かったんだ。その日はちょうど学校をさぼりユズルと波乗りに行く約束をしていて家を出ようとした時親父から連絡があり葬式に行くから家で待っていなさいと。8月31日午前0時08分壮ちゃんが息を引きとったと聞かされた。その時俺は何してたっけ?大輔達と夕方から飲んでいたかな。その時間にはもう酔っ払っていたかもね。壮ちゃんの葬式なのになぜだか泣けないよ。だって1ヶ月前は元気だったじゃん。俺をお仕置きしたんだよ。居なくなんてなってない。夢だと思っていたかったのかも知れない。だから俺はきっと泣けないんだ。遺骨は壮ちゃんの実家のお墓に納骨されると言っていた。壮ちゃんの友人の人達がやってくれるそうだ。そんなことを言われても俺にはよくわからない。親父に俺も壮ちゃんのお墓参りをしたいと頼みすると友人の人が壮一郎が喜ぶよと分骨ってやつをしてくれた。俺は壮ちゃんと一緒に暮らした街の霊園に墓を建てて欲しいと親父に頭を下げ海の近くである場所を選んで墓を建てたけどそれでもまだ泣けないのはまだ夢だと思っているのか?俺はもう泣き方も忘れてしまったのかな?壮ちゃん!俺はとても哀しくそして苦しいのに泣けません。俺が最低だから?俺は壮ちゃんの事を好きじゃなかったのかな?ずっと逢いたいと思っていたくせに。またいつだって会えると思っているのかな?わからないよ。なんで泣けないのか。涙が出てこないんだ。でも壮ちゃんが抱きしめてくれた温もりを知っているのは俺だけだから俺がもし大人になれるなら壮ちゃんの想いを引き継いでいける大人になっていたいな。なんだかまだよくわかんないけどそっちで怒りながら俺が大人になっていくのを見ててよ。ありがとうございました。壮ちゃん!今度は本当にさようなら。また会えるよね。俺がそっちに行く時が来たらちゃんと迎えに来てね。壮ちゃん!俺は壮ちゃんが大好きでした。俺を心配し愛してくれてありがとう。また来ます。壮ちゃん!波の音が聴こえていますか?とても哀しく波打っているように聴こえるのは俺だけなの?さようなら。壮ちゃん。

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