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誕生日

さて夕飯は何を作ろう?慶太郎の好き嫌いはどうにかならないものかな?ん?またあいつは鍵をしめてないのか。物騒だから閉めなさいって言ってるんだけどな。いくらオートロックマンションとは言えいくらでも侵入しようと思えば出来るんだぞ。お前の実家みたいにセキュリティがついてるわけでもないんだし。はぁー。靴を揃える事は教えたし小さい頃から出来ていて今までちゃんと習慣になっていたんだろうけどなんで廊下に物が落ちるんだよ。


『慶太郎!ただいま!テストが落ちていたけど君は勉強をしているの?』


数学が94点なら勉強しているんだな。それも習慣になっているんだね。でも物を落としたり無くすのは直らないんだな。


『うわっ!ちょっと勝手に見ないでよ!』


なんで!どうやって落ちるの?意味わかんねー!


『だから落ちていたと言っただろう?お前がだらしないからカバンを部屋に放り投げた時にカバンがあいていたんじゃないの?廊下に落ちていたけど。いい点数取っているじゃないか!まったく勉強していないんだろうと思って心配していたんだよ。でもあの頃のように無理やり勉強をさせる気はないし慶太郎が勘違いして勉強をさせられるんじゃないかとトラウマになってるかも知れないと思って触れなかったんだけどね』


『まだ1年だからだよ。これから下がってくるよ。中高一貫の進学校だよ!みんな合格してもまだ競うんだから俺は無理』


廊下に!?とりあえず部屋に入らないで投げたのは投げたけどまさかのカバンがあいてたパターンかよ。94点でもいい点数なんだ?怒られると思った。そうだ。壮ちゃんは100点じゃないからって怒った事はなかった。俺のトラウマは親父だ。


『なんで無理なんだ?やってもない奴に無理と言う資格もないだろ?努力した者達がまずスタートラインに立てるんじゃないのか?努力をしていない者はスタートラインにも立てないんだから無理以前の問題だろ?だからって俺はお前にやる気がないのに勉強しろとは言わないけどね。慶太郎!よく頑張ったな!』


お前は努力が出来る子だよ。それは君の素晴らしい点だ。努力もしないで文句だけをたれる人間はいっぱいいるんだから。そういう人間に限って自分の不幸を嘆き環境や人のせいにして正当化したがる。自分がこんなふうになったのは親のせいやれ社会のせいだと主張するしね。辛いのは自分だけだと勘違いして逃げるようになるんだ。辛い環境にいたって自分で努力をし真っ当に生きて頑張ってる人達なんて山程いるのにそれさえも知ろうとする努力もしないで嘆く事だけは当然かのように主張する己が如何に恥ずべき事だと言う事も理解が出来ない。ある意味かわいそうな魂なんだよ。成長を望んでいるのにラクな方へ逃げるからいつまでたっても成長がない。年齢とは関係なく年老いていてもそういう人は沢山いるんだよ。年齢とその人が持つ魂のレベルはけしてイコールじゃないからね。ずっと努力しないまま年だけ重ねてしまった人が如何に多い事か。レベルだけで言えば生まれたての赤ちゃんが1番いい状態だね。そのレベルを落としていくのが1番接する親だったりする人間なんだけどでもその為に生まれてくるんだ。あえてレベルを下げてそこから自分がどれだけ頑張れるのか試し頑張りますと意欲を持ち納得した上で誕生してきたはずなのにいざ現実に向き合わされると尻込みしてしまうんだ。予想外に辛いと感じてね。修行したいと名乗り出たんだから努力を怠る理由を環境や親、人のせいにすべきじゃないと言う事が理解出来なきゃ堂々巡りからは逃れられないんだよな。だから努力している人にはどんな人であれ認め合うべきだと俺は思う。努力は勉強だけに限らないからね。たとえ道を誤った犯罪者であろうと努力を始めたのなら認め合うことがお互いの魂にはいい影響を与えるしそれが本来の成長なんだ。ただ平凡に何事もなく年を食っていく事だけが偉いわけでも成長しているわけでもないと言う事が慶太郎にわかるといいね。でもその平凡で何事も問題なく人生を歩む人なんてのは皆無だよ。それでは生まれる必要すらないんだから名乗り出る事もしない。生まれたい自分を試したいと願っている魂は沢山待機して順番をまだかまだかと待ってるんだからね。だから無駄にしてはいけないんだよ。命と言う魂をね。自殺と言う行為が罪になるのはそれ程無数に待ち望んでいる魂がいる中で奇跡に選抜され許可を得たのに寿命を全うする事なく命を自分だけのモノだと勘違いし自己中心的な行為なんだ。慶太郎!わかるかな?もしかしたら人間が犯す最大の罪かも知れないと俺は思うよ。神に逆らうんだからね。


『壮ちゃん!俺、塾行きたい!このまま上位にいたい』


俺クラスで中間テストの合計で2位だったんだよ。学年だと5位だけど。壮ちゃんに見せよう!もうテストで怒られる事はないんだ。


『うん。いいけど慶太郎は本当に勉強がしたいの?自分でやるって言い出した事を途中で投げ出す事は許さないよ。わかってるね?じゃあこれも俺達のルールに入れるぞ。破ったらどうなるんだっけ?』


勉強してなきゃ不安か?慶太郎。まあでも努力はけして無駄にはならないよ。実際に結果として現れなくともね。努力をすると言う事に大きな意味があるんだ。慶太郎は無駄だったと言うけど努力はけして無駄にはならないよ。どこかで必ず活きてくる。


『もうわかってるからいいよ!ウザイ!いったぃ!ご、ごめんなさい!痛い!尻を抓らないでよ!』


『暴言は禁止だよ。慶太郎くん。要注意だな。反抗期だからね』


『わかった。わかりました!痛い!壮ちゃん!中間テストの結果見て!』


『慶太郎!すごいじゃないか!本当にトップ争いだな。よく頑張ったね!お前は小さい頃から賢い子だった。やれば出来る子なんだけどどうして物の管理は出来ないかな?そっちにもちゃんと意識を向けて頑張ってほしいんだけどね』


『知らない!』


慶太郎が自ら塾か。あの頃の君も受かってたはずなんだけどね。問題は君ではなく親の面接だったと俺は思ってるよ。君は努力をしていたし本当に賢い子だった。小学校受験は親が1番頑張ってくれないとね。君が小学校に合格していてもあの家で君はきっと辛いままだったと俺は思う。お前は自分が合格さえしていたらと責めているんだろうけどね。


『慶太郎?そのゲーム持ってたかな?』


俺はそんなの買ってやってないよね。


『うん。持ってたよ』


『塾は行ってる?俺があまり家にいられなくて悪いんだけど』


物の管理がうまく出来ないお前が持ってるかどうか把握しているとは思えないんだけどね。俺がしっかり把握しているよ。小さい頃にも図鑑が欲しいから買うといいまとめ買いするもんだからかぶっていたよね。でも今は好き放題買える程のお小遣いを君に渡していないよ。


『うん。まあ』


『慶太郎!人が話している時は目を見て話しなさいって小さい頃のお前に教えたよね?』


言い訳が出てこないんだろ?


『うん。忘れた。覚えてない』


ヤバイ空気。バレたの?


『んじゃ思い出させてやろうか?』


『・・・・・・。』


一瞬壮ちゃんの顔を見たけどやっぱ怒ってるし言い訳が思い浮かばねーよ。絶対バレてんだ。嫌だーお仕置き食らいたくない!


『何?言いたいことがあるならちゃんとこっちを見て言いなさい!』


まあ何も言いようないだろうけど。


『別になんにもない』


『だから話す時は人の目を見て話しなさいって言ってるんだけど。わからないんだったらお仕置きかな?』


『嫌だ!話す事ないのに壮ちゃんが勝手に喋ってるだけじゃん!』


あーもう。いやだ。


『ゲームをやめて俺の目を見て話せ!慶太郎!』


『話しなんかない!』


『そうか。もう何度も注意したのに聞かないならしょうがないな。こっちへ来なさい!慶太郎!聞こえないか?』


言い訳も出てこないようだしもういいね。


『聞こえてるよ!なんで?うわっ!痛い!放してよ!なんだよ!放せよ!嫌だ!』


マジでー嫌だ。


『言ってわからないんだから痛い目に合わないとわからないんだろ?それから塾の先生から連絡があったよ。テキストの支払いの件はついでだったけど2回続けて来ていないんですけど大丈夫ですか?ってね』


『ちょ、ちょっと待って!トイレ行かせて!』


もう逃げたい。


『逃げ出そうかな?って思ってる?言い訳を考える時間を俺は待つのか?あんだけ俺の言う事を聞かなかったのにお前の言う事を聞けって言うの?まあ俺は鬼じゃないから本当にトイレならトイレぐらい行かせてやるよ。反省も長引きそうだしな。何個嘘ついたかわかってるか?早く行ってこいよ。言い訳楽しみにしてるよ』


『ごめんなさい!』


なんで壮ちゃんは俺の考えてる事がわかるの?言い訳も浮かばないしとりあえず謝るのが1番かな。


『何がごめんなさいなのかな?ヤバイ時はとりあえず謝っておこうって思ってる?』


『ち、違う!塾さぼってごめんなさい!』


な、何?俺の心の中も読めるの?壮ちゃんヤバイ。


『トイレは?行かないのか?俺は小さい頃のお前を毎日見てたんだよ。覚えてないってとぼけるのは小さい頃からの癖だよな。変わらないね。それからお前が目を合わさない時は嘘をついてる時だったけどどうやらそれも変わらないみたいだな!トイレに行かないんだったらもうお仕置き始めるぞ!』


それだけお前が素直って事だから褒めるべき事ではあるんだけど悪い事は悪いでちゃんと罰を受けないとね。


『嫌だ!ちょっと待って!何回叩くの?』


『じゃあ慶太郎は何回叩かれたらわかるんだ?』


『10回!いってぇー!痛い!っく、いた!痛いよ!嫌だ!いてっ!っぐあー痛い!もう10回じゃん!いたい!いったぁー!っく、や、やめてよ!痛い!壮ちゃん、痛い!』


もうなんで終わんないの?


『慶太郎!なんで尻を叩かれるんだよ?塾をさぼってごめんなさいは聞いた。他には?』


『えっ?他って?いってぇー!痛い!っく、痛い!わかんないよ!っく、いたっ!やめてよ!痛い!俺何もしてないよ!痛い!』


塾サボったのがバレたんでしょ?他にもバレてるの?


『テキスト代を君に渡したはずなのに先生は支払いがまだだって言うんだけどおかしいね。先生が嘘をついているのか?』


『痛い!っく、ご、ごめんなさい!いたっ!使っちゃった!ごめんなさい!痛い!っく』


うわーそっちもかよ。チョー最悪なパターンじゃん!お小遣いが少なすぎてマジありえないんだよー。


『何に?使ったんだ?』


『えっとーカラオケ代とか。いったぁー!もう無理!痛い!っく、いたっ!ゲーム買った!いた!ごめんなさい!痛いよ!っぐぁ、痛い!痛いよ!うっく』


『テキスト代だけではゲームは買えないし慶太郎に渡しているおこずかいを足したなら昨日漫画を6冊も買ったお金はどうしたのかな?慶太郎!嘘ばっかり言ってるとつじつまが合わなくなってボロが出るんだよ。それに慶太郎は嘘をつくのが上手くないしね。もう全部正直に言いなさい!座れなくなるぞ!』


本気でバレてないと思ってたのか?


『痛い!い、言うからやめて!うっく、盗った!壮ちゃんの財布から盗った!ごめんなさい!痛いよ!』


もう全部バレてんのかー。


『いくら?』


『えー忘れた!』


マジ覚えてねー。いくらだ?


『なんで忘れるんだ?自分で盗ったお金だろ?ここまできてとぼけてどうする気だ?』


『マジ適当に盗ったから忘れた!五千円ぐらいかな?ごめんなさい!』


違った?


『お前は本当に呆れるね。罪の意識がまったくないんだな!慶太郎!お前が盗ったのは一万円札だろ。忘れる金額でも枚数でもないよ!』


まあ普通は忘れないんだけど君の感覚ではありえるね。


『痛い!っぐぁーいってぇ!だからごめんって言ってんじゃん!うぎゃーっぐいたっ!っく、ひっく、いたっ!痛いよーっく、うっく、痛い!っく』


『もう限界だな。手で叩くよ。お前はゲームを持っていたってところから嘘をついてるんだよ。だから俺の目を見て話さなかった。自分がどれほど嘘をついたかわかってるのか?』


俺は最初からわかっているんだよ。


『っく、うっく、だって、怒るじゃん!っく』


だってお小遣いが少ないからじゃん。本当に平均なの?五千円なんて俺貰ったことない!小1より少ねーよ。


『怒られるような事をお前がしたんだろ!買ったゲームは捨てるぞ。いいな?盗んだ金で買ったゲームをやっていてお前は何も思わず出来るのか?楽しめるのか?後ろめたくはないのか?』


『っく、うっく、ごめん、なさいっく』


『俺の目を見て話しなさいって注意しても聞かなかった分を手で20叩くよ!わかったな?』


『っく、いたっ!痛い!うっく、痛い!っく、やだ!痛い!っく、ひっく、いてっ!』


嫌だって言っても叩くじゃん!もう痛い!盗んだのは俺が悪いけど。


『終わりだ!尻出して立ってろ!慶太郎!しっかり反省するまで終わらないぞ!塾をさぼり、金を盗み、嘘をいっぱいついて俺の目も見れない程悪い事をしてるんだからな!わかったのか?しっかり自分自身に自問自答を繰り返せ!返事は!』


『っく、うっく、は、はい。っく』


慶太郎が金を盗んだ金額を忘れたって言うのは本当かも知れないな。幼い頃からお金を持たされているから金銭感覚はおかしい。まとめ買いをする幼稚園児だった。自分がいくら持っているか把握出来ていないんだよな。こいつにとって一万円札は千円と同じ感覚だ。コンビニでアイスを買いたいとグズった時に自分で買いなさいと言ったら100円のアイスに一万円札を出して買った幼稚園児だからな。千円札が間に入っているのに。一万円と千円はどちらが大きい数であるかも理解していた。親が持たせ過ぎなんだと言うより親は慶太郎がいくら持っているのかを把握しようとしないから減らないお小遣いが貯まる一方だったよね。だから俺は通帳を作って貯金をさせた。まあ慶太郎の場合食費も含まっていたもんな。何故だか慶太郎には作って食べさせないから俺が外で食わしていた。あの仕打ちはどうして始まったんだろう。弟の慎二郎には作って食べさせていたから家事が嫌って事でもなさそうだった。弟の慎二郎だけに食べさせてる姿を見せつけられる慶太郎は辛かったよね。俺はそんなお前を見ていて辛かったよ。


『慶太郎!反省出来たか?』


さすがにちょっとは反省したか。反省中にまだ泣いているぐらいだからな。お金を盗んだ罪の意識がそれだぞ。慶太郎!尻はもちろん痛くて当然だけど心も痛いはずだよ。君は金はもちろん物を盗んだ経験もないし盗む必要がなかったからね。それでもお小遣いは今のままだよ。それでも平均より多いんだからね。まだ12歳だ。今から普通の感覚を身につけるように頑張ろう。慶太郎!


『っく、うっく、壮、ちゃんごめん、なさいっく、ひっく、俺が悪い!っく、うっく』


俺最低だ。壮ちゃんのお金盗むなんてありえねーバカだ。


『よく反省出来たみたいだからもういいぞ!慶太郎!二度とするなよ!』


『っく、は、はい。っく、うっく』


『この盗んで買ったゲームは捨てるけど来月のお前の誕生日に買ってやるよ!それなら気持ちよく楽しめるだろ?』


『っく、う、うん。た、誕生日忘れてた。っく、待ってればよかった。うっく』


ホントだ!誕生日があったんだ。もうとっくに忘れてたよ。


『自分の誕生日まで忘れるんじゃない!お前が生まれてきた大切な日なんだよ。しかも忘れるような日にちじゃないだろ。お前の誕生日は七夕だからな。俺は1度も忘れた事がないよ。13歳の誕生日をお祝いしような!慶太郎!』


『っく、うん!っく』


本当にこいつは忘れっぽいな。俺は毎年七夕の日に空を見上げて慶太郎が無事育ってくれてるよう願っていたんだぞ。君は誕生日をお祝いしてもらえなかったんだろう。わかってるよ。それでも君の誕生日は大切な日なんだよ。ちゃんと意味があってその日を選んでくるんだからね。いつか君が自分の誕生日の大切さを理解する時君はまた少しこの世界を知った時だろうね。俺はお前の誕生日をお祝い出来ることがとても嬉しいよ。慶太郎!ありがとう!

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