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三題噺

花を愛でる悪魔

作者: 壱厘

 とある世界のその隣、悪魔と呼ばれる者たちが暮らす世界がありました。もちろん悪魔という種族は総じて長命なものですから、デスノートさながらに暇を持て余しておりました。隣の人間の世界で遊ぶもの、ひたすらに闘争に明け暮れるもの。そして、中には花を育てる悪魔もいたのです……。




 一人の悪魔が問いかけました。


「あ、あんたっ、私を無視して花を育てるとか、馬鹿にしてるでしょ!」


「……」


 花を愛でる悪魔は何も答えませんでした。彼にとっての関心事はただ一つ、この花が一体何色の花を咲かせるのか、それだけなのです。


 何年たっても、何十年たっても。誰も悪魔に話しかけなくなっても、一つの人間世界が滅んでも、花は咲きません。

 周りの悪魔が一人、二人と死にました。寿命です。しかし、花は咲きません。

 周りの悪魔が騒ぎはじめました。種が残せなくなる。しかし、花は咲きません。

 周りの悪魔が一人もいなくなりました。そしてついに、悪魔はその花を見つけました。綺麗な紫の花。


「貴方の罪はこの花と同じよ。

だから……」


 遠い昔の大切な人。別れ際に手渡された小さな植木鉢。悪魔はやっとその罪を見つけることができたと、とても喜びました。悪魔は弱った体で、花に手を伸ばします。大切な人が自分から離れていったその理由を知るために。

 けれど、手は花を掴むことはできずにすり抜けました。悪魔は何度も何度も手を伸ばしました。しかし、幻の花は掴めません。

 しばらくして悪魔は、他の悪魔と同じように動かなくなりました。ついにその罪を知ることはできずに。


 悪魔の愛でた花は──木の名は、松。花の咲かない木。

 渡した相手は人間だったのかな、と思いつつ書きました。まさか松のことを知らないはずもないだろう、という思い込みの話です。

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