出遭えない刑サイト オフ会の相手は176センチモデル系Gカップ美女(20歳)
「鴉野さん。前にオフ会の話したときにFカップの女の子と会う約束してませんでしたっけ」
ああ。それか。それも今なら晒せるがこのサイト関係だね。
「死ね」
いや、まて。相手若すぎるだろ。『面白い』から承諾はしたが。
あと、無笑のネタとして脚色している。個人特定になったらアレだし。
「本当はFじゃなくてGな。あと176センチモデル体型で看護系の大学生らしいよ」
「とりあえずシュールストレミングスで爆死してください」
というか、結論はすでに書いているんだけど。
「はい?」
「会えなかった。道に迷ってあばば」
残念だったねぇ。
「なぜ」
「待ち合わせ場所がどうにもわからんかった。あとサイトメール限定だったら携帯ない人間には致命的致命傷」
「ブロントさんじゃありませんし」
女の子には多いけど、サイトメールでしかやり取りしない子って一定数いる。男の人は一通送るごとにお金を使うシステムだけど女の子はお金がかからない。
加えてメールアドレスや電話番号を教えなくていいので安全なんだよ。
あんまり言いたくないけど前話の男どものコメントを見たら俺でもこっちを使いたいと思う。
「あと、気合入れて風呂に何度も入って服で苦戦したので時間が足りなかったのもあるっちゃあるが」
「つまり、待ち合わせ場所がどんどんリアルタイムで変わるのに対応できなかったんですね」
今日日、女の子と付き合うなら携帯、特にスマートフォン必要だねえ。
「買えよ!」
「だが断る」
女なんかよりなろう投稿のほうが面白い。
「だいたい、世間一般では食費がなくても携帯代は払うのが最近のトレンドなんですよ!」
「地味に高いよな」
払っている人間には普通でも、鴉野のように携帯持っていないのがデフォルトな原始人には意味不明の出費だ。
「あれはリアルタイムで感情を垂れ流すうえでは便利だが、職務の合間にまとまった時間で小説などを書く人間には足を引っ張るツールだと思う」
「鴉野さんみたいに会社の合間になろう見てPCもしくは学校の教科書を見てその間にNHKラジオを聴くような生活している人と違って(※註 最近新聞読む暇がない)、世間一般の人はテレビも見ますし、新聞も読みますし、女の子とデートもするんですよ?!」
こいつ、ロリコンなのに結構まめな奴だな。そりゃ女の子にもてるわ。
とりあえず鴉野の今週のシフトを見てくれ。
月曜日
朝8:50出勤
朝10時から12時まで。
昼13時30分帰宅だがジムに直帰して運動。
夕方17時20分別店舗に出勤。
18時から24時まで勤務。
25時帰宅。
27時まで明日の弁当を作ったり洗濯物を干したり家事をする。
火曜日
休日。午前9時外出。
昼の12時まで茶道のお稽古。
12時から食事を挟んで寝落ち含めて昼16時半まで放送大学で来学期の科目を先に勉強。
17時帰宅(線路侵入により新快速が停止していた)。現在この原稿を書いている。
「ちょ?!」
「まぁ序の口よ」
水曜日
午前4時起床。始発電車に乗って某店舗の開店作業。13時半帰宅予定。
15時50分出勤。16時半から22時まで仕事。帰宅は23時予定。
「あの。いつ家事をしていらっしゃるのですか」
「夜中」
母がいると『夜中に風呂入るな』と無茶ブリされる。それよりずっとましだ。
木曜日
15時50分出勤。16時半から22時まで仕事。帰宅13時半。
15時50分出勤。16時半から22時まで仕事。帰宅は23時予定。
金曜日
午前6時起床。午前9時から12時まで仕事。帰宅13時半。
15時50分出勤。16時半から22時まで仕事。帰宅は23時予定。
土曜日
休み。ジムかオフ会でもやろうかなと画策。
日曜日
午前9時から12時まで仕事と言えば聞こえはいいが、前述の要件により午前中は完全につぶれる。
「この状況で小説書いていらっしゃるのですか」
「自分で見てみたらすごいシフトだな」
そりゃ、うちの男どもが誰も結婚していないわけだ。
これでも店長辞めさせてもらって学生になった分収入は増えているんだよ。
「いくら?」
「交通費が出るようになって手取り15万が17万」
「おい」
頼むから交通費くらい出してくれ。2時間だけ出勤するのに往復で2時間以上はないから。まぁサラリーマンなので一応保険その他は入っているので実質は多いんだろうけど。
あと、先週までは『夜の二時に寝て夜の四時(あるいは朝8時)に起きて夕方の一七時に24時まで仕事に行く』とかがあったんだけど。
「『別店舗に行くときは22時までにせよ』と通達があった」
「そりゃね」
おかげで、逆に執筆時間減ったんだけど……。
「まぁ無茶苦茶速筆なのは認めるけどな」
「早すぎます」
三年で活動報告コメントなどなど含めて約400万文字は伊達ではない。
その生活で鴉野に女っ気がないのはある意味致し方ないかもしれないが、それ以上に忙しいSはちゃんとかわいい女房を習い事ついでにもらっているしなあ。
「だから、出会い系始めたんじゃないのですか。趣味と実益かねて」
「うーん。正直、まったく会っていないのよ。この後も」
いつ会うんだって話になるし。
「金がもったいないからやめてしまったし実のところこの話でネタ切れなんだ」
「おい?!」
若い人は風俗で持て余した性欲を消費するが年を取ってからもそれを続けているとそっち関係の女の人にも相手されない人間になるって知り合いがいうけど。
「ぶっちゃけ。風俗卒業したとしても、出会い系でそっちのことやってたら成長ないだろ」
「ですね」
というわけで撤退。
そもそも女の子をお金でどうこうするために登録していないので連絡の九割九分九厘が鴉野にとって意味がなく、あとはサイトメールだけのやり取りでこれも酔狂に金を使うだけという状況だったのさ。
「なんでメールの相手しちゃうのですか」
「釣られたら全力で喰いつく」
ちなみに、女の子は男性からメールが来るたびにポイントがたまって現金化できる。明らかに業者とわかる人から釣り用の全裸メールとかくるには来るし、なぜか東京から集中して『タイプ』というメッセがくるけど相手したらすごい勢いでポイントが減る。
「無駄な出費がすごいことになりますよね」
「ほんとだよな。しかもネタらしいネタも放出しちゃっているんだよ。そもそも会っていないから仕方ないけど、『金より愛』を言ってのけるためには、金より魅力的な異性で居続けねばならないと思うんだ」
「で、タイトルのもとになったその子とはどうなったのですか」
「ああ。もっと大人びた書き言葉を使ってほしいと言われてそれっきりです」
紳士とは程遠いからね。鴉野は。
「うーん。うーん。貴重なお話をありがとうございました」
「どういたしまして。お粗末で申し訳ない」
若いうちは短い。街に出てナンパをするのはとても重要だと思う。
あと、それを許す生活の余裕も。