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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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人として生きる権利 『お前の弟はアホだから私立に行くのはつらいだろう。内申に響くぞ』

 当時の鴉野が人権だの差別反対だの戦争反対だのといった青臭い話に夢中になり、完璧に洗脳完了していたような阿呆なのはもう先日述べたが、姉貴は少々こういった学校に通うには賢すぎたらしい。

 まぁ自分の姉なのだから悪くは言わないが、『やめとけ』と言われてもやって失敗しないと納得しない。

 そしてSほどではないが有能だったり賢かったり意外と身体能力が高かったりしてスルスル回避するのだ。うちの姉は。


 S? あいつは規格外だから先生どもも何も言わない。

 授業中ぐーすか寝ていたと断言している。当時彼にとってあの学校の授業はつまらなさすぎたのだ。

 もちろん、進路に一言も口出しさせなかった。Sらしいエピソードだ。


 鴉野の母校である学校には『地元集中』なる制度がある。


 今はずいぶんゆるくなったが当時はまさに正義の御旗だった。

『みなと同じ学校に行きたい』

 という知的障碍者のセリフを真に受けた連中と、それを錦の旗にしたアカどもが広めたとっても素敵な制度である。


 論陣の先端を切るのは鴉野みたいな洗脳完了した阿呆だ。


 Sみたいな本当に賢い奴はどちらの陣営も相手にもしない。相手にできない。なんせSに余計なこといったら百倍になって反論されたうえ論破されて泣かされる。口で勝てないからと暴力に訴えようものなら穏やかな笑顔でフルボッコにする。三人くらいなら余裕でぶちのめすんじゃないだろうか。

 当時のSは空手ができなかったはずなのだがそれはそれは強かった。

 あと、気が荒かった。本人は温厚のつもりだったろうけど。


 地元集中は指定校以外の公立学校に行かせない制度である。進学校に行くことを許さない制度ともいう。私立のバカ学校に通わざるを得ないのは許す。放り出すともいう。繰り返すがSみたいに地元の公立では最も賢い学校を『レベルが低い』と言い切る人間とは縁のない話だ。

 こういう生徒は教師も歯を食いしばって我慢せざるを得ないが、鴉野の姉のように中途半端に優秀で、どんな人間よりアクティブな輩はというと迫害する。


 まぁ毎日のように全校集会だか学年集会だかでオルグする。その相手をするだけで疲れるが家庭訪問や三者面談でこういわれる。


『お前の弟はアホだから私立に行くのはつらいだろう。弟の内申に響くぞ』


 鴉野が奇行の人間だったのは読者様方には想像するに余りあるだろうがこれは教師としてどうなのか。さすがの母も穏やかではなかったらしい。


 学年集会ではこういったオルグと並行して平和だの人権だの差別だのを撤廃すると評して俺は在日韓国人ですと告白させられ、俺は被差別部落の人間ですとかいえばヒーローになれる。


 今思えばちゃっちい。

 しかし当時の鴉野はカッコいいとか本気で思っていた。


 まぁそいつらが手ひどいいじめっ子で鴉野も少なからぬ被害を受けていたことを差し引いてもな。ちなみに鴉野は弱いながらも本気で抵抗するのでカツアゲなどは受けていない。

 年中服が破かれ、カバンが汚れ、装身具は一切身に着けていなかったが。 壊されるからだ。

 あるいは武器になる装身具のみ持ち歩いていた。不良になったのかとあきれられたがそうじゃない。自衛である。


 噛みつかない犬は食われるだけである。負けても噛みつく犬は戯れに殴り殺されるだけで済む。


 鴉野は最初の給料ででかくてごつくて壊れなくて泥水に突っ込んでも動作する時計を買った。正直重くてどうしようもなく、結局使っていない。

『どうしてそんなものを買った』

 皆はあきれるが鴉野にとっては『ふつう』でしかなかった。

 壊されるし泥水に突っ込まれるし殴られるからだ。

『気を付けろ。高校には差別が蔓延しているぞ』

 そういって鴉野を送り出したアカ教師たち。

 アカ学校を卒業して数年が経っても鴉野が人並みになぐり合わずに愛情を感じ、人を認めてほほ笑むまでには少々の時間を必要とした。

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