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無笑 ~正月から自称ヤクザが怒鳴り込んでくる程度にはどこにでもある日常編~  作者: 鴉野 兄貴


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あの子がこんなに強いのは当たり前だのクラッカー

 筆者のとある友人がやたらめったら常識外に強いということはこのエッセイを読んでいる皆様には周知のことだと思うが、彼は正直言ってそんなに体格的に優れているわけではない。現役時代は女性よりちょっと太い程度で、痩せていたし背丈も普通だった。


 でも彼は一撃で自分よりデカくて怖い奴を仕留める。


 自分より強い奴にあったら余計強くなる。

 なんでもピカーンとアイデアが浮かぶらしい。


 まぁさすがに彼は現在現役ではないので昔ほど『武道は』強くない筈だ。強かったら俺が死ぬ。

 まともに考えたら夢も希望もない話だがデカくてガタイが良い奴が戦いでは圧勝する。これを覆すためには体格以外の何かが必要ということになる。


 ガタイの大きな弁慶を機敏で小柄で美男子の牛若丸が倒すのは娯楽小説としては面白いがこれを成すのはとてもとても難しい。


 じゃ、なんでかの男は自分よりデカい奴を一発で伸してしまうのか。


 真面目にちょっと考えてみようと思う。


『空手二段だから』


 そういってしまえばそれまでだが、伸されるほうだって素人ではない。


 では翻って人間はどうやって他の生物を駆逐していったのかを考えてみよう。まさか人間のすべてがなろう主人公みたいなチート人間揃いなわけがないからだ。

 人間というか現代の類人猿と猿の分化が始まったとき、猿は類人猿よりは数が少なかったらしい。


 生物としての人間は『万物の霊長』ではなく、類人猿に過ぎない。

 しかし猿は植物の渋味、タンニンを分解できるのでまだ熟れていない果実をガンガン食えた。結果的に類人猿は餌を奪われ、森から出る羽目になる。これが人類の祖先らしい。


 戦う前の最初から負けているじゃねーか?!


 荒野に集うハゲタカを見たら全力ダッシュ。他のハイエナとかより早く現地にたどり着け。汗かきながらダッシュ。とにかくダッシュ。ついていけない奴は無理死亡。

 こうやって人間は発汗能力を得たらしい。


 つまり。


 いち。人間はずっと戦闘行動を行える。


 汗をだくだく搔きながら走りまくれるイキモノは人間だけらしく、同じ猿でもナマケモノの場合代謝が恐ろしくない。例として挙げると体重も生活様式もほぼ同じのコアラの10倍以上何も食わなくていいらしい。馬も一応汗腺を全身に備えているが、体温を下げるだけの為の行動をとらないとダメな事があるそうで。

 余談だが人間は馬そのものを使ったり自転車と言うわけのわからないチート装備を使用する。人間が火を使うのは結構昔からだが(正直いつごろか鴉野も良く知らない)こういう追撃戦では可也有利な武器だ。


 に。人間は相手が動けなくなるまでしつこく『群れ全体で追い詰める』能力を保有している。


 補足だが発汗を行える生物は限られている。読者様の中には恒温動物変温動物といって学校で教わった方もいらっしゃると思うが、哺乳類と鳥類が恒温動物というのは誤解が出来るので最近は言いかえをする。

 具体例を挙げるとナマケモノや深海生物はとにかく代謝を下げて必要エネルギーを減らしているイキモノで、体温で考えればナマケモノは体温調整すらサボるイキモノになる。まさにナマケモノ。

 また、当たり前だが水中に生きる哺乳類は汗腺を持っていない。

 最近は恒温性とかそういう言い方をするらしい。また冷血動物とか温血動物というのもアレな言い方らしい。鮫だって体温を維持する。


 取り敢えず人間だが。


 とにかく走りまくって汗をかくため、邪魔な毛皮を脱いでしまった。


 いるなら他の生き物から奪って着る。衣服の誕生である。翻すと防具の誕生でもある。

 人類には火を扱う。発汗以外にも優れた特技を持っている。『石を投げる』能力だ。個体差はあれども訓練次第で時速100キロ近い石弾を20メートルは投げ飛ばす。オトナでもコドモでも老人でも女性でもだ。


 さて、遠くから石を投げるにしてもキレた野生動物は石くらいで止まらない。というわけで盾や地形、槍衾の出番だ。とにかく糞長い棒で敵の突進を防ぎ、みんなでフルボッコでぶん殴って弱らせてとどめを刺さねばならない。とどめを刺すうえで石器の発明は非常に役立ったのは言うまでもないだろう。結論として人類が強敵たちに打ち勝ってきた戦法はこうだ。


『火と投石使ってガンガン追っかけ、疲れ切ったところを皆で棒によるアウトレンジでフルボッコ。最後は石器でトドメ』


 これを成すために大きな問題点がある。


 汗をかく場合、大量の塩分を必要とする。料理をするなら火種を維持しなければならないし、美味い料理で無駄に発達した知能でまた旨い料理を作ろうとする。ただでさえ全力ダッシュで世界中に広がった人類。世界を食いつくすつもりか。


 アウストラロピテクスののーみそは超ちっこかったけど今の人間の脳みそは全エネルギーのほとんどを食っている。安易に食い物を手に入れるなら奪えば良いとか不埒な考えを起こす輩は少なからず。


 さて。小柄な筆者の某友人は何故デカい奴を倒せるのかを考えてみよう。


 ぶっちゃけると身体が小さいから身体部分ではあんまりエネルギーを使用していないと思われる。彼曰く『ピカーンと閃く』そうなので、その分のエネルギーが脳みそで使われているんじゃないかと推測できる。


 すなわち、効率よく敵を制する一撃を生む動きを行う身体制御、敵の行動を読む未来予測。刻一刻と変動する戦場を把握する状況判断能力。こういった能力はみんな脳みその仕事だ。こちらが発達していると推察できないか。


 格闘家は戦うと超疲れるそうである。


 というか、何もしなくても身体を維持するだけで大変で、飯抜きを鴉野みたいに何日も行ったらぶっ倒れる。戦闘と言う行動はとにかく精神や脳みそを使うのだ。この上体まで使ったら文字通り持たない。


 かの男の一番恐ろしい能力は『普通』ということに尽きる。


 他人とうまくやり、必要であろう能力を先に習得し、必要な栄養を自分で考えて摂取し、掃除を行って周辺環境を自ら作り出す。力では劣っていてもそれをはるかにカバーする手をいくらでも考え付く。また、その手段を事前に予測して習得している。追い詰められれば追い詰められるほどアイデアが湧いてくる。こんな人間とはハッキリ言って戦いたくない。


 彼を見た人間はみな『案外普通』と思うが、普通を極めた奴ほど恐ろしい奴はいない。


 生物として考えたら武道など要らない。相手より多い数でアウトレンジからガンガン一方的に殲滅したら敵は滅ぼせるからだ。

 こういったことは人類の行動からすれば『普通』でしかないが、こういった勝つための手段を身に着け、いつでも使いこなせる奴を多分こう呼ぶのであろう。『達人』と。


 反復練習だけでは人間は進歩しない。その反復練習によって問題点を見出し、その問題点を克服して武器に出来る連中には有効だ。逆を言うとそれを常時行える人間に喧嘩を売ってはいけない。多少の有利さを覆す手をいくらでも持ちだし、考案可能だからである。


 正直、急所を的確に、かつ最も痛い蹴りで撃てるとかは普段使わない技術だが、その行為を偶然や身体能力だけではなく戦いのさなかで必要に迫られとっさに考え付き、何度も再現できるようにその後も練習できるというのは非常に恐ろしい能力である。


 生物としては駒の一つでも個人にとっての自分はかけがえのない自分である。


 こういった能力を保有する人間がリアルチートなのはひとえに『普通過ぎる』からであろう。普通の人はデカい人間には勝てない。しかしかの男のような人間から見れば反復練習の結果として『普通に勝てる』のである。


 汗をかき、死力を尽くして走り、追い詰められて知力を振り絞り、それを実行して打開する。まさに人間の人間たる能力と言える。


 最後に興味深い話を。


 人間だけが拳を作ってそれを武器に出来る。


 そしてその掌は小器用に動かすことが可能になった。戦うだけではない。生み出し、活かし、いつくしむことを。


 願わくば読者様の『手』が皆様の人生をより豊かになる一助であり続けることを筆者は祈っている。

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