腹HEALTH!!! 全てのパンツが過去になる
痩せたんだからいいじゃないか。殆どの方はそうおっしゃると思う。実際鴉野も痩せすぎる前はそう思っていたし。
まずはベルトが女性用しか使えなくなる。
当然と言えば当然だが鴉野の使っているズボンは一般販売では最もタイトな75センチもしくは76センチ想定のズボンなのだ。切ればいいけどベルトってやつは急に太った時二度と使えなくなるので躊躇する要素だ。
余談だがSもそのサイズなので一着いいジーンズをくれた。体型維持まで完璧とか相変わらずSはチートが過ぎる。Sの伊達男ぶりは今更語るまでもない。お洒落したいときは愛用している。
それが。落ちた。
すとんとズボンが落ちた。意味不明だろうが落ちた。
ストパンと言えば『ぱんつじゃないから恥ずかしくないもん!』なアニメだが、いい年こいた社会人、曲りなりに接客業が腰パンというのはいささか問題がある。アメ村のニーちゃんなら許されるが。
というか工具扱うときに困る。ズボン踏んで転ぶじゃん。
女物のベルトを締めれば対応できるがこの場合寄せるタイプのズボンのボタンだと自然に外れる。
或は横がくにゃっとなって実に見苦しいパンツスタイルになる。
これはユニクロにダッシュして女物のジーンズを買わねばならないのか。悩むところだ。
いや、そんなもの大量に着替え室に持ち込んで試着していたら明らかに変態だから?! 通報されるから?!
オート腰パンという別段なくても全く問題のない特殊スキルを習得した鴉野。腰パンスタイルの若人の普段の苦労を知ることになる。
きたねえ便所に踏み込んだら裾汚れまくるじゃん。どうやっているんだろう。取り敢えず両横を淑女のようにつまんでウンコすわりせざるを得ない。
小便器を使うにしてもチンコを持てない。
まぁ持たなくても問題ないがズボンをおっちらと引き上げてパンツを操作して前かがみである。どすこい。
裾が汚れるということは下手したら家が汚れる。部屋着必須だ。
鴉野は部屋着などというモノを着なかった。パジャマで良いと思ってたし。
ズボンもないがパンツが無い。真面目にない。
全てのパンツが紐ゆるゆる状態になる。いいんだよ。勃起して支えれば。どんだけ絶倫。
普通に考えてマトモなサイズが無いが考えたらある。
女 物 の 下 着 だ 。
腹のサイズも腰回りも実に適切。おおこのフィット感。ってそれ変態仮面さんや!
流石にゆっこさんの下着は着れない。親子的に。試す気も起きない。でも幼少時、あまりにも漏らして替えの下着がなくなり、姉のを履いてまた漏らして姉がボコられる姿を恐怖しながら見ていたことがある。
当時のゆっこさんはキレると擂粉木棒や洗濯叩きを持ちだして百回でも二百回でも際限なく叩くお人であった。回数制限と言うストッパーが存在しない体罰はマジでやるほうもやられるほうもトラウマである。てか、マジごめん姉上。
お蔭で姉は体罰をしない母に育った。叱るときは泣くまで叱るが。
閑話休題。ならば次善の策がある。日本人ならだれでも一度はお世話になる圧倒的なシェア。グンゼの子供用。白ブリーフ。所謂グンパンである。
グーパンと語感が似ているね。至極どうでもいい。
今更グンゼ。しかも白。
鴉野は学生時代チンコを振らなかったからパンツはいつも真っ黄色で口さのない学友に『パンキーと』苛められていたが降るべきものを振り、納めるべきものを収めるのは人生で重要だと気付くエピソードと言えよう。しかし何故に今更グンゼ。最近は白以外もあるだろうが。
普通に却下である。
それなら取り敢えず現状に甘んじてゆるんだ紐のパンツは片っ端から処分したほうがマシだ。そんな鴉野にふとこういう提案をした者がいる。
「一本歯下駄に合わせて褌も装備してください」
活動報告での提案だ。別になろうを見ているわけでもない母もこういった。
「なんか最近褌流行っているらしいよ~」
なるほど。とても合理的だ。紐で縛るのだからゴムと違って体型に沿い、ずれないだろう。緩んだら結びなおせるし。
さっそく鴉野はアマゾンでそれを購入しようとして、すんでのところで思いとどまった。
褌を装備してウンコする場合。布を肩にかけて行為に及ぶ必要がある(Google先生調べ)。
また、女所帯だとそうだが掃除の手間暇から座って排尿を男はするようになる。男が立小便をすると洋式便座だと盛大に噴霧状態になり周囲が想像を絶するほど汚れるらしい。
鴉野は取り敢えずウンコしたら便所を掃除しているので掃除の手間を惜しむために最近は座るのだ。生活習慣は新しい生活習慣を作る。誰得情報。
「母よ。それ、許容できるのか」
「うーん」
ぶっちゃけ。肩に黄色いしみがつく。そりゃ平安時代の下男のニーちゃんなら柄物着て、服も『洗濯するから明日は休ませて』が通じるだろうが。
困った顔をする母。洗濯ものが謎の黄色い液で染まるのはどうか。
これがラブラブカップルなら『俺色に染めてやるぜ!』かもしれないがゆっこさんと鴉野は実の母子である。
そして鴉野は普段白系のカッターシャツばかり着る。なんせ先日亡くなった久さんのカッターシャツに加えて同時期に亡くなったおじからいただいたシャツまである始末。一生分のカッターシャツがあるのだ。雑巾にしても余る勢いである。着たおしまくっている状態だ。
どんだけシャレものだったんだよ二人とも。鴉野家のクローゼットは早くもピンチである。
さて、普段息子の洗濯もので困っている母だ。
一時期鴉野はカッターシャツはまとめてセスキ炭酸ソーダに突っ込んで自分で洗濯していたくらいだ。
「流行っているってテレビが言うときは流行っていない時だよ。ゆっこさん」
「みゅう」
「だって、ゆっこさんの周りでふんどしつけている女の子や男の子いないでしょ」
「だねぇ」
「すたれるからにはそれなりの理由があるんだよ。きっと」
「そっかぁ」
自分の目で見た真実を信じたほうが良い事は山ほどある。ふんどしの存在はそんな事実に気付かせてくれる。
それ以前にウンコがつくが。
オートTバックは伊達じゃない。