一本歯下駄と小指の支え セカンドシーズン 鞍馬山にちょっと登ってくる
『折角だから愛宕にもう一回登ってくる』
確かにこういったのは間違いない。しかし鴉野が今回登ったのは『鞍馬山』であった。牛若丸こと源義経公の若き日の修行地として有名である。
この下駄を履いて山に登るのはもう決定事項に近かったが実際に登るとなるとヤル気は起きない。色々言いたいこともあるだろうが鴉野とて前回で結構懲りているのだ。そして翌日はジムで運動する予約をしている。
「まぁ取り敢えず赤玉スイートワインを買って天狗さんへのお供えに」
勿論『気が向いたら』であってそうするつもりはない。
「そうだ。鞍馬山でもいいかも」
この時点の鴉野は鞍馬山がどんな山なのか調べてもいない。帰ってから調べた。それでいいのか。
だが、母にもう一度アレ履いて登ってみようかと思う。ストックを使うからたぶん大丈夫だと告げるとその日の晩には地図その他一式がセットされていた。
どうやらいかねばならない。
「よし。目覚ましなしで寝て、寝過ごしたらジムだ」
無視して寝たが何故か朝4時に目覚めた。寝たのは2時半なのだが恐ろしいほど気分爽快。登れって事かい。
愛宕じゃなくて天狗にちなんで急遽予定変更で鞍馬山と言っていたので寝る前に調べたルートで登ることにした。鞍馬駅から貴船神社を目指すルートだ。基本的に道に迷うことはないと思う。
愛宕はバスを逃すとどえらいことになる。また、標高も倍近く違う。
今回は比較的楽だと装備を整えた鴉野はストックを持ち心配する母を他所に地元の駅まで歩いていく。
駅 に 着 く ま で 三 回 転 ん だ 。
駅近くの格安チケット販売の自販機までの往路百メートルすら動きたくない。この時点で鴉野は色々と後悔していた。
ならやるなよ?!
幸いというかなんというか、基本的に変な下駄をつけているということで人様が関わってくる事は無い。せいぜい鴉野の周囲から人が必死で逃げて行って座る場所が広くなった程度だ。
なんて迷惑。
そうやって電車にゆられ、外人から奇異の目で見られ、子供と遊びながらやってきました鞍馬駅。
すぐ出た山門がこれだが、駅から出るのに10分かかっている。
何故に? トイレだ。トイレでウンコをするミッションをやっていた。いくら安定度が高いと言っても額で体重を支える必要があった。めっちゃきれいな鞍馬駅のトイレはお勧めだ。トイレットペーパーもついている。
しかし駅のトイレには紙がないと思い込んでいた鴉野はトイレットペーパーを鞄から出すのに苦戦。無駄な努力だったとしか言いようがない。そうしてただ三分の距離を進む必要を三倍の時間と労力を使い、ストックを用いて登る鴉野。
どうみても変態だし、見てはいけない。関わってもいけない。
阿呆がうつる。